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第207甲殻魔導小隊  作者: 光 寿寿
第二章  強襲 七死夜天
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黒白


 はじめから宴もたけなわとなったこの宴会、綱一達は自らの空腹を満たすため出された料理を次々と口の中へ放り込んでいた。


「うまい! うまい! この唐揚げ何肉使ってるんだろう?」


「あっ! こうくん! それうちが狙ってたやつ!」


「二人とも、沢山あるのだから喧嘩せずにもっとよく噛んでゆっくり……」


 綱一と華は料理を取り合いながらどんどんと口に運んでいる。

 それを見た武は軽くたしなめるが。


「たけしゃん、おかわり!」

「あっ、ついでに俺もお願いします!」


 二人は武の目の前に皿をつきだしおかわりを要求する。


「やれやれ、後で取ってくるから取り敢えず俺の分を食べなさい」


「いただきぃ!」

「あざっす!」


 このままではすぐにこのテーブルの料理は壊滅すると思い、武は追加をもらいに席を立とうとしたとき、ふと真弓へ目をやると彼女の手はあまり進んでいないように思えた。


「真弓さん、あまり進んでいないようだがどこか具合でも悪いのか?」


「いえ……大丈夫……です」


「ならちゃんと食べた方がいい、今日出されていり料理は魔力回復を促進する食材が多く使われているらしいからな、特に肉類なんかは……」


「そのお肉が今日奪った魔族のと考えると……」


「いただきますとは命をいただくと言う意味合いもあるそうだ、人は生きていく上でどうしても他の命を奪って生きている、ならせめてその食材となった彼等に感謝を込めて食べるべきだと思う、俺達が明日を生きるために」


「……はい、いただきます」


 彼女は少し沈黙した後手を合わせゆっくりと料理を口へと運んでいく。



 

 武が皿いっぱいに盛られた唐揚げやオークカツ、サラダをテーブルへと並べる。


「ほら、追加だ、よく噛んで食べるんだぞ?」


「たけしゃん、ありがとう」


 それを見た華は真面目な顔で彼の顔をまっすぐ見据え礼を言う。


「なんだ、これぐらいで改まって」


 武は華の雰囲気にどこか違和感を感じずにはいられなかった。


「んー、それもあるけど……ね」


 華もまた真弓が料理に手をつけていないことは気付いていた、そしてその理由が今まで自分達が食べていたものが人のように文化を持ち考え、違う言語とは言え話す生き物と知った事だと言うことも。


 そして華は自分が食べることで彼女がそれに同調し食べてくれるのではと思っていたがそれはあまり効果がなかった。


 しかし武の一言に少しではあるが彼女が食べることに向き合えたようで安堵していた。


「ようよう、あんた達があのでっかいサンドワーム殺ったんだって?」


 綱一達のテーブルに ドン! と酒の入った木製のジョッキが勢いよく置かれ一人の男が彼等に話しかける。


 年は綱一よりも少し上ほどの逆立った黒髪の青年。


「えー……はじめまして?」


 綱一は突然話し掛けられたことに少し驚きはしたが取り敢えず彼を見上げ挨拶をしておこうと思い立つ。


「で? 誰が殺ったんだ? アンタか? それともお前か? まさかこの子等じゃ無いよな?」


 青年は武に目をやり次に綱一へ目を向け、そして華と真弓を交互に見る。


「あれはみんなで倒したんだ、誰か一人で倒した訳じゃない」


 武は彼の問いにやんわりと答える。


「いいなぁ、お前らボス戦やったのかー、俺は雑魚戦ばっかでよー、その話し詳しく教えてくれないか?」


「あの、あなたは?」


「ん? ああ、俺は人呼んで黒い稲妻、またの名をブラックサンダー! ネルリゲンのエースパイロットだ!」


(通り名? かっけーな!)

(チョコレートか?)

(チョコ食べたいなぁ)

(チョコレート……?)


「あっ、俺達は……」


「知ってる、綱一に武とそっちの女の子が華でこっちが真弓だろ?」


 黒い稲妻と名乗った青年は綱一達を順番に指差しニヤリと笑みを浮かべ両手を ドン! とテーブルに突き身をのりだす。


「で! で! 大型サンドワームはどんなだった! サイズは! やっぱ魔法とか使ってきたのか! 強かったか?! よし! 飲みながら話すか! キュレーさーんこっちに酒しこたま持ってきてー!」


「あっ、あの」


 黒い稲妻はグイグイ来るものだから綱一達は少し引いてしまいなかなか話し始められずにいた。

 

「こぉらあぁぁぁ!! 黒人くろとおぉぉぉ!!」


「ぶふぅぅ!」


 黒い稲妻がグイグイ綱一達に迫っていると何処からともなく二十代と思われる女が彼に勢いよく飛び蹴りをいれ彼は直撃をくらい吹き飛ぶ。


「ごめんなぁ、黒人くろとが迷惑かけたみたいで、初めての戦闘でつかれてるのになぁ」


 飛び蹴りの女は目の前で手を合わせ綱一達へ謝罪する。


「どうせあのアホはろくに自己紹介もせんと質問ばっかりしよったんやろ? あそこでのびとんのが三田黒人さんだくろとであたしが加東白雪かとうはゆよろしくなー、またおんなじ任務にあたることもあるやろうからそんときはよろしゅうなー」


 そう言うと白雪は黒人の襟首を掴みズルズルと引きずり去っていった。


「まるで嵐だな……」



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