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第207甲殻魔導小隊  作者: 光 寿寿
第一章 ヘルズヘイム召喚
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決意の朝

 王の口から発せられた言葉は四人には最も意外な言葉であり一同あっけに取られる。


「何もお主達だけに戦ってもらおうと言う訳ではない、すでに何人もの異界の者、我が国の騎士団、滅んだ国の同士達がすでに前線で戦っておる。だが……それでも戦力が足らんのだ……」


「もし……断ったら俺たちはどうなりますか……?」


 明石綱一の問いに王は静かに答える。


「この世界で好きに生きるといい、我らは生き方にまでは関与はしない。ただし、もし我らと共に戦ってくれると言うのなら生活の保証、戦果にみあった報酬は約束しよう」


(もし断れば右も左もわからない異世界に無一文で放り出される訳か……)


 もし断ればどうなるかは四人には容易に想像できた。

 これが日本なら、又はまだ知識のある海外ならどうにか生きることは出来たかもしれない。

 しかしここは異世界、知識も常識も通用しない異世界なのだ。

そんな地で放り出され生きていけるわけがない。

 王の言葉はのたれ死ぬか、国の援助を受け戦うかの2択に他ならなかった。


「無論すぐに戦いに行けと言う訳ではない。お主らはこの世界の知識も戦うすべもわからぬであろう、お主らにそれらを教授するものをつけよう」


「一晩だけ考えさせてくれませんか?」


 30代の男がそう言葉を発し、


「ふむ、よかろう……お主達の今後の人生に関わることだ……よく話し合って決めるがいい」


 王はそれを快諾する。


「ありがとうございます」


「この者達を客室に案内してやれ」


 王は近くに控えていた者にそう告げる。


「では明朝使いの者を送る、またここに集まってくれ」


 王がそう言うと四人は客室に案内される。




「こちらでございます」


 案内された部屋は広く奥にはいくつかの部屋があるようだ。

中央にはデーブルもあり壁には絵画等も飾られている。


「ひっろーい!こんな広い部屋泊まるの初めて!」


 大いにはしゃぐ金髪の女の子。


「まゆみー!探検しよー!」

「ちょっ……ちょっと、ハナちゃん……!」


 金髪の女の子が眼鏡をかけた女の子の腕を引き探検しようとすると、


「三人に話がある……」


 30代の男が神妙な面持ちで3人に言葉を発する。

 三人は顔を見合せ頭に疑問符を浮かべる。


「立ち話もなんだしさー、すわろー」


 金髪の女の子に促され四人はテーブルに腰かける。

 30代の男は神妙な面持ちのまま話始める。


「実は君たちを殺したのは俺なんだ……俺が!君たちを巻き込んだ!本当にすまない!俺は……!俺は……!取り返しのつかないことを!」


 男は頭を下げ後悔の念に潰されそうになる。


「おにーさんがあのスポーツカー運転してた人……?」


 金髪の女の子がギラリと睨みながらゆっくりと言葉を発する。

その目には怒り、憎しみがこもっており睨んだだけでも人が殺せそうである。


「いや……俺はトラックを運転していた方だ……」


 30代の男はおずおずと答える。


「トラックぅ~?じゃぁおにーさん悪くないじゃん?」


「え?」


 30代の男はあっけに取られる。


「しかし、俺があのとき君たちの方に突っ込まなければこんなことには!」


「私も……お兄さんは悪くないと……思います……お兄さんは……あのとき……ハンドルを右にきるしか選択肢は……無かったと思います…」


 眼鏡の女の子がつまりながらゆっくりと話す。


「左には……ガードレール……正面からはスポーツカー、条件反射できっちゃいますよね?」


「俺もお兄さんは悪くないと思いますよ!確かに死んじゃったけど、こうして生きてるし、それよりも今後どうするか話し合いましょう!」


 綱一は、にっ!と笑いながら答える。


(それよりこの子がハンドルをきったのが見えてたことに驚きだよ……てっきりぶつかった衝撃でこっちに突っ込んできたのかと思ったのに……)


 綱一は驚きつつ眼鏡の女の子の顔を見る。

その視線に気付いたのか眼鏡の女の子はうつむきながらボソリと、


「私……目だけはいいので……」


 呟く。


「はい!この話はおしまーい!とりあえずじこしょーかいしよー!

一緒に死んだのも何かの縁!お互い力をあわせてガンバロー」


 金髪の女の子が片腕を上に伸ばしニコリと笑う。


「じゃ、うちからね」

「うちは、姫路華ひめじはな18歳!花の女子コーセーだよ!」

「次!まゆみ!」


 華はビシッと眼鏡の女の子を指さす。


「え!え!え?」


 眼鏡の女の子はキョロキョロし、うつむきながら、


「と……東条真弓とうじょうまゆみ……です」


「この子はねー、うちの親友で弓道部のエースだったの!全国優勝だってしたんだから!自慢の友達!」


 華が真弓の自己紹介に付け加えニコリと笑う。


「もー、はなちゃん恥ずかしいよぅ」


「次はおにーさん!」


 今度は30代の男を指差し、


西脇武にしわきたけし35歳だ、特に誇れるものはないがよろしく頼む」


 武が軽く頭を下げると、


「とか言いつつおにーさん引き締まったいい体してますなぁ」


 華はニヤリとしながら武の体を見る。


「ま……まぁ仕事柄……な……」


武は少し赤くなりながら顔を背ける。


(作業着の上からよくわかったな……)


 綱一がそう思っていると、


「はい!最後は君!」


 ビシッと華に指先を向けられる。


「おっ、おう、俺は明石綱一です、俺も18歳です。特技とかは特にないかな」


「はい!じゃー自己紹介も終わったことだし……どーしよっか今後……」


華は一気にクールダウンする。


「いいか?」


武は少し手をあげ、


「はい!たけしゃん!」


華がビシッと指を指す。


(たけしゃん?)

「おそらく俺たちは戦う以外に選択肢はないようだ、このまま自由に生きろと言われても知識も常識も通用しないこの世界で生きていくのは困難だろう。これは俺の予想だが、この世界の人間には魔臓と言われる器官、名前からして臓器の一種かもしれない、生まれながらにそれを持っているのだとしたらこの世界の人間はおそらく全員魔法のようなものが使えるのかもしれない。つまり俺たちはその時点でこの世界では略奪対象になる可能性が高い。それならばいっそこの国の戦力となった方がましかもしれない、魔法が使えない俺たちが戦力と言うことは甲殻魔導機と言うものがよほど強力で乗り手は貴重なのだろう、身の安全は保証されると思う……戦場以外では……な」


「俺も武さんの意見に賛成です。この世界の常識や戦うすべを教えてくれる人がつくみたいだからそれを教わればいずれ逃げる選択肢も出来るかもしれない」


「あらあら、こうくんなかなか腹ぐろ」


 華は口を手で押さえニヤニヤと綱一を指さす。


「うっうるさいなぁ」


「戦うの……怖いけど……それしかないよね……」


「きっと力を合わせればなんとかなる!」


 綱一は拳を握り真弓を見る。




 そして四人はそのあと少し話し合い各々自分の部屋へ(真弓と華は同じ部屋で女子トークをするようだ)

行き休むことにした。





「トイレ……」


 綱一は夜中に目覚めトイレへ行くため部屋から出るとテラスへの扉が開いていた。


「誰かいるのか……?」


 外を覗くとそこにはタバコを吸いながら町を眺める武がいた。


「武さん?」


「あぁ、綱一くんか」


 武は綱一の声に気付き振り向く。


「どうしたんですこんな夜中に?」


「少し考え事をな……」


 武はまた町を見ながらタバコを口にくわえる。


「そうですか……ところでそれ……タバコ?」


「あぁ、この世界にあるかと見張りの人に聞いたらあったんだ。この世界は思った以上に俺たちの世界から人が呼ばれているのかもしれない」


「え?」


「このタバコの銘柄、君はコンビニとかで見たことがないかい?」


「これ……?」


「あぁ、細かい違いはあれどほぼ同じだ、こんな偶然あるわけがない。これを作ったのはおそらく我々の世界の住人だ」


「そうなんですか……今も前線で戦っているんですかね?」


「わからないが、そう願いたいね」

「……」

「すまなかったね、君たちをこんなことには巻き込んで……」


 武は振り向きまっすぐと綱一を見据える。


「それはもう終わったことです、気にしないでください」


 綱一はゆっくりと微笑み尿意を思い出す。


「すいません、俺ちょっとトイレにいきたかったんで」


「あぁ、お休み、俺ももう寝るよ」


「はい、では」


 綱一は急いでテラスをあとにしトイレへと消えていく。


(君たちは俺がなんとしても守る……たとえこの命使うことになっても)

「それが俺の償いだ……」




 翌朝四人は再び王の間に呼ばれ問われることになる。


「決心はついたかね?」


「はい、やります」

読んでいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全体的に、好感を持てる世界観です。魔法を使えない、ってところも(個人的には)好きです。 [気になる点] 句点に置き換えられる読点がいくつかありました。一文が長いと少し読みづらいと思います。…
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