帰還
「ざっと見た感じ、シャルロットは脚部と魔導砲に少し歪みがあるな、ガリウスも同様脚部と魔導砲か……無理やり魔導砲を旋回でもさせたか? それに側面に傷、ウンディはほぼ異常無しっと、ソフィアは一番重症だな、脚部と側面からの衝撃か? いったい何に……まさか喧嘩でもしたのか?」
綱一達四人は日が沈みきった頃にはネルリゲンに到着し207小隊の格納庫へ甲殻機を整備点検のため立ち寄っていた。
綱一のシャルロットはサンドワームとの戦闘時に脚部と魔導砲に多少の負荷がかかっていたようだ。
武のガリウスも同様の戦闘で脚部と魔導砲に多少のダメージを受けていた。
真弓のソフィアは武に体当たりをされた際に側面にダメージを負っていた。
華のウンディはほぼ無傷だった。
(すごいなこの人、回り見回しただけで分かるんだ)
カバラッチは四人の甲殻機の回りを少し見回すとそれぞれの損害状況を一目で言い当てていく、それを後ろから見ていた綱一は素直に感心するしかなかった。
「あっあの……ソフィアの傷は……西脇さんに助けていただいた時の傷で……」
「ガハハ、分かってる分かってる、冗談だ」
真弓は喧嘩をしたという誤解を解こうとカバラッチに声をかけそれを彼は豪快に笑い飛ばす。
「まぁ重症だっつってもこの中ではって話だ、全く支障はないレベルだな、いつ見てもこれはいいもんだ、一番厄介なのはこれだな……」
彼はシャルロットとガリウスを交互に見ると甲殻機の足をスッと撫で今ではもう乾いた魔族の返り血を手でぬぐいそれを見つめる。
綱一と武は少し申し訳なさそうな顔をしほぼ同時に口を開く。
「あの俺も手伝いま……」
「掃除ぐらいなら……」
それをカバラッチは間髪いれずに制止する。
「いや、これはワシ等の仕事だ、おめぇさんたちはあとはゆっくり休む、それに主賓が不在じゃ意味がなかろう」
「主賓?」
四人はその言葉の意味が分からず思わず顔を見合せる。
「後はワシ等に任せてさぁ帰った帰った」
そう言ってカバラッチは四人を格納庫から追い出し彼等の背中を見送った。
「ワシ等にしてやれるのはこれぐらいだからな……次もちゃんと帰ってこいよ……」
彼はそう呟くと体を反転させ声を張り上げる。
「よぉし! 誰か水魔法使える奴二三人つれてこい! 整備始めるぞぉ!」
「とりあえず帰りますか」
外に追い出された綱一達は月明かりに照らされながら帰路へつこうと歩き出すと頭上から鳴き声と共に彼等の伝書兎であるイオンが華の頭の上に着地する。
「ムー」
「イオン? 待っててくれたの? 先帰っててもよかったのに、愛い奴め」
そう言うと華はイオンを抱き寄せ頭をワシャワシャと撫でる。
「ムムー」
「しかしイオンくんや、どうしてうちの頭に乗るかね?」
「華さんの髪は月明かりに照らされて綺麗な金色になるから見つけやすいのかもな」
「たけしゃんはまたそう言う恥ずかしいことを恥ずかしげもなく言う!」
「いや、思ったことを言っただけなんだが……」
「知らん! お腹すいたし早く帰ろ!」
「待って華ちゃん、走ると危ないよ!」
華は走りだしそれを追いかけるように他の三人も足を速める。
綱一達が魔導士が生活の拠点とする通称魔導士寮に帰宅すると一階食堂に並べられたテーブルの上にところせましと料理の数々が並べられていた。
そして今もまだ厨房からB.Bやサラ、アイシャ、ダリルと名も知らぬ男女が次々と料理を並べている。
「お帰りなさいませ、只今皆様歓迎会の準備をなさっていますのでそちらのテーブルに座ってお待ちください」
綱一達四人を出迎えたキュレーに促され四人は奥のテーブルへと向かう。
「主賓ってそう言うことか」
「なんだか……申し訳ないような」
「俺たちも何か手伝いを」
「おいしそー」
四人がテーブルに座りヒソヒソと話しているとB.Bが綱一達の存在に気づく。
「帰ってたのか! すまねぇな! もうすぐ終わるからそこで座って待っててくれ!」
それから数分後、すべてのテーブルに料理が行き渡り各小隊ごとに別れテーブルを囲み席につくとマイケルが立ち上がり皆に向け声をかける。
「全員飯と飲み物は行き渡ったな? ではこれより207小隊歓迎を名目とする飲み会を始める、めんどくさいから自己紹介は各々勝手にするように、酒はいつも通りそこら辺の樽から勝手に注いでくれ、それでは、乾杯!」
「かんぱーい!」
マイケルの乾杯の音頭と共に宴会は幕を空ける。
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