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第207甲殻魔導小隊  作者: 光 寿寿
第二章  強襲 七死夜天
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サンドワームとの戦い②


「しかし、くそでけーなあれ……なに食ったらあんなにでかくなれるんだ?」


 木々を薙ぎ倒しながらサンドワームは奥へと進んでいく。

 綱一はそれを後ろから猛追し徐々にではあるが距離を摘めていった。


「西脇さん! 無事ですか?! そこから離脱はできますか?!」


 綱一はサンドワームの中腹辺りまで近づいたところで武に向かって目一杯声を張り上げる。

 木々の薙ぎ倒される音やサンドワームの地を這う音に邪魔されてはいるが甲殻機同士であれば声の通りはよく多少の雑音には邪魔されない。


「俺は問題無い! だが俺がここを離脱すればこいつはまた地中に潜る! そちらからこいつを仕留めてくれないか!」


「分かりました!」

(とは言ってもあまり時間はかけられないな、あのままじゃ西脇さんも危ない……! 一か八か!)


 綱一はサンドワームの頭部と思われる場所に魔導砲を向け放ち続ける。

 しかし外皮は硬くダメージを与えられているようには思えない。

 だがサンドワームは頭部を綱一へ向け進路を変更した。


(やっぱり思った通りだ! あいつは攻撃する相手を優先的に狙ってくる!)


 綱一はサンドワームと向き合ったまま後退しそのまま砲撃を継続する。


「そうだこっちだ! こいこい! 西脇さん! 俺が合図をしたら防壁を解除してください! 俺に考えがあります!」


「考え?」


「はい! 説明はあとで!」


「わかった! 信じるぞ!」


 綱一は後退速度を上げ更に砲撃を継続、それにつられサンドワームも速度をあげていく。


(頼むよシャルロット! ガリウス!)


「西脇さん! 解除!」


 綱一はそう叫ぶと同時に急停止し前に跳躍、サンドワームの口めがけ真っ直ぐ向かっていく。

 武もそれに合わせ魔導防壁を解除する。


 綱一はそのまま武と共にサンドワームの中へと飲まれていった。


 サンドワームの口が閉じ肉の壁が二人を圧迫する刹那綱一が叫ぶ。


「西脇さん!」


 綱一はサンドワームの喉の奥へ向けられた魔導砲を全力で放ち、それに習い武も綱一が口へ飛び込んだ際に喉の奥へ向けた魔導砲を全力で放ち続ける。


「あああぁぁぁ!!!」

「っ!!」


 やがてサンドワームの胴は二倍、三倍と徐々に膨らんでいきついには破裂し辺りに大量の肉片と紫の液体を撒き散らせ文字通り血の雨を降らせる。


 そして胴の割れたサンドワームの中から二機の甲殻機が這い出てきてその場で動きを停止させ中から搭乗者が姿を表す。


「綱一くん……君は少し無茶をし過ぎじゃないか?」


「西脇さんに言われたくないですよ……」


「はは……確かにな」


 互いに顔を見合せ二人は苦笑する。

 そして綱一は武に拳を突き付け武もまたそれに答えるように自身の拳をコツンと当てる。


「お疲れ様です」

「ああ、お疲れ」


「もう!二人とも無茶し過ぎ! 後で説教だからね!」


 遅れて華を先頭にマイケルとダリルが二人のもとへ駆け寄ってくる。


「姫路さんの説教かぁ……おっかないなぁ」

「この歳で説教とは……」




 


 綱一達がサンドワームを倒した頃、そこから数キロ程北に離れた位置、一人の少女の姿があった。

 純白の着物に身を包み肩まで伸びた金色の髪を風になびかせ遠くを見つめる少女。

 頭には狐の耳を生やし三本の金色の尾をヒラヒラとくねらせていた。


 少女は岩場に腰掛け小さな果物のを口へ運びながら呟く。


「ポチがやられてしまいましたの、せっかく端正込めて、ついでに魔力も込めて育て上げましたのに……口惜しいですの、いっそわたくしがお相手して差し上げようかしら?」


 そこへ一体のゴブリンが血相を変えて駆け寄ってくる。


妲己だっき様! いけません! 魔王様からまだ手は出すなと厳命されているではありませんか!」


 妲己だっきと呼ばれた少女はギラリとゴブリンを睨み付けゴブリンが身震いをするとその表情は穏やかなものへと変わる。


「冗談ですの、ハチは冗談が通じませんのね」


 妲己はケラケラと笑いながら再度口に果物のを放り込む。


「それと魔王様より伝令が届いています」


 ハチと呼ばれたゴブリンは妲己へ書状を手渡し数歩後ろへ下がる。


「フムフム、西へ向かえ……と、この地は……御姉様が……ああ、愛しの御姉様! 最早顔を合わせずどれ程の月日がたったでしょう! 早くお会いしとうございます!」


 妲己は書状を胸に抱き体をクネクネとくねらせながらよだれを垂らす。


「移動しますわ、タマ! おいでなさい」


 妲己に呼ばれ地中から綱一達が倒したものと同等サイズのサンドワームが姿を表し彼女とゴブリンを背にのせまた地中へと潜っていった。


「生きていればまた遊びましょうね、おもちゃに乗った人間達」



読んでいただきありがとうございます

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またブックマークなどしていただけましたらはしゃいでしまいます

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