表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第207甲殻魔導小隊  作者: 光 寿寿
第二章  強襲 七死夜天
31/58

ドワーフ工房


 綱一達四人は兵士により先導され城門の中へと歩みを進める。

 そこで眼前に広がっていたのは巨大な木々達。

 どれも高さは十メートルを優に超え、青々とした緑を通して空からは優しい日の光が降り注ぐ。

 

 そして四人がその光景に見とれていると兵士はゆっくりと歩みを進めながら語り出す。


「ここネルリゲンには多くのエルフ族が防衛にあたっています、彼らは緑を愛し緑と共に生きる種族なのです」


「それと同時に彼らはほぼすべての者が弓と風魔法と樹木を操る魔法に長けているので城門を突破された際にも木々が彼らの味方になってくれます、そのためネルリゲンには数多くの木々が植えられ別名新緑都市と呼ばれる事もあります」


 そのまま兵士の先導のもと四人は林道を抜けると空間が開け、大きな広場へと足を踏み入れる。

 中央には大きな噴水があり本来ならば家族や恋人等で賑わってそうな場所だが今はそのようには使われてはいなかった。


 数多くの兵士のが剣技に磨きをかけ、魔法使いが研鑽を続けている。

 その中には年端も行かぬ少年少女の姿もあった。


(あんな子供も戦わなきゃならないのか……)


 綱一は過去にテレビで見た紛争地の映像を思い出す。

 子供が銃を取り少年兵として戦っている姿を、得物は違えど彼等、彼女等は武器を取り敵を殺すための技術を目の前で磨いている、その現実を今突き付けられていた。


(やるしか……ない!)


 彼等は生身で魔族と戦う事になる、自分は甲殻機と言う恵まれた兵器を与えられているのだから恐怖している場合ではないと自分に言い聞かせる。


 おそらく他の三人も同じ気持ちだろう。


 五人はそのまま広場より数本伸びる大通りの中から北西に伸びる道へと歩みを進めていく。


 そこから二十から三十分は歩いただろうか、兵士の歩みに合わせていたため目的地にはまだ到着はしていない。

 おそらく街中を歩く歩行者に配慮してのことだろう。

 しかしその間兵士によりこの都市の現状を聞くことが出来た。

 

 ネルリゲンは約二年前、四十七年ぶりに人の手に返ることが出来た都市であり、その際に都市機能を損なわぬよう損害を抑えるため市街戦での甲殻機の導入は最低限に抑えられ、そのため多くの兵士が犠牲になったと。


 そして現在は街の修復に力を入れここを足掛かりに西に位置する元ドワーフ達の国、クラリタル王国の領土奪還のための準備が行われている。


 確かに道中では数多くの職人達が建物の修復作業をしている姿がそこら中でみてとれた。


「皆さん、あれが魔導士の方々に生活していただく建物になります」


 兵士が指差す方向には四階建ての石造りの建物が見える。

 そしてそれに隣接するように木製の格納庫のような建造物が複数棟並んでいた。


「207小隊の皆さんは一番左の格納庫になります」


 そう言うと兵士は四棟並んだ格納庫の左の棟の正面の大扉を横にスライドさせ中へと入っていく。

 ほどなくしてその大扉は左右に大きくスライドし開け放たれていく。


 兵士の先導のもと四人は格納庫の中へと入っていく。

 中には数人の背は低くしかし筋骨隆々で立派な髭を蓄えた中年から初老の男達が待ち構えていた。


 四機の甲殻機はその男達に誘導され彼等の指定する位置へと移動しそのまま体を下ろし機能を停止させる。


 四人はそのまま頭部を下げ甲殻機より降機する。


「おめぇさん達が207で間違いねぇな? ワシはドワーフ工房のカバラッチってもんだ、おめぇさん達の甲殻機を担当する整備士のまとめ役ってところだな、よろしくたのむぜ」


「明石綱一です」

「西脇武です、よろしくお願いします」

「東条……真弓です」

「姫路華だよー」


 おそらく最も年長であろう白髪に白い立派な髭を蓄えた初老のドワーフ族の、カバラッチと名乗る男に四人は話しかけられ、互いに自己紹介を済ませると彼は「おう!」と言うとそのまま他のドワーフへ指示を飛ばし始める。


「よし! おめぇら! さっさと点検始めるぞ!」


「うぇーい!」


 それに呼応するように他のドワーフ達の野太い声が格納庫の中に響き渡る。


「おめぇさん達も長旅ご苦労だったなこっちはワシらに任せてとりあえずゆっくりするといい、向こうに誰かいるだろうから後はそっちで聞いてくれ」


 カバラッチは先程の四階建ての建物の方を指差しそちらに行くように促す。


 そして四人は甲殻機上部に固定されていた自転車を下ろし、尾の付け根部分の収納スペースから衣服や八百屋の親父にもらった果実を取り出し建物の方へ向かう。


 そして扉をノックし中から若い女性の声が返ってくる。 



読んでいただきありがとうございます

もしよろしければ感想や評価、ブックマーク等いただきますと嬉しく思います


他にも短編等書いていますのでそちらも読んでいただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ