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第207甲殻魔導小隊  作者: 光 寿寿
第一章 ヘルズヘイム召喚
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無音の世界


ここは音の無い世界、夢か現実か、はたまた誰かの記憶か。


 辺りを静寂が包み込み、街は荒れ家屋は破壊され所々に火の手が上がる。周囲には数多くの機械人形達の亡骸が転がっていた。


 そんな街並みに一人たたずむ女型めがたの機械人形、口元はマスクのようなものに覆われ、目は丸みを帯びたひし形の緑色のレンズが斜めについており表情を変えることはない。


 レイチェルよりも少し背は高く、手には身の丈を大きく越える巨大な太く長い剣を携える。


 それは斬るものではなく叩き潰すために有るようなものだ。


 対峙するは一人の女性、真紅の着物に身を包み胸元ははだけ豊満な谷間を露に、美しい白銀の髪を足元まで伸ばし、頭部には黄色く尖った狐の耳を、臀部でんぶからは先が白い黄金色の太く大きな尻尾が九本生えている。


 目は虚ろに、表情から感情を読み取るのは難しい。


 手には巨大なハルバートを携える。



 機械人形は大剣を両手で握り脇に構え上体を前倒しに脚で地を踏みしめ、大地を蹴る。

 

 強力な脚力により地は抉られ、爆発的な推進力を起こす、女との距離は一気に縮められる。


 その瞬間、女の表情は一変する。


 目は見開かれ、口角は極限まで上げられ狂喜に満ちた表情へと。


 機械人形は女の正面で地を踏み締め推進力と遠心力を乗せた強力な右薙ぎで斬りつける。


 女はそれを柄で流すこと無く受け止め、大剣を地へと叩きつける。


 そのまま大剣に這わし火花を撒き散らしながら斧刃で機械人形の首を狙う。


 それを機械人形は上体を反らすことにより回避し、そのままハルバートを蹴り上げる。


 その縦回転を利用し大剣を引き上げ、縦から横へ剣筋を変え左薙ぎを女へと見舞う。


 それを側方宙返りで回避し後方へ跳躍、距離をとる。


 女は体をゾクゾクと震わせ、頬を赤く染め、狂喜の笑みを増してゆく。


 再び互いに得物を構え、距離を一気に詰め刃を交える。


 一撃、二撃と得物をぶつけ合い、この度に空気が震え、火花が飛び散る。


 その姿は美しくまるでワルツを踊っているようだった。


 更に数発打ち合い互いに再び距離をとる。


 女の表情は最早形容しがたい程に満ち溢れておりこの時が永遠に続く事さえ望んでいるのかもしれない。


 しかし現実はそうもいかなかった。


 再び距離を詰め打ち合おうとした瞬間、機械人形の胸に強烈な衝撃が走り、その場で膝から地面に崩れ落ちるように座り込んでしまう。


 胸には後ろから巨大なランスが貫通しており、最早彼女は動くことは叶わないだろう。


 彼女の後ろへ下半身が馬のような四足の上半身は人のような形をした頭の無い鎧に覆われた者がゆっくりと近づいてくる。


 その者は左前足を彼女の左肩へかけ、ランスの柄を強く握り強引に引き抜く。


 その衝撃で彼女はその場に倒れこみ、手を震わせながら女へと手を伸ばすが、やがて力尽き辺りは闇に包まれてしまう。






 綱一は朝のいつもの時間に目を覚まし、寝ぼけた頭を覚醒させながら先ほどの夢を思い出す。


 やけにリアルな情景、まるで今まさに彼女であったような感覚は過去の夢とは全く違うものとなっていた。


 綱一は目を覚ました皆に夢について話したが、特に誰も気に停めることはなく夢は不思議なものと言われこの話題はそこそこの盛り上がりで終了することになる。


 ただ、レイチェルがこの夢について詳しく聞いてきたのは少し以外ではあった。


  

 

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