四英傑物語
「ここが王立図書館か……大きいな」
途中トラブルはあったものの、武はなんとか図書館にたどり着いていた。
図書館は、中央にドーム状の屋根、施設は左右にも広がっており、純白の壁に柱が一体となりアーチ状の窓がより外観を引き立てている。
ゴシック建築に近い様だがこの国独自の発展をしているようだ。
(入っていいん……だよな……?)
まるで貴族の屋敷のような外観に武は少し躊躇してしまうが、意を決して中央の大きな両開きの木製の扉を押し開け中へと足を踏み入れる。
「ようこそ、サルムワール王立図書館へ」
建物の中に入ると小部屋になっており、奥にはカウンターで受付であろう女性が出迎えてくれた。
「あの、こちらでは誰でも自由に書物を読むことが出来ると聞いたのですが?」
武は念のため身分の知れぬ自分が、この施設を利用することが出来るのか聞いてみる。
「はい、当施設ではどなたでも分け隔てなくご利用いただいております」
「なお、こちらの書物は全て魔力付与により管理されており持ち出した際にはすぐに所在がわかるようになっておりますのでくれぐれも持ち出さぬようお願いします」
「また、対魔法防御が施されているので破損及び破壊も不可能となっております、それらを踏まえた上で他の方の迷惑とならぬように静かにご利用ください」
「では、中へはあちらの扉から」
女性は事務的に注意事項をのべた後奥の扉へ武を促す。
「ありがとうございます」
「ではごゆっくり」
武は受付の女性に礼をいい促されるままその扉へ入っていく。
中へ入ると、そこにはめまいがする程の本棚に収められた書物の数々。
屋根がドーム状になっている所の真下のみ天井まで吹き抜けとなっており下から二階三階にも本棚が並んでいるのが見える。
「想像以上の量だな……何か有益な情報が得られるといいが……」
武は机に腰掛けかたわらに数冊の書物を積み上げ読書にふけっていた。
主に戦争や現在解っている魔族に関する書物を選び読んでいるがどれも部屋に置いてある物と差して変わる内容のものはなかった。
(魔族に関しては50年たってもほとんどなにも解っていないということか……?)
目頭を押さえつつ書物を手に持ち席を立つ。
すべての書物を返し終え新たなものを探そうと本棚を眺めていると、ふと違和感を感じる。
(戦争、魔族関連の棚に絵本?)
誰かが間違えて返したのかと思いつつこの世界の絵本に興味を持ちその場でページをめくる。
四英傑物語
昔々、この世界には強さを求める強き王がいました。
王は強さを求めるあまり他国へ侵略し多くの国を滅ぼしていきました。
民をないがしろにし、国民は飢え苦しみ、それでも王は強さを求め、強き者に戦いを挑み続けました。
そんな王を見かねて、一人の勇者が立ち上がりました。
勇者はドワーフ、エルフ、機械人形のなかまを集め、強き王に戦いを挑みました。
戦いは三日三晩におよび、ついに勇者達は強き王をゲートの奥に追いやる事に成功したのです。
国民も、お城の兵士でさえもこの事に喜びました。
そして勇者は新しい王様になり共に戦った仲間達と不可侵条約を結び四大王国の間で平和は築かれました。
おしまい
「史実を絵本にしたものか……?」
(四大王国……確か南の人種、西のドワーフ、東のエルフ、北の機械人形だったか……今では人種の国だけになったとか)
パタリと本を閉じもとの位置に絵本を戻し、その場を後にする。
その際一枚のメモ書きの様なものがハラリと落ちる。
武はそれに気づかず立ち去ってしまう。
そのメモにはこう書かれていた。
強き王ルインはゲートの魔力を得て必ずこちらの世界に戻ってくるだろう……と。
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