神河天
真弓と華は1時間程中央広場を散策していた、途中野菜や果物等を売っている屋台なども立ち寄ったりしたがどれも見たことのない物ばかりで改めてここが異界の地であることを再認識すると共に少し新鮮な気持ちになっているのも事実だった。
「いやー、やっぱりこの街で一番賑わってる場所だけあってお店の数も人の量もすごいねー、そして何より広い!今日半日じゃ中央広場すらまわりきれないよね」
華は右手で自転車を押しながら左手を空へ向け大きく背伸びをする。
「そう……だね」
真弓は華の横を歩きながら中央の大きな噴水の方向を向き華の言葉を聞き流している。
「どしたの?何か気になる?」
華も真弓と同じ方向に顔を向けるが特に気になる点はなかった。
家族連れや子供が噴水のヘリに腰を下ろして休憩や何かを食べている。
しかし、少し遠く華には一人一人の表情を読み取ることは出来ない。
「実はちょっと気になることがあって、あそこに一人で座ってる男の子、私たちがこの広場に来たときから一人で座ってるの、最初は親がちょっと買い物とかで待ってるのかな?って思ったんだけどもう1時間以上のあそこから動いてないの、もしかしたら迷子かも」
「んー?相変わらず目がいいねぇ、うちには男の子かどうかも良くわからんよ」
華は手を目の上にかざし目を細めながら噴水のヘリを注視する。
「よし!ちょっと話しかけてみよう」
「え?でももし違ってたら……」
「その時はその時!もし迷子なら子供一人でなにかあったら大変じゃん?」
「そ……そうだね、行ってみよう」
噴水のヘリには見た目10歳にも満たない程の黒髪の男の子が何をするでもなくただただ周りを眺め座っている。
時折辺りを見回し人の流れを観察していた。
そして、真っ直ぐ彼のもとに近づいてくる二人の人物に気が付く。
真弓と華は彼の元に寄ると自転車を停め、目線の高さを合わせるためしゃがみこみ彼に話しかける。
「こんにちは、一人?親御さんとかは?」
「こんにちは、僕は一人、親はいない」
彼は華の質問に表情を変えることなく淡々と答える。
「え……?」
(やば……もしかして)
「あっ、別に親が死んだとかそう言うのじゃないよ」
「あー、なんだ、うちはてっきり」
「まぁこっちの世界にはいないけど……」
彼は最後にボソリと付け加える。
「ん?なにか言った?」
「んーん、なんでもない、で、なにか用?」
「キミ……もう1時間以上……ここにいるんじゃない?どうしたのかな……って」
真弓は少し緊張しながらも優しい口調で彼に質問する。
「ちょっと待ち合わせに早く来すぎて待ってるだけだよ」
「あと……どれぐらい?」
「んーと、2時間位だと思う」
「2時間!?めっちゃ待つじゃん!」
華は予想以上の時間に思わず驚愕してしまう。
「別に、待つのとかなれてる」
「ダメだよ、こんなところで子供が一人で居たら、なにかあるかもしれないじゃん、ほら誘拐とか!」
「そんなリスク冒す人いないと思うけど……」
「待ち合わせの人の特徴わかる?」
華は彼が言い終える前に質問を被せてくる。
「え?えーと全身鎧着てる人だと思う」
「その人はここに来るんだよね?」
「うん」
華は立ち上がり膝についた土埃を両手でパンパンと払い彼に手をさしのべる。
「じゃ、一緒に行動しよ?その鎧の人はきっと真弓が見つけてくれるから大丈夫!」
彼は真弓に視線を向ける。
「ごめんね……華ちゃんちょっと強引なとこあるから、でも悪い子じゃ……ないんだよ?」
彼はやれやれと言いたげな表情をしながら自分に差し伸べられた手を握り立ち上がる。
「しょうがないから付き合ってあげるよ」
「なにおう?生意気な、あっ自己紹介がまだだったね、うちは姫路華でこの子が東条真弓、よろしくね」
「よろしくね」
「僕は神河天よろしく」
「え?もしかして日本人?」
華はそれっぽい名前にまさかとは思いつつ天に聞いてみる。
「そうだよ?わかってて声かけたんじゃないの?」
「ええー?!」
2人ともまさか同郷の人間がいるとは思っておらず思わず声をあげてしまう。
それもそうだ、ここは日本でもなければましてや地球ですらない異界の地なのだから。
「だって魔力量が……お姉ちゃん達もしかしてまだこっちに来たばっかり?」
「そうだけど……」
「じゃあ無理もないか、そのうちこっちの人と僕たち地球の人がわかるようになると思うよ、あっ、ちなみにこっちの世界に地球人が1200人ほどいるから」
「マジ?」
「うん」
ちなみに彼は8歳です
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