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第207甲殻魔導小隊  作者: 光 寿寿
第一章 ヘルズヘイム召喚
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いつもと違う朝


 四人がこちらの世界にやって来て丁度一週間がたったころ、いつものように起床し朝食を食べ終えていた。

 いつもならまもなくヴァルがやって来るのだがこの日は違った。

 四人は相談し取り敢えずいつも通り魔導石を片手に各々時間を過ごす。

 綱一は読書だけでは流石にもたないと思いいくつかのボードゲームを廃材等から自作していた。

 テーブルにはオセロ将棋五目並べ等がつまれてある。

 綱一はその中から将棋を選び真弓と共に対局していた。


(ふふふ、この穴熊なら早々に抜かれ無いはず!その間にじわじわと……あれ?東条さんのあの手もしかして地下鉄飛車……?ヤバいヤバい!気が付かなかった!あんなマイナーな手を使ってくるなんて!どうするどうする!穴熊は上部からの攻撃に弱い!このままでは!)


「参りました……」


 決着は早々についたようだ、綱一の穴熊囲いに対し真弓は地下鉄飛車による上部からの強襲であっけなく守りを瓦解させ見事な勝利を納めた。


「まさかあそこで地下鉄してくるなんて……」


「た……たまたま、やってみたら明石くんが穴熊で……」


「そういやヴァルさん今日は遅いね、何かあったのかな?レイチェルさんに聞いてもわからないって言ってたし」


「ど……どうしたの……かな?」


 この時すでにいつもの時間より1時間ほどが経過しており二人は流石に心配になってきたようだ。

 そんなとき外の広場でランニングをしていた華と武が汗をタオルでぬぐいながら入ってくる。


「ヴァルさんきたよー」


 華が二人に声をかけ二人は流石に心配になっていたこともありすぐさま席を立ち外へと向かう。


「いやー、すまんすまん、こいつを取りにドワーフ工房に寄っておったら遅くなってしまった」


 ドワーフ工房とは王都サルムにおいて武器防具及び甲殻機の外装甲の製作を一手に担っている工房である。

 そしていつもなら馬に乗ってやって来るヴァルが今日に限っては荷馬車に乗って来ていた。


「ヴァルさん!これ!」


 荷台に積まれた四台のそれを目の当たりにした綱一は興奮を隠すことが出来ずにヴァルに訪ねる。

 荷台に積まれたそれは前後に二つの車輪、前輪上部には方向を操作する左右に延びたハンドル、前輪と後輪の中間には前進させるために必要な動力を後輪へと伝えるためのペダル、そしてその上部には腰を据え安定した走りと疲労を和らげるサドルを持つ。

 そう、自転車である。


「10年ほど前に君達と同じ境遇の者が考えてね、何台かドワーフ達に頼んでつくって貰ったんだが此方ではあまり流行らなくて倉庫に眠っていたのを思い出して持ってきたんだ、えー、なんと言ったか?」


「自転車!」


 華が間髪いれずに笑顔で答える。


「知っているのかね?」


「俺たちの世界では結構メジャーな乗り物ですよ、まさかこっちの世界で見れるとは」


「そうかそうか、君達にこれをプレゼントしよう、今日はこれに乗って思う存分王都を散策してきなさい、つまり今日訓練はお休みだ。もう君達に魔力操作に関して教えることはないよ、後は甲殻機が完成したらにしよう」


 各々突然の休みに両手をあげて喜びいそいそと荷台から自転車を下ろしていく。


「ああ、それとこれも渡しておこう」


 ヴァルは四人に王都の地図と手のひらサイズの金属の板を手渡す。

 この金属の板はこの世界では一般的なお金を管理するための魔導具であり日本で言うところのキャッシュカードのようなものである。そして目を閉じ額に当てて魔力を流せば残高を見ることができる。

 

 四人はそれを受けとり残高を確認する、中には二万クランツ入っている。

 クランツとはこの世界の貨幣単位であり日本円にして約二万円程度となっている。


「国からの支給だ、大事に使いなさい」


 四人はヴァルに御礼を言い、ラフなTシャツ長ズボンから王都では一般的な此方の衣服に着替えるために各々自分の部屋へと帰っていく。


 男性は主にブラウスにベストを重ね着しズボンは太股から膝にかけて余裕のあるふっくらとした造りとなっているが、ふくらはぎから足首までは横を紐で編み上げフィットさせる造りとなっている。これに革のブーツを合わせればこの世界では一般的な服装となる。


 女性用には2種類あり、一つはブラウスに袖が無く胸元にも生地の無いワンピースで腰をコルセットのように編み上げになっている、いわゆるカートルと呼ばれる女性用筒型衣服であり、此方は少し胸を強調した仕様となっている。


 もう一つは上半身に余裕のあるふっくらとした造りとなっていて、此方もウエストをコルセットのように編み上げになっている。どちらも革のブーツを合わせるのが吉である。


 

 四人は着替え終わり1階でお互いおかしいところが無いか確認し合う。


「へへー、どう似合う?」


「少し……恥ずかしいです……」


 華はその場でクルリと1回転しスカートをフワリとなびかせる。

 対照的に真弓は顔を林檎のように赤らめスカートの裾を握りながらうつむいていた。


「とっとてもよく似合ってるとオモウ……カワイイトオモウヨ」


「ああ、よく似合ってる可愛いぞ」


 綱一は誉めようとしたが言葉に出すのが恥ずかしくどんどん声が小さくなっていき最後は何を言っているかよく聞き取れなかった。

 やはり此方も対照的に武は恥ずかしげもなく親指をたてて二人を称賛する。


 

 特におかしいところもなかったのでそのまま四人は自転車にまたがり工場を後にする。

 三人はヴァルに対して会釈をし華はブンブンと手を降っている。


(四人とも気を付けてな、何かあれば彼らが助けてくれよう)


 ヴァルはそんな四人を優しい目付きで見つめ軽く手を降り見送っていた。



 ヴァルはそのまま工場の中へと入りレイチェルの元へと足を進める。


「レイチェル、ドワーフ工房から伝言だよ、外装甲は今日中には納品できるようだ」


「そうですか、では後三日ほどで完成できるでしょう」


 レイチェルとヴァルは元々あった一機の甲殻機と装甲の付いていない残り四機の甲殻機へと目を向けた。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読ませていただきました! いよいよ何かが始まる感じですね。 [気になる点] 数字ですが、全角と半角(1と1)、どちらか統一した方がいいと思います! [一言] 戦争…しているんでしたよね?脅…
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