プロローグ
甲殻機、魔力量の多い者のみが乗ることを許される全長五メートルを越える蜘蛛型高機動兵器、背中に大型主砲である魔導砲を備え、頭部には回転式六連装砲を標準装備とした世界最強の戦力である。
そんな甲殻機が五機、荒野をひたすら駆けていた。
「目標の魔力を感知したよ! 偵察隊の情報通り四つ!」
「よし! 綱一華武は魔導砲により牽制しつつ接近、真弓と私は後方から援護する! さっきも言ったがゴーレムは胸の中にある要石を破壊しないと幾らでも再生する! 露出させるには硬い外殻を破壊する必要がある!」
「そのためにはある程度接近して魔導砲を撃ち込まなければならない、奴らの一撃は強力だから気を付けろ!」
「了解です」「はーい」「了解」「わかりました」
「よろしい、では攻撃開始!」
五機の甲殻機は指揮官の指示通り岩で出来た巨人、ゴーレムへと攻撃を開始する。
ゴーレムの体躯はどれも十メートルをはるかに越え特に発達した腕はそれだけでも全質量の五割を占めていた。
先行する三機の甲殻機の魔導砲により、最も手前にいた一体の胸部へと光弾が撃ち込まれ外殻が破壊され、すかさず後方の真弓とよばれた甲殻機により露出した要石を狙撃され、ゴーレムは体が崩れただの岩へと成り変わる。
「まずは一体!」
「真ん中と左の二体は俺が引き付ける! 右の一体を頼む!」
そう言うと武と呼ばれた甲殻機は二体のゴーレムへ光弾を撃ち込みながら少し左へ距離をとる。
二体のゴーレムはゆっくりと歩みを武へと向ける。
残った一体へ綱一と華が攻撃を仕掛けるが右腕に阻まれ思いの外効果が薄いようだ。
二人は振り下ろされる拳を掻い潜りながらゴーレムを中心に対角に別れ旋回しつつ砲撃を集中する。
二人の前後左右からの砲撃に加え後方からの援護もあり、ゴーレムの重心が少し後ろへと傾く。
その隙を綱一は見逃さなかった。
「魔導防壁展開!」
綱一がそう叫ぶと、甲殻機を薄緑のバリアが周囲を覆う。
そのまま勢いよく跳躍しゴーレムの胸部へ体当たりをかますと、ゴーレムは体勢を完全に崩し胸部のガードが完全に外れる。
そこへバリアを解いた綱一が弾かれながらも砲撃し、すかさず後方の真弓と足元の華から追撃を受けその場で崩れ去る。
「あと二体!」
武はバリアと砲撃を交互に使い分け相手の攻撃を回避しながら二体を相手に怯むことなく戦っていた。
しかし援護があるとは言え一人では決定打に欠け、戦いは拮抗していた。
そこへ一体を倒した綱一と華が合流し一気に有利に傾く。
そのあとは特に苦戦することもなく残りの二体を撃退することに成功する。
この世界はヘルズヘイム、地球ではない何処か遠い異界の地。
地球人である彼等が何故このようなところにいるのか、何故甲殻機といわれる兵器に乗り戦っているのか。
それは三ヶ月前にさかのぼる。
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