二話 魔法について学んでみた
少し矛盾するかもしれませんが、生暖かい目でスルーしておいてください。
朝起きたら、見慣れない天井があった。
「そうか。昨日はいろいろあって、死んだんだったな。」
何を隠そう俺はきのう死んだのだ。そして、創造神にあっていつの間にか不老になっていたり、神様たちを倒すことになっていたりとハチャメチャな状況である。
朝起きたら、実は夢オチを期待していたがそうであるはずもなく、一周回って落ち着いているのである。
「よっし。ひとまず、朝ご飯でも作るか。」
昨日は、奇想天外な出来事が立て続けに起きたため、夕食も食べずに寝てしまったが、食材は創造神が準備してくれたらしいので、食べるものには困らないのは、ありがたい。
「たしか、廊下に出て突き当りを右でよかったはず。って、こっちはトイレか。」
うろ覚えな、旅館の内部を歩きながら、台所を目指す。
実は、外観はそこまで大きくはないが、内部は見た目の倍ぐらいの広さがある。まぁ、何というかファンタジーだ。
「というか、体がいつも通りに動くな。昨日は、体調が悪い中で部活をして、熱が四十度出た時並みに、苦しかったのに。これが、魂が体に馴染むということだろう。でも、なんか違和感があるが、気にせずにまずは、朝食だ。」
台所に入ると、大型の冷蔵庫や、バラエティー番組の芸能人の家紹介でした見たことないような最新家電やコンロが揃っていた。冷蔵庫には、多種多様な食材が入っているし、見たことのない調味料もそろっていた。
ちなみに、大学から一人暮らしだったこともあって、料理には人並みにはできる自信がある。食材を冷蔵庫から取り出し、調理を始める。メニューは、ザ・日本の朝食だ。
野菜を切り始めたとき、頭の中でまた無機質な女の声が響いた。
<新しいスキルを得ました。>
<料理スキルのレベルが上がりました。>
<料理スキルのレベルが上がりました。>
「お~。レベルが何故か上がったな。なんか、本当にゲームって感じだな。でもなぜ、一気にレベルが上がったんだ。」
といいつつも、ドンドン料理を進めていく。
30分後、食卓には、みそ汁や焼き鮭、白ご飯が並んでいた。久しぶりのごはんである。
「では、いただきます。」
――――
「ごちそうさまでした。」
食べ終え、食器を洗いながら、今後の予定を考える。
「そういえば、この後どうしよう。創造神は、いろいろ用意したって言ってたし、この世界の本の一つや二つはあると思うが。寝室の隣に書斎みたいな部屋があったし入ってみればなにかしら、暇をつぶせるものがあるだろう。」
皿を洗い終えると、実際に寝室の隣にある書斎に入ってみた。
「すげ~。実際に入ってみるとやっぱり見た目より広く感じるな。この本棚、俺の身長の三倍はあるんじゃないか。」
中には、俺の身長の三倍は軽くあるであろう本棚が、真ん中の机を囲むようにびっしりと本で埋まっていた。
「ここまで、埋まっていると壮観だな。あっ、机の上に紙がおいてあるな。」
『この部屋は、お主の好きに使ってよい。まずは、儂が戻ってくるまでに、選んでおいた五冊を読んでおいてくれ。
ちなみに、鍵のかかった引き出しの開け方も分かるじゃろう。そこには、儂の秘蔵コレクションにつながるヒントがあるぞ。ついでに、お主の部屋のものも持ってきてあるぞ。太ももフェチだったとはの……』
机の上には、他に本が五冊おいてあった。
『この世界とは』
『転生者について~黒髪ショタは正義である~』
『魔法について~これ一つで基礎からエロエロ魔法まで完璧~』
『ゼロから始める魔導具製作』
『自伝~やはり儂の家族は間違っている~』
「他にすることもないし、読むか。」
そして、俺は読み始めるのであった。
――――
食べて、本を読んで、寝ているとあっという間に、創造神との約束の日になっていた。
本の内容を簡単にまとめると、こんな感じになる。
「まず始めに、この世界は創造神は私室といっていたが、簡単に言えば小さな地球である。まず始めに、創造神たちは様々な惑星を作り出したらしい。その一つが、太陽や地球であるらしい。また、月のように偶然生まれてしまった星もあるが、あれはごくまれに存在するだけらしい。さらに、それぞれの星にはそれぞれの特徴があるらしい。地球でいえば、魔力や魔法といったファンタジーな世界ではなく、科学を中心とした文明ができるように作ったらしい。しかし、それは少数派であるという。なぜなら、神力の劣化版が魔力みたいなものであるので、地球のような科学を中心とする文明には干渉することが難しいという。ただ、完全に魔力がゼロというわけではないから、ごくまれに転生者と呼ばれる。より高いレベルの文明、または魔法に頼り切っていない文明から魂だけを異世界に転生させることはかのだという。そのとき、稀に前世の経験を引き継ぐことの出来る人がいるらしい。多分、俺の料理スキルはこれにあたる。」
とまあ。格好つけてみたが、少し長くなってしまった。それが、最初の二冊の内容だった。他にも、星を作った年代だかが書いてあった。他の三冊については、さっぱりわからなかった。始めてプログラミング言語の本を読んだ時並みに解らなかったので、創造神に聞いてみようと思う。
「やぁやぁ。久しぶりじゃな。しっかり勉強していたようで何よりじゃ。一つ訂正すると、月は儂が作ったものじゃ。面倒な神が居っての隕石を落としたら、副産物のような感じでできたのじゃ。」
「そうだったんですか。というか、聞いていたんですね。」
「たまたまじゃ。いつも聞いているわけではない。」
目の前に急に創造神が現れた。また、例の転移魔法だろう。でも、転移魔法は空間魔法の中でも伝説級と書いてあった。やっぱり、創造神はすごいのだろうか。
「創造神さん、魔法ってどう使えばいいんですか。本にも書いてありましたが、いかんせん抽象的過ぎて分からないのですが。」
「目を閉じて、体の内側に集中してみるのじゃ。地球にいた時に感じなかった流れみたいなものを感じるじゃろう。それが、魔力の流れじゃ。一般的に、体内にあるときのものを魔力と呼び、体外に出るとマナと呼ぶのじゃ。基本的には、同じじゃが、マナには基本的には属性を持っているのじゃ。しかし、儂が使っている空間魔法のように、属性のないマナもある。これが、伝説級といわれる所以じゃな。」
ほお~。つまり、俺の体内にあるのは、無属性の魔力であり、体外に出す際に変換して魔法を使うというイメージでよさそうだ。
「そのマナの属性は、火、水、風、光、闇の基本的な五属性のほかに、聖女と聖者だけが使える神聖魔法、無属性の空間魔法や時空魔法でいいんでしたっけ。」
「だいたいはそうじゃな。あとは、一部の種族のみが使う魔法だな。ついでに、言うと魔法にはクラスがある。火属性の魔法で言えば、火魔法、炎魔法、獄炎魔法とクラス、スキルのレベルで言うと、五レベルごとに上がっていのじゃ。」
簡単にまとめると
――魔法にもスキルがある。スキルがなくても、魔法を使うことは可能だが、効率が悪くなるのと、発動までに時間がかかる。
――魔法のスキルは、最大十五レベルで、五レベルごとに名前が変わっていく、威力は使う人依存のため変わらないが、規模が大きくなったり、使う人に依存する割合が減る。
俺が最高レベルの魔法を使っても、創造神が魔力をより込めれば最低レベルの魔法でも、俺の魔法を打ち消すことができるということだ。
「ところで、俺の持っている絆な魔法ってなんですか。」
「あ~。それな、よくわからんのじゃ。というか、名付けるならユニークスキルじゃ。発現するには、特別な条件をクリアしなければならないらしい。それに、魔法に対する才能も必要らしいのじゃが、よくわからんのが現状じゃ。儂らの作ったシステムのエラーとでも考えておいてくれ。」
「エラーならば、直したりはしないのですか。」
「エラーとは言ったが、最終的な完成形態に移行する時に生じた矛盾を、正しく世界が補正した時に生じた副産物みたいなものじゃ。」
つまり、世界が独自に作り出した世界自体には害のないものということか。
「詳しくは分からんが、危なくないことは保証しよう。危ないのは、消し去ったからな。有名なのは、キリスト教の七つの大罪あたりじゃな。」
と魔法の説明を終えたあたり急に携帯電話の着信音が鳴り響いた。創造神がどこからともなく携帯電話を取り出し、一言二言言うとすぐに電話を切った。
「いや、すまんな。急に電話に出てしまって。新しく仕事ができてしまったようでな。これから、百年ぐらいは戻ってこられそうにない。ひとまず、これを渡すから読んでおいてくれ。ついでに、レベルアップと実験用に、ダンジョンを準備したから存分に活用してくれ。では、失礼したのじゃ。」
渡された本見ながら、ひとりこれからの予定を立てるカイであった。