小さな世界(3)
放火犯で疑われた時とは話が違う。今、俺が見ているこのニュースは外国の大統領官邸で起きた出来事だ。
そして、そこで俺と同じ見た目をした別の何かは、光の棒、いや、剣というべきか、それ一つで官邸を跡形もなく破壊していた。
「俺……なのか……。それにあの光、もしかしてヤツらのところで見た……。」
「私は、あんたのことをよく知っているつもりだけど、どうしてもね、信じたくても信じられないものってあると思うのよ…。」
「信じられないなら信じなくていい。でも、俺じゃないことは事実だよ。」
俺はそう言って、何も持たずに家を出た。この場所にはいれない。それは信じてもらえないからではなく、このままでは母親のことも巻き込んでしまうような気がしたからだ。
「朔真っ!」
「礼音?こんな時間に何してんだよ!」
「それはこっちのセリフよ!っつ、それより!あのニュース!本当にどうなってるの?なんで朔真と同じ見た目の人間が!」
「わからない。わからないけど、きっと昨日の火事と関係してるんだと思う。今日学校に来てたヤツらとも。」
「これからどうするの……?」
「麻倉が、麻倉が何か知っているんじゃないかと思って。学校から帰る時も、あいつ何か妙なこと言ってたろ?」
「私も行く。朔真がダメって言っても私着いていくからね。」
礼音はまるで俺がダメというのを見透かしていたかのようにそう言った。俺はその言葉に来るなと強く言うことも出来ず、一緒に麻倉のもとへ行くことにした。
-学校-
時刻は午後七時。ほとんどの生徒や教師は帰宅している。そんな中麻倉は俺たちの教室にいた。
「来ると思っていた。理解できないだろうが今から言うことに従え。insideから離れろ、豊田。」
「inside…?なんだよinsideって。わかってることがあるなら全部教えてくれよ!なにがどうなってんだよ!」
「そうだな。地球のこと。そう言ってピンと来てくれれば助かるがそうもいかないだろう。昨日今日で起きている出来事、おまえと見た目がそっくりな生命体はinsideの科学者たちが作った実験体初号機と言ったところか。」
淡々と語る麻倉の言葉に俺は一切反応することも理解することもできなかった。壮大すぎる話と非現実的すぎる話。その二つを同時に理解することなんてよっぽどの人間でない限り出来ないだろう。だが、礼音はそんな俺とは違い、理解しようと必死に麻倉の話に食らいついていた。
「あの!先生!よくわかんないけど、そのinside?じゃないところに行かなかったら朔真はどうなるの?それにどうして初号機は朔真に似ているの?」
「insideを離れなければ明日にでも、豊田は全世界から敵と認識され追放されるだろう。豊田をモデルに作ったのはただの偶然なのか必然なのか俺にはわからないが、どちらにせよ運が悪かったと言わざるを得ないな。」
「insideじゃないところって…?」
「outside。おまえらは地球の住人だ。その存在さえ知らないだろうが、人間が住んでいるのは地球だけじゃない。五百年ほど前に人間たちは様々な星へ移住を始め生活している。地球のことをinside、それ以外がoutsideと呼ばれているが、insideの人間にはそのことは明かされていない。」
「なんで先生は知っているの…?」
「それは。俺はoutsideの人間だから。」