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天下布愛! ~男少女多のあべこべ世界、賭けるは男子の戦国ゲーム~  作者: 橘 ミコト
第一章 貴方はまだ、宗麟の恐ろしさ(優しさ)を知らない――vs大内家編

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2-6. 始まりはいつも道雪 

「これより、大内家と大友家の『戦《いくさ》』を始める!」


 『戦』の審判員、宇佐八幡宮《うさはちまんぐう》の巫部《かんなぎ》が声高らかに宣言する。


「戦方式は”団体戦;魚鱗《ぎょりん》”! 両軍は所定の位置へ!」


 随分と簡単な口上である。

 神社としても慣れたものなのであろう。


 巫部《かんなぎ》の言葉が終わると同時に、人々はこぞって動き出した。


 しばらくの後。

 動きがなくなり、皆が固唾を飲んで開始の合図を待つ。



 ――ブオォオオオォォォォォォォ



「よっしゃ! 行くぜぇぇぇぇぇぇ!!!」


 開幕のホラ貝が鳴る。


 それとほぼ同時に飛び出したのは、立花《たちばな》道雪《どうせつ》であった。


 野生の勘なのだろうか。

 素晴らしい反応速度である。


「長増《ながます》、そちらは任せるわ!」

「お姉さん、承りました」


 頬に手を当てニッコリと微笑む長増《ながます》を横目に、道雪《どうせつ》に続いて颯爽と鑑理《あきまさ》も走り出す。


 既に大内側の先頭集団と接触しそうな道雪《どうせつ》は放置だ。

 下手に彼女へ近づくと巻《・》き(・)添《・》え(・)を(・)く(・)ら(・)う(・)。


 去っていく鑑理を見送った長増《ながます》は、気合を入れるように深呼吸をすると、


「よし。お姉さんたちも始めましょうか」


 そこまで気合の入ってなさそうな声を上げた。


「えっと、敵の将五人の内で道雪《どうせつ》殿の敵足りうるのは杉《すぎ》興運《おきかず》殿と大将の陶《すえ》晴賢《はるかた》殿くらいですかね」


 鑑速が接触し始めた合戦模様を眺めながら緊張した声音で言う。

 

 今回の『戦』は”団体戦;魚鱗”。

 将の数は五人だ。

 そのため、最低でも五人を倒さなければならない。


 しかし、大友家きっての武闘派、立花《たちばな》道雪《どうせつ》の武力は異常の一言である。


 スカウターなどがあれば五十三万と出てもおかしくはない。


「……”雷切《らいきり》”」

「あれ、ズルくありませんか? 意味が分からないんですけど、あの強さ」

「それは”雷切”だけの問題じゃないと、お姉さん思うなあ」


 のんびりと喋っている三人。


 その実、目線と思考はフルに回って現状を把握。

 都度、近くにいる伝達兵へ必要な事を指示している。

 その上での、のんびりだ。

 

 伊達に大友家の凄い人たちの集い、加判衆《かばんしゅう》していない。


 普段は宗麟の影響で少しネジが飛んでいるが、本当はとても優秀な人たちなのである。


「敵に動きはありそうかしら?」

「……皆無」

「士気がなんだか高くないですねえ」


 鑑速《あきすみ》はふむと顎に手を当て考える。


 ”団体戦;魚鱗《ぎょりん》”は大人数でぶつかる『戦』の一つだ。


 宣戦布告を受けた大友家は、戦の仕様について決定権を持っていた。


 その中で”魚鱗”を選んだ理由は、


「天気はどうです? 雷《・》呼《・》べ(・)そ(・)う(・)ですか?」

「……良好」

「木刀なのに、なんで雷受け止められるのかしら」

「長増《ながます》殿、それは気にしたら負けです」


 木《・》刀《・》を用いた戦闘方法であるためだ。


 そして、この時代。

 摩訶不思議な現象が数多く起こる。

 寺社の行う”神の御業”もその一つだ。


「そういえば、陶《すえ》晴賢《はるかた》殿は”業《・》持《・》ち(・)”なんですかね?」

「興房《おきふさ》さんはそうだと聞いたけれど、どうでしょう」

「……」


 石宗《せきそう》はプルプルと首を横に振る。


「まあ……道雪《どうせつ》殿なら大丈夫ですかね」

「そうね。お姉さんも大丈夫だと思う」

「……」


 石宗《せきそう》もコクリと首を縦に振る。


 そして、三人は揃って後ろを振り返った。


「「義鑑《よしあき》様、知ってますか?」」


「知らんもん……。ワシ一人だけ後ろに置かれて仲間外れにされたから、ワシ知らんもんっ!」


 毎度の如く、駄々をこねるご当主様がそこにいた。


「総大将なんですから、前線に出す訳ないじゃないですか」

「そうですよ、義鑑《よしあき》様。それに、お姉さんたちもいますから」

「お主たち、ワシに話しかけてくれんかったもん!」

「子供ですかっ!?」

「鑑速《あきすみ》、義鑑《よしあき》様は精神的には子供よ」

「この人から宗麟《そうりん》様が産まれたって言われても、俄《にわ》かには信じられませんね……」

「ワシの息子を馬鹿にしとるのかっ!?」

「義鑑《よしあき》様を馬鹿にしてるんですよ!? あ、しまった。つい本音が」

「……馬鹿」


「伝令!」


 突然、一人の兵が三人の前に駆け込んでくる。

 砂埃と青草に塗れた姿。

 前線から戻ってきた伝令兵のようだ。


「道雪《どうせつ》様がお二人、鑑理《あきまさ》様がお一人、将を打ち取りました!」



「「「はやっ!?」」」



△▼△



「ひゃっはあぁぁぁぁぁああああ!!」


 ラリっているのではない。

 道雪《どうせつ》である。


 雪崩が如く押し寄せてくる敵兵。

 それを体捌きのみでよける。


「オラオラオラオラオラァ! どうした!? 大内の兵はこんなもんかぁ!!??」


 完全にバトルジャンキーだった。


 兵も果敢に攻め立てるが、どこか及び腰だ。

 無理もない。


 戦場の道雪《どうせつ》は悪鬼羅刹。


 近寄らば即退場の早業で切り伏せられる。


 ”団体戦;魚鱗”の退場判定は単純だ。

 額に巻いた鉢巻きのたなびく先。

 そこには鈍く輝く『鉄の家紋』が付いている。

 

 それを叩き落されれば死亡判定だ。


 日に反射する家紋が魚の鱗に見えるから、という由来だが、本当かどうかは分からない。

 彼女たちにとっても、別にどうでも良い事である。


 つまり、”木刀で鉢巻きの先を切り落とす”。


 ”団体戦;魚鱗”はそういう仕合《しあい》だった。

 中々に難易度が高そうに聞こえるが、布に鉄を縫い付けているだけなので、割りと簡単にポロリと落ちる。

 それこそ、隣の人とぶつかったレベルで落ちる事もある。


 そのため、


「うらあぁぁぁあああああああ!!」


 道雪《どうせつ》の剣圧で巻き起こる風を受けるだけで、大体負ける。


「何、あの人!?」

「大友家の立花《たちばな》道雪《どうせつ》よ!」

「え!? あの鬼道雪!?」

「そう――”雷切《らいきり》”が来るわよ!!」


「道雪《どうせつ》!」

「あん? んだよ、鑑理《あきまさ》。こっちの獲物を横取りに来たのか?」

「貴女じゃないんだから、そんな事しないわよ」

「じゃ、なんだよ」

「石宗《せきそう》から伝言」

「おっ」


「準《・》備《・》が(・)で(・)き(・)た(・)らしいわ」


「待っってましたぁぁぁ!」


 道雪《どうせつ》のテンションがMAXになった。


「後の将は二人だけだろ? 一発で仕留めてやんぜ」


 瞳孔を開き、口角をこれでもかと上げている道雪《どうせつ》。

 これを見慣れている鑑理《あきまさ》でも、正直言えば内心で引いていた。

 鬼と呼ばれても仕方がない。

 彼女の木刀にも、その原因はあるのだが。


「良い、道雪《どうせつ》? あまり使いすぎると足腰が立たなくなるのだから」

「わぁってるって」


 鑑理《あきまさ》のお小言はヒラヒラと振られた手によって遮られる。

 本当に分かっているのか。

 いや、恐らく分かっていない。


「全く……」


 そんなところも分かってしまう鑑理《あきまさ》はため息をひとつ。


「あん?」

「貴女一人じゃ不安なのよ」

「そりゃ優しいこって」

「無駄口はいいわ――行くわよ」

「おうよ!」


 大友家のゴールデンコンビ。


 普段はいがみ合っていても、お互いの人柄は呼吸の仕方までしっている。



「「一気に大将まで抜ける!!」」



 この二人が組んで、負けを知る事はない。

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