番外編~わたしのおねえさま~
わたし、みりあ。きょーからにっきをかくの。
おねーさまがしてる。らしい。じと、ことばのれんしゅーになる、きいたの。
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きょーもおねーさま、きれい。きらきら、ひかって、かがやいているの。
でも、ほかのひと、あんまり、きれいちがうの。
きいてみても、みんな、ふしぎそーにする。なんでだろ。
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おねーさま、くっつく、だいすき。
とってもおちつくの。
だから、きょーもくっつくの。
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わたし、くっつく、おねーさま、よろこぶ。
わたしもうれしー。
だから、きょーもくっつくの。
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きょーは、おねーさま、いそがしそー。
だから、きょーは、がまんするの。
でも、すこしさびしー。
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うれしー。きょーは、おねーさまと、いちにちじゅーいっしょ。
ぎゅっとする。わたし、おちつく。おねーさま、うれしそー。
これからも、ぎゅっとしたい。
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きょーは、おねーさまと、まちにいったの。
おねーさまが、なにしてるか、よくわかんなかった。
でも、たのしそーなおねーさま。みてると、しあわせ。
うれしくなるの。
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きのうは、ねつでねていたの。でも、おねーさまがいっしょ。
おかーさまもいっしょ。くるしかったけど、うれしかった。
あ、あと、おとーさまも。
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おねーさまは、ものしりなの。みんながしらないこと、しってる。
おとーさま、おかーさま、しらない。でも、おねーさま、しってる。
いっぱい、たくさんあったの。ふしぎ。
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文字、いろいろおぼえたの。でも、まだ少ない。
もっと知りたい。おねーさま、いっしょ、が良い。
そー言ったら、おねーさま、よろこんでた。
わたしも、うれしーの。
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最近、やっと、何が見えているのか、わかってきた。
私、光が見えているの。こじんさ(?)というものがあって、皆ちがうの。
おねーさま、一番、きれい。おかーさまも、きれい。でも、おねーさまの方が、好き。
おとーさまは、びみょー(?)。
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おかーさま、最近、光がふたつになったの。何でだろう?と思ってた。
おねーさまが、おかーさまの中に、あかちゃん(?)がいるって言ってたの。
私も、あねになるのよと、言われた。私は、おねーさまのいもーとが良い、言ったの。
そしたら、それはかわらないのよ、言ってあたまなでてくれた。うれしかった。
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おとーと、うまれた。おねーさま、よろこんでた。見てると、うれしい。
でも、何でだろう? 少し、もやもやするの。
おねーさま、小さい声で、しんぱいがへった。言ってた。
どーいういみなのかな。
私、がんばるよ?
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おねーさま、私とあそぶ時間、へった。少しかなしい。
でも、わがままは良くない。がまんするの。
だから、あそべる日は、いっぱいあそぶの。
それまで、おべんきょー、がんばる。
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今日は、久しぶりにお姉様と一緒にお出掛けした。幸せな時間だった。
お姉様は、私が舌足らずな話し方をしている方が嬉しそう。
だから、本当は皆と同じく普通に話せる様になったけど、今は前と同じ話し方にしている。
でもそれは、お姉様に対してだけなので、偶に使用人に変な顔で見られる。
少し恥ずかしい、でもお姉様の笑顔の為だから頑張れる。
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最近、以前にも増して人の光が詳しく見えるようになってきた。
体調を崩している時には、光に陰りが見える。元々、個人差で明暗が分かれていた。
お姉様はいつも綺麗で、明るく、陰りが全く無い。
お母様は、お姉様に劣るものの、綺麗で明るいが、偶に陰りがある。
そんな時は決まって体調を崩している。心配になるから、隠さないで欲しい。
さり気なく、使用人に伝える事にした。
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お姉様が王都に行ってしまった。偶に帰ってくるとはいえ、少し寂しい。
学院は全寮制と聞いた。いつかは私も通う事になる。
でも、私が通う時にはもうお姉様は学院に居ない。そう思うと切ない。
同年代の方達が集まり、共に学び、社交界の練習や派閥形成も行うと聞いた。
心配だ。お姉様は気にして無かったが、同年代という事は、男性も居るという事だ。
リンが付いて行ったが、この家の使用人の中でもダントツで若い。
リンはお姉様至上主義ではあるが、いつも本人の意思を尊重して、一歩引いている。
何かあった時に、群がる男性からお姉様を守れるのだろうか。
初動が遅れるだけでも、取り返しのつかない事もあると思う。そうなって欲しくない。
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不思議な事に、お姉様は偶にではなく頻繁に家に帰ってきてくれる。
私にとっては嬉しい事だが、疑問に思ってお姉様に聞いてみた。
最初、お姉様は私が気付いていた事に驚いていたが、お姉様の輝きは今や壁越しでも見えるのだ。
私が気付かない筈が無い。半分程会いに来てくれないのは不満だったが、我慢していただけだ。
お姉様は、不思議な扉の事を教えてくれた。離れた場所でも一瞬で移動できる魔具なのだそうだ。
この事は家の人以外には秘密だよと、指を一本口元に当て、片目を瞑りながら言ったお姉様は可愛かった。
私はより心配になった。そんな表情を外でやったら、男性が余計に群がるんじゃないかと。
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何度か、お姉様の光が見えるのに、お姉様自身が見えない時があった。
不思議に思い、他に誰も居ない時にお姉様に聞いてみた。
すると、お姉様は此れも内緒だよと、教えてくれた。
姿を消す魔法を使っているらしい。凄い。素直にそう思った。
実際には見えないだけで、触る事はできる。でも、普通見えないものに触ろうとは思わない。
お姉様に、どうして気付いたのかを聞かれた。けれど、咄嗟に私は誤魔化して答えなかった。
他の使用人の様に、お姉様に変な目で見られると寝込んでしまう自信があったから。
その後、お姉様はどうせならと家族と使用人に口外禁止と伝えた上で、姿を消す魔法を実演した。
皆の呆気に取られた表情には笑ってしまった。
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お姉様が女性を伴い帰ってきた。夏季休暇という長いお休みらしく、仲の良い友人を招待したそうだ。
仲の良い友人………。何だかもやもやする。少し胸が苦しい。
でも、お姉様の楽しそうな表情を見ていると和む。それに、今でも私が抱き着いても嬉しそうに頭を撫でてくれる。
少し前の事。何時までも舌足らずは良くないかなと思い、私が普通に話すと、お姉様が一瞬残念そうな表情になったのは若干後悔した。
それから、何故か見知らぬ男性を道端で助けたみたい。怪我をしていたかららしいが、男性の色はぐちゃぐちゃで嫌な予感がする。心配だ。
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嫌な予感が当たってしまい、お姉様が泣いている姿を見てしまった。
お母様は、お姉様の頑張りで助かったみたいだ。しかし、お母様の光が部分的に欠けている。大丈夫だろうか。
私は部屋の外から見ていたが、気付かれないようにそっと移動した。時間を置いて、お姉様の部屋に潜り込んだ。
普段だと、誰かが近付くと起きてしまうお姉様は、今日ばかりは起きる事も無く寝続けていた。
余程お疲れになっていたのだろう。
私は迷う事無くベッドに入り、お姉様に抱き着いて眠る事にした。
目が覚めると、お姉様に撫でられていた。幸せだ。そして安心する。
途中でリンが来てしまい、少し恥ずかしかったので部屋に戻った。でも後悔はしていない。
朝食の席、お母様は私とミールの事を忘れていた。悲しさが表情に出ていたらしく、お姉様に心配されてしまった。気を付けないといけない。
お姉様曰く、時間が経てば記憶が戻るかもしれないそうだ。
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休暇が終わり、お姉様が学院に行ってしまった。会える頻度がまた下がってしまう。寂しい。
あれから、お母様の事も観察していた。少しづつだけど、光が修復されているような気がする。
お姉様の言った通り、時間が経てば治りそうだ。安心した。
でも、お姉様は何処でそんな知識を得ているのだろう。
この家の書庫の本は大体読んだけど、そんな知識が書いてある物は無かった。
学院で知れるのかな?
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(懐かしい………)
私は、読んでいた日記を閉じ、机の引き出しに仕舞う。
最初の頃は、文字だけでなく言葉もたどたどしく、読み難いものだった。でも、こうして読み返す事で、過去の私が何を思っていたかが良くわかる。と言うよりも思い出せる。
お姉様が日記を付けていると聞いて真似たものだったが、存外良いものだと再認識した。
私は今でもお姉様が大好きだ。昔から変わらない。
お姉様は今でも綺麗で輝いている。他の人の何倍も強い光だ。
その光の正体は、最近になって魂なのだと理解した。人だけでなく、動物や植物にもある為なかなか気付かなかった。植物は枯れると光が失われるので、多分其れが死んだ状態なのだろう。
他にも、個人差以外に特徴を見つけた。
男性と女性、性別によっても色に……と言うよりも光り方に差が有った。
男性の光は疎らで、一定ではない。其れに対して女性は、纏まって一定の光を宿している。
個人差についても、予想が付き始めている。
明るい色であればあるほど、良い事をしている人が多い。逆に、暗い色であればあるほど、悪い事をしている人が多い。
そう考えると、お姉様は異常なのかも知れない。私が見た中で最も綺麗で、強い光を宿している。
私が知っているだけでも、色々と良い事をしている。
お姉様は孤児を救い、教育の場と仕事を与えている。勿論住む場所もだ。そして作物の品種改良や、新種の調味料を作り出したらしく、この領に大きく貢献していると使用人達から聞いた。
それも規模に対し、とても少ない人員で成り立たせているそうだ。その辺りに関して、私には未だ理解できる内容では無いので、詳しくはわからない。
けれど、普通じゃないのであろう事は理解できる。私は、お姉様ができていた歳で同じ事ができていない。
お姉様は、3年で家庭教師が必要無くなったと聞いたけれど、私は5年でも終わるか心配だ。
(そう言えば……)
お姉様の周りには、いつも姿の見えない光が漂っている。……いや、正確には寄り添っているのかもしれない。ほぼ毎日、お姉様の肩に必ず光があり、偶に周囲を飛び回っている光もある。同じく、足元にも偶に光がある。
何時だったか、セシリアから聞いた話だと、お姉様の周囲には精霊が居るそうだ。きっと、その精霊の光に違いないと私は思っている。
(姿が見えないのに、光が見えるって不思議ね………)
精霊の姿を見てみたい。最近は、そんな事も考えるようになってきた。
でも、魔力量が多くないと精霊は見えないと聞いた事もある。私は未だ測定した事は無いが、精霊が見えないので恐らく多くはないのだろうと思っている。
此れは私の最近の悩みの1つだったりする。
(でも、それより気になるのは………)
そして悩みのもう1つは、お姉様の魂に関してだ。
男性と女性の光り方が違う事に気付いてすぐ、お姉様の宿す光に違和感を覚えた。
先程述べたように、男性と女性には違う特徴がある。
でも、お姉様の宿す光は、両方の特徴が見られるのだ。其れも、混ざり合う様に………と言うよりも、補い合う様にして共にある。
まるで、一方の失った部分をもう一方が補う事で支え合っている様に見えた。
お姉様には、私の知らない何かがある。そう思えてならない。
私は其れを認識した時、その存在を羨み、嫉妬した。
――お姉様とはどういう関係なの?
――お姉様が元気で過ごせているのは、あなたがいるからなの?
――お姉様はあなたの存在を知っているの?
――お姉様は大丈夫なの?
――お姉様…
――お姉様……
――お姉様………
――ねえ……………
あ な た は だ あ れ ?
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