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褒美?

 千秋万歳(せんしゅうばんざい)

きわめて長い年月の事。又、長寿を祝う言葉。長生きを祝福し、何時までも健康であるようにという言葉だそうですが、個人的にも長生きには健康がセットでないと嫌ですね。ただ長生きするだけ、延命させられているだけの状態だと、生きる事が辛くなると思うからです。そう考えると、健康を維持できるように頑張らなくてはいけませんね……………





 数日掛けて、周辺を含めた山の生態調査を行った。

 結局の所、虫以外の生物は発見できず、普通の山だった一角以外は果物すら無かった。

 そしてその調査の合間で、クーに関する驚愕の事実が発覚した。

 学院に戻る前に、本格的に神殿と神像を造る予定だが、採掘した宝石類をどうしようか悩んでいた時に其れは起こった。

 ステンドグラスを神殿に設けたいと思い、自室の机に鉱山で採れたものを種類別で適当に並べ、どれを素材に利用するかを悩んでいる私の前にクーが近寄ってきた。私は構って欲しいのかと思い、抱き上げて撫でようとしたのだが、その際に、クーは机に並べていた宝石類だけを吸い込み、もきゅもきゅと口を動かした後、ペイッと吐き出した。

 吸い込んだ時点で吃驚して固まっていた私は、吐き出した物を見てさらに吃驚した。まるで磨いた後の加工した様な状態になって出てきた宝石が、一塊且つ虹色になって其処に存在していた………。

 虹色と言っても、光の加減や見る角度で色が変わるのではなく、常に変色し移り変わっているのだった。まるで、中に光源を仕込んでいる様だ。

 私が思わず「綺麗……」と呟き、其れを耳にしたクーが、褒めてと言いたげな表情で私を見てきたので、戸惑いつつも撫でながら「凄いのね」と言って褒めた。

 宝石以外にもできるのか気になった私は、クーにお願いして色々と試すと、鉱物なら私の手持ちの物全て可能であった。ただ、クーは綺麗な物が好きなようで、宝石は進んでやろうとするが、石や鉄は気が進まないみたいだった。

 そんな事もありつつ、夏季休暇の半分が過ぎた頃、神殿が完成した。

 山を刳り貫いての建設だったので、外観は見る事ができないが、内装は最低限整った。そして残るは神像だけとなった時に、父から祖父母の来訪予定日が1週後と知らされた。


「滞在日数はどのくらいなんですか?」

「聞いているのは3日だ。ユリアは、お茶に誘われた時だけ相手してくれれば良い。……後は俺が対応する」

「わかりました」

「それと、鉱山の件だが………」

「……はい」

「条件付きで、ルベール家に一任される事となった」

「……条件ですか?」

「あぁ…夏季休暇の終わる前に、王妃様がユリアとの個人的なお茶会を望んでいるそうだ。それに参加させて欲しいと言われている」


 少し苦々しい表情で父がそう言った。

 内容に対して等価とは思えない条件だったので、私が困惑していると………。


「その……招待状は後日改めて王妃様名義で送ってくるそうだ。城の一室で行われるのだが、登城の際には髪がわからないようにして欲しいとある」

「?………髪、ですか」

「そうだ」

(どういう事?……………髪がわからないように、なら私には隠すしか選択肢は無い。だったら帽子しか手段は思いつかないけれど、私の髪を隠しきる帽子なんて今迄見た事無いし)

「理由を伺っても?」

「……恐らく、教会関係だろう」


 父が言うには、以前の聖女問題は未だ片付いていないらしく、その対応にも現在進行形で追われているそうだ。この件に関しては、陛下も協力してくださっているとの事。そしてこの国の教会は、王都にある為関係者に見つからないよう注意して欲しいと言われているようだ。


「……そも、行かなければ宜しいのでは?」

「俺もそう思うが、王妃様がユリアに会いたいと事あるごとに言っているそうだ。だが立場上、簡単に外へ出られる訳もない。前に家へ来たのは無理をして理由を付けていたらしいし、今回それは使えないとの事だ。それに陛下は王妃様に甘いと言うか、弱いと聞いている………」

(なんて迷惑な……………帽子を作ってもらうにしても、間に合うかな……)


 その後も少し抵抗を(こころ)みたが、結局は妥協する事となった。



 翌日、神像を造る為神殿に訪れた。本当は学院に向かう前で良いと思っていたのだが、想定外の予定が次々とできたので早めに終わらせようと思ったからだ。

 これまでは1人で作業していたが、今はイリスとリンも居る。

 今後必要となるかわからないが、2人には調度品を頼んである。

 2人が早速作業を開始したのを横目に、私は神像の制作に入る。レイエルとは3回会っているので、イメージは容易(たやす)い。


(そう言えば………)


 私は王都の教会しか行っていないが、神像はレイエルの姿とは違っていた。と言うより、女性的に造ってあるだけのものだ。

 それが技術的な問題か姿を知らないのかはわからないが、似ても似つかない感じであった。

 亜空間に保管してあった謎の鉱石を取り出し、其れを材料にして神像を造る。この鉱石は、クーに頼んで実験した物の中でも、魔力に反応して形状変化する不思議な鉱石だ。

 見た目は、最初は石と鉄が中途半端に混ざり合ったような微妙なものだったのだが、魔力を通して加工すると均一な薄灰色になる。

 それ程時間も掛からず神像は完成した。

 私が見る角度を変えながら確認していると、イリスが声を掛けてきた。


「ユリア様、終わったんですね。……女神様ってこんな感じなんですか?」

「そうね…見た目もだけれど、背丈もほぼ一緒にしてみたから、こんな感じね」

「ほぇー………」


 レイエルは身長175cm程のやや高めだ。見た感じなので正確な身長はわからないが、今の体で見たそのままを造ったので間違いは無いだろう……。


「ふふっ、口が開きっぱなしよ」

「あっ…すみません」

「それで、終わったの?」

「ああいえ、まだです。こっちが気になりまして……」

「そう、それなら私もまだ時間掛かるから引き続きお願いね」

「はい!」


 イリスを見送り、私は教会でもそうしたように、目を閉じて神像に向かって祈る。


(これで本当に大丈夫なのか心配だなぁ………)


―――失礼ね、私が教えたのだから大丈夫に決まってるでしょう―――


 一瞬の浮遊感の後、誰かに抱きしめられる感触がした。


「……何をしているの?」

「あら、今回は想定より早かったからよ」


 目を開けると、私はレイエルに抱きしめられていた。

 質問に対して答えになっていない返答を貰い、思わずジト目になってしまう。


「さあ、お座りなさい」

「………テンション高いのね」


 いつもの椅子に座らされながらも、今迄で一番嬉しそうにしている事を疑問に思い聞いてみる。

 いつの間にか用意されていた紅茶を優雅に一口飲み、嬉しそうなまま理由を教えてくれた。


(なが)く願っていた事の内の1つが叶ったのよ」

「願い?」

「……内容は内緒よ」


 ウインクでもしそうな仕草でそう言われる。詳細までは教えてくれる気は無いようだ。


(そう言えば…前の時から完全にタメ口になってるけど、何も言われないな………)


 考えても仕方ないかと思い直す。

 気を取り直して、今回此処に来た目的を済ませる事にする。


「前に言ってた、褒美とやらは何なのか教えて欲しいのだけれど」

「そうね……なら力を抜きなさい」


 そう言いながら、私の目の前に移動するレイエル。

 一応言う通りに、倒れない程度に力を抜いてみる。すると、以前記憶を引き戻された時の様に、額に手を(かざ)される。


「んっ……」


 頭に軽い痛みが走り、思わず顔を顰めてしまう。


「……終わったわ」

「………頭痛いんだけど」

「すぐに治まるわ。大丈夫よ」

「それで、何をしたの?」

「前に、ステータスの話をしたでしょう?」

「……………」

「数値化する気は無いけど、情報としては記したわ」

「……それで?」

「貴女には、それを視られるようにしたわ」

「見られる?」

「何て言ったかしら………あぁ、そう鑑定ね」

「え?」


 レイエル曰く、パラメーターとしての数値化はとても大変だが、今現在ある情報を可視化する為の手入れは多少の手間でできるので、其れを世界に対して行ったとの事。

 今回褒美として私にくれたのは、その情報の可視化が自身でできるように脳を少し弄ったそうだ。

 それを聞いた私が、思わず遠い目をしたのは仕方が無いと思う。

 早速試そうと思ったのだが、此処ではできないらしい。


「向こうに戻ったら試すと良いわ」

「……そうするわ」

「それから、一部は貴女の知識に内容が引っ張られる事もあるわ」

「一部………?」

「前世の知識よ」

「……そういう事ね」


 私が納得していると、レイエルがジッと此方を見つめていた。


「………何?」

「いえ、何でも無いわ……次は成長してから来ると良いわ」

(それって学院卒業後?)


 貴族社会では、学院を出ると共に大人扱いされるようになる。平民はまた別で、個人で仕事を持つと一人前とされ、大人として扱われる。

 具体的に聞く為に、口を開こうとしたタイミングで景色が薄まるのを感じた。


「時間のようね……それじゃ、また―――」



 私が何かを言うより早く、現実に戻されていた。

 目の前にあるのが神像で、元の場所に居る事を確認した後、小さくため息を吐く。

 視線を感じて後ろを振り向くと、イリスとリンの2人共に見られていた。


「どうしたの?」

「……はっ、いえ、見惚れていました」

「??」

「祈っている間ずっと、薄っすらとした光を纏っていらっしゃいました」

「そうです!とても神秘的でこう……神々しいと言いますか、そんな感じでした」

(神々しい………)


 よく聞くと、祈っているポーズの間ずっと光を纏っていたらしく、まるで包まれている様子だったとの事。その光は神像と繋がっていて、何かを共有しているようにも感じたそうだ。以前は1人で祈っていたので自分ではわからなかったが、そんな不思議現象が発生していたらしい。

 やや興奮気味に話す2人を作業に戻らせ、私はレイエルから貰った鑑定を試す事にした。


(先ずはこの像かな…)


 魔力に反応して形を変える事が不思議だったので、最初はレイエルの神像を対象に使ってみた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

《名称》

 神像

《種別》

 像(魔鋼石製)

《特性・特徴》

 世界の管理者へアクセスする為の媒介となるもの。管理者の許可があった場合のみ起動する。魔鋼石により製作された為、朽ちる事が無い。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


(……魔鋼石?)


 知らない単語が出て疑問が増えたが、亜空間に未だ残っている分を取り出して視てみる事にした。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

《名称》

 魔鋼石

《種別》

 鋼(含有魔力無)

《特性・特徴》

 魔石を含んだ鋼。魔力を流し方向性を持たせる事で、全体に馴染み形を得る。その他での加工は不可。又、成形後半日程で形が定まり、朽ちなくなる。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


(今度は魔石か………)


 どの鉱石が魔石か予想がつかないので、取り敢えず後回しにする事にした。

 次は自分を視てみようと思い、持って来ていた姿見の前に立って視てみる。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

《名称》

 姿見

《種別》

 鏡(木枠)

《特性・特徴》

 全身を映して見る為の鏡。一般的な職人による量産品の為、此れと言った特徴は無い。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


(いやそっちじゃなくて……)


 思わぬ結果に内心で突っ込みつつ、鏡越しではダメなのだという事を理解した。

 今度は自身の手を見て、視る事にした。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

《名称》

 ユリア・ルベール(甲斐 優哉)

《種別》

 半神人(長命種・未覚醒)

《先天的才能》

 苦痛耐性【高】 健康体【極】 並列思考【低】

 成長促進(魔)【高】 言語理解(全)【極】

 魔法才能(全)【特】 魔力特性(癒)【特】

 重心安定【高】 空間把握【高】

《後天的才能》

 不老【極】 魔力の泉【極】 魔力視【特】

 護身術(体)【中】 近接格闘術【中】

 舞踏(洋)【高】 歌唱【高】 演奏【高】

 気配感知【極】 魔力操作【高】 祈祷【中】

 情報可視化【特】

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「なーに?……これぇ……………」


 初めて知る内容で突っ込みどころ満載だが、特に目に付く……と言うよりも見逃せない項目が1つ存在している。

 其処を注視しながら、どうにかして内容が見られないかと思っていると、表記が変わり、その項目と詳細が映し出された。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

<不老>

 成長に影響し、全盛期が長くなる。又、寿命はランクによって左右される。

<ランク【極】>

 身体が成熟する迄に必要な期間が延びる。成熟後、全盛期を保持し続け、寿命が無くなる。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「……寿命が…………無くなる?」


ブクマと評価、誤字報告ありがとうございます。


※補足

〇才能:他で言うところのスキルです。この作品はバトルものでは無いのでこういう形にしました。

〇【】表記:ランクです。低・中・高・極の順で効果が大きく、多くなります。特は特殊の略で、ランクによる変動が無いものです。

〇先天的:生まれながらに備わっているものです。この作品では、転生した人はこの世界に生まれた時、前世から引き継いだものも含まれます。

〇後天的:生まれた後に備わったものです。この作品では、本人の努力とは関係無く備わるものもあります。

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