最初の特異点
ひょんな事から初の弟子を持ち、扱いに困りながらも数日が経過した。
その間―――
「――師匠!この辺りの依頼がお勧めですよ!」
「――師匠!こんな場合はどうすれば……」
「――師匠!―――」
――当然と言うべきか、明らかに自身よりも小さな子供を師匠と呼ぶユニスは、周囲から奇異の目で見られ、私にもその流れ弾があった。
ケース1、冒険家ギルド(ホール)。
「おう、子弟ごっこならお家でやんな」
大規模討伐の事後処理も終わり、街の雰囲気が日常に戻り冒険家ギルドも落ち着いた頃。
私達は手頃な依頼を探していた。主に、ユニスの手持ちが心許無いという事実が発覚したからだ。
私が初心者な事もあり、依頼を探す時のコツ等をユニスから教わりながら1つ1つ内容を確認していると、背後から図体の大きなおっさんが声を掛けてきた。
「お前には関係無いだろう」
(おや?)
ユニスの素なのか、私に対する態度と違ってかなり強気だ。
「此処は遊び場じゃ無ぇんだよ」
「何を言っている。当然だろう」
「このっ……」
拳を握り締めてぷるぷるしている。
一応、ギルド内での暴力沙汰はマズいと思う分別はあるらしい。
「表に出ろやぁ!!」
「良いだろう」
「ちょっと、ユニス」
「ご心配無く。師匠の手は煩わせませんので」
そういう事では無い。
「其れだ其れ!どう見ても小娘の方が何で師匠なんだよ!?そういう名前なのか!あ゛あ゛ん??」
「師匠は師匠だ。名前な訳が無いだろう」
「こんの…ナメやが―――――っ………」
バタンと倒れる。
何時の間にか注目されていたようで、ギルド内がざわつき始める。
「……師匠?」
「頭に血が上り過ぎたんでしょう」
私の仕業だが、素知らぬ顔をする。
と、騒ぎを聞きつけたのか、奥からギルドマスターが出てきた。
「何を騒いで…って、おいおいおい……。殺しちゃいねぇだろうな?」
呆れた目で私を見るギルドマスター。
決め付けは良くないと思います。
「勝手に倒れたのよ」
「ですね」
「……まあ良い、程々にしとけよ。…おい!誰かこいつを治療室に運べ!!」
最後は、言いたい事を呑み込んだギルドマスターの計らいで事なきを得た。
ケース2、訓練場。
何度か一緒に依頼を受け、私が魔法を行使する姿を見たユニスが「私に魔法も御教授願えませんか?」と言い出した。理由を尋ねると、無詠唱なのと発光現象が起きない魔法の行使を自分も……という事だそうだ。
そのくらいなら……と冒険家ギルドの所有する訓練場へとやってきた。
「取り敢えず、優先したいのはどっち?」
「先ずは身体から漏れる光を抑えたいです、師匠!」
魔法を行使する際、場所が暗ければ暗い程発光現象が目立つ。不意打ち等で先手を取りたい時に苦労してきたらしい。
「えっと、なら魔力制御を鍛える事からね」
「はい!師匠!!」
「先ず―――」
「おうコラ!此処は遊び場じゃねぇんだぞ、お家でやんな!!」
「――誰?」
じゃあ早速…というタイミングで乱入者が現れた。
「此処は日々、命を掛ける冒険者が利用するとこなんだよ。小娘は帰れ!保護者もな!!」
「師匠をバカにするとは……」
「なぁにが“師匠”だ!?お前らみたいな遊び感覚の“私情”で訓練場を使われちゃあ、必死に訓練してる俺等に“支障”がでんだよ!!」
「おうモダン、何だそりゃ洒落か?」
1人増えた。
「あ゛あ゛?…んだよピーク、俺はこの世の中を舐めてる連中を注意してんだよ」
「言いたい事は解るがな。此処に入れてるってぇ事は、同じ冒険者なんだろ?」
「登録だけなら誰でもできんだろうがよ!?」
「まあ落ち着けって。……嬢ちゃんらも、利用するならふざけないこったな。コイツみたいに短気な奴も、何人かは居るんだぜ」
「私は何時でも真剣だ。寧ろ、お前達こそ他者の実力も見抜けぬようでは早死にするぞ」
「んだとっ―――――ぶへぁ!!???」
「!!?」
ユニスの言葉に激昂した冒険者は、急に吹っ飛んだ。
今回は私の仕業ではなく、スーがやった。
……うん。後から来た冒険者がモヒカンスタイルだったので、ついつい凝視してしまっていた。その所為で、スーが臨戦態勢になっている事に気付くのが遅れた。
いちゃもんを付けていた冒険者を吹き飛ばしたスーは、褒めて褒めてーといった雰囲気で私にスリスリしてくる。……とても可愛いです。
「な、何が……」
「相手を見る目を養うんだな。次また師匠に絡めば、このくらいでは済まないかもしれんぞ」
スーの仕業だと理解している筈なのに、何故か私の仕業だと取れる言い方をするユニス。
その日以降、訓練場内で私達に絡んでくる者は現れなかった。
ケース3、冒険家ギルド(解体所)。
討伐依頼を達成し、討伐証明の他の素材を売却している時だった。
「査定が終わったが、分け前はどうすんだ?」
「全て師匠に」
「え?」
「おいおい、2人で討伐したんだろ?普通なら等分か貢献度を……って、師匠?」
こいつが?という目で見られる。
目は口程に物を言うとはこの事か……。
「何だ?お前も師匠をバカにするのか?」
「おいおいおいおい…物騒な雰囲気を醸し出すなよな。つか、もって事は他にもそう思う奴が居たって事だろ?可笑しいのは俺じゃなくお前らだって絶対」
呼び方に関してだけは私もそう思うのだが、だからと言って態度に出されれば私も不快に思う訳で……。
其れはユニスも同様だったようで、眉間に皺が寄る。
「他人の関係に口を出せる程お前は偉いのか?」
「い、いや…そんな事は無ぇが……」
「なら詮索はしない事だ。私達は買い取りを頼み、お前達は素材の査定と解体を行う。其れで十分だろう」
私も人の事は言えないが、ユニスはどうでもいい相手への説明を嫌う性質のようだ。
とは言え、確かに解体所で働く人達と長く親しい付き合いをする事は無い気もする。相手が失礼であれば尚の事。
そう考えると、詳しく教える必要も無いなと納得した。
「わかったわかった。ほら、さっさと確認して持って行ってくれ」
此れ以上は勘弁だとばかりに雑な対応になる。
其れ以降、解体所の人から何かを言われる事も無くなった。
思い返してみると、ユニスが随分と好戦的だったような気がする。
誰にでもと言う訳では無いのだが、失礼な相手だと遠慮が無い。ユニス曰く「舐められたら終わりですから」との事らしい。
そして、冒険者生活にも慣れ始めてきた今日、漸くテュールからのお願いである精霊の棲みかの異変調査、その最初の場所へと向かう事となった。
ユニスにも、弟子となったその日の内に、私が旅をしている理由を説明してある。
精霊を大切にしている森人にとっても、その内容は是が非でも協力したいというものだったらしく、かなり乗り気だ。
「で、あとどのくらい?」
『半刻も掛からんさね。近くに村があるが、寄るかい?』
「いえ、このまま直接向かいましょう」
『あいよ』
「――ぁっ――ひぃ―――ぃぃぃ―――――ぅぁ―――――」
テュールの案内に従い、私はスーに乗り、ユニスは私が魔法で“引っ張って”移動している。
勿論、此れにはちゃんとした理由がある。
スーは、リンやフィーナ達に触られるのは大丈夫だが、乗せる事は無かった。ユニスに対しても同じく、私以外を乗せるのは嫌らしい。
テュールはそもそも、何かに乗った人を持ち運ぶ事は許容しても、私以外を背に乗せる気は無いそうだ。
歩いて行く選択肢もあったのだが、ユニスが「なるべく早く行きましょう!」と興奮気味に言った。もの凄いやる気に満ちていたので、ならまあ物は試しでという流れとなり、現在ユニスはこうして私が魔法で運んでいる。
ユニス本人は、何に支えられているのかも解らない状態で浮いたままの移動が怖いのだろう。速度も結構出ているので尚の事。
悲鳴っぽい声がちょいちょい洩れ出ている。
『着いたよ』
半日と掛からず、目的地に到着した。
異変があるのは、山の手前にある樹海だと聞いている。
目の前には、人の出入りが無いのか鬱蒼とした大森林が見え、遠目ながらも僅かに山が見える。結構な広さだ。
辺りを観察していると、テュールの気配を感じ取ったのか複数の精霊達が顔を覗かせる。
「わあ…こんなに沢山の精霊を見るのは初めてです!」
つい今しがた迄、疲労困憊でダウンしていたユニスが目を輝かせている。
ざっと視た所、大半は下級精霊なのだが、2匹程中級精霊が紛れている。警戒心が強いのか、奥の方で隠れて此方の様子を伺っている。
下級精霊はその殆どがテュールに群がってきた。
「流石ですね」
その様を見て、ユニスが呟いた。
「まあ、大半の精霊にとってテュールはおばあちゃんみたいなものだしね」
「おばあちゃん…ですか?」
「ええ、私の契約してる他の子が“ばばさま”って呼んでたの。明確に親と呼べる存在が居ない精霊にとって、永く生きる精霊はそういう対象になるのかもね」
勿論、ルーの事である。
「成程……ん?他の子………?」
「そう、他の子」
「え!?まだ他に契約している精霊が居るんですか!!?」
「そりゃまあ居るけれど……ああ、そのうち会う事になるでしょうね」
「え?」
「暫くは一緒に行動するんでしょう?」
「あ、はい。そのつもりです」
「なら、近いうちに一度帰るつもりだから、その時に会えると思うよ」
「帰るって…違う国なんですよね。近いんですか?」
「いいえ、遠いかな。でも私には距離関係無いから」
「あ、其れって……」
顔色を悪くするユニス。
ひょっとすると、今日と同じ運ばれ方をされると思っているのかもしれない。
まあ、転移に関して今後も黙っているのならそうなる。けれど、何となくユニスとは長い付き合いになりそうな気がする。
(まあ、もう少し様子を見てからでも良いかな)
『喋ってるとこ悪いがね、そろそろ良いかい?』
「あっ、ごめんなさい」
到着してから一歩も動いていない。少し待たせ過ぎてしまったようだ。
ユニスも恐縮してテュールに謝っている。
「案内宜しくね」
『あいよ』
空から案内してくれるテュールについて行き、私とユニスは樹海へと足を踏み入れた。
樹海に入って暫く、誰も足を踏み入れていないであろう足場の悪さに辟易する。ちょいちょい魔法で邪魔な草を刈りながら進んで行くと、開けた場所へ出た。
テュールはその場に着地し、ある一点を見つめる。恐らくは其処が例の特異点なのだろう。
「……魔力が乱れてますね」
魔力視で確認したユニスが呟く。
その場所には、石碑のようなものが1つあり、傍らには前世で良く見るタイプの墓石っぽいものが2つ、両隣で向かい合うように設置されている。
私とユニスは近付き、周辺を調べる。
ユニスは魔力の流れをメインに、私は其れっぽい物を探しながら情報を視てみる。
(石碑は只の石碑で、昔から此処にあるもの…と)
この石碑は、凡そ600年前に此処が集落だった頃に建てられた物らしい。
その集落に居た者達は、とある厄災から逃れる為200年程前に他所の土地へと移ったようだ。よくよく見ると、そこら辺に人工物の朽ちた物っぽい欠片が散らばっている。
この石碑ら以外の建造物が見当たらないのも、その厄災が関係しているのかもしれない。200年程度であれば、朽ちる事はあっても更地になる事は無い筈。
(で、墓石は……墓石じゃない)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
《名称》
魔力転送装置
《種別》
魔導具・設置型
《特性・特徴》
特定の対象から魔力を吸収し、対となる魔導具へと送る装置。
魔楼石を素材に製作されている。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
以前にも見た事のある物と形は違うが、同じ用途の物だ。
(という事は……)
魔導具を隅々まで調べてみると、裏側の一部に凹みがある。
(外せそう…あ、外れた)
軽く力を入れただけで外れ、中から以前にも見た模様―――魔法陣―――が現れた。
反対側にある魔導具も確認すると、同じ位置に同じ物がある。
「師匠、此れは……?」
「魔法陣を刻んだもので、魔導具と言う物…らしいわ」
「魔導具?……魔具とは違うんですか?」
「今よりも遥か昔の技術だそうよ。私も話でしか知らないの」
「そのような物が、何故こんな場所に?」
「さあ?……ただ、この辺には昔集落があったみたいだし、その集落に居た誰かが設置したのか、外部の人が設置したのかのどちらかじゃない?」
「へ?集落があったんですか??」
「その残骸っぽい物が散らばってるでしょう?」
私の指摘に、ユニスは周囲を見渡す。
「……本当ですね、言われる迄気付きませんでした。建物の跡も無いので、でっきり広場か偶然開けた場所があって、誰かが石碑を建てたのかと思ってました」
「まあ、よく見ないと小石や砂利にしか見えないものね」
変に白くはあるものの、気にして見なければ気付かなくても仕方が無いと思う。
私が気付いたのも偶然で、道中では先ず見なかった色合いが引っ掛かっただけなのだ。
『魔法陣……という事は、前にユリアに頼んだ場所で見た物と同じなのかい?外観が違うようだが……』
私達の会話を聞いていたテュールが疑問を呈する。
テュールの言う以前とは、多分魔力が足りなくなった精霊達に魔力を分けてあげた時の事だろう。そう言えば、ワショック男爵は順調に事業を進めているのだろうか?
何はともあれ、こんな場所でまた魔導具を見る事になるとは思わなかった。
「同じね。此れも、この地の魔力を余所へ送っているみたい」
『だが、あの時と違って魔力が吸われる感覚が無いよ』
(言われてみれば……)
あの時は、テュールが言っているように、魔力を無理矢理吸い出される感覚があった。しかし、目の前の同じ効力が有る魔導具からは、魔力を吸い出されていく感覚が無い。
「……ああ、だからテュールが気付かなかったのね」
一度経験していると、魔導具はそういう物だという先入観を持ってしまう。
恐らくテュールは、その所為で自身の知る魔導具とは別物だと思ってしまった。結果、原因に思い当たらなかった。
そういう事だろう。
「何にせよ、原因がはっきりした訳だし、魔導具を壊すなり外すなりすれば解決でしょう」
『あたしじゃあ外せなかったんだよ』
試してはみたらしい。
「じゃあ、あの時と同じく亜空間に仕舞っちゃいましょうか」
「……亜空間?」
「あ、あー……」
そう言えば、ユニスにも亜空間の事は話していない。
収納する際は全部、マジックバッグに見せかけていたんだった。
(まあ、良いか)
「あのね―――」
私はユニスに亜空間の事を説明する。
時間停止関係は省き、実質容量に制限が無い事や、マジックバッグも見た目以上の容量はあるものの、口のサイズを超える物は出し入れできない事。
面倒な時はマジックバッグに入れているように見せ、実際には亜空間に放り込んでいた事。
etc...
話を聞き終えたユニスは、初めて弟子入りを志願した時の様に目を爛々と輝かせていた。
「その魔法、私にも使えますか!?」
「あ~…っと、そうね……今は無理、かな………」
「そう…ですか……」
目に見えて落ち込むユニス。
余りの落差に、別に私は悪くも無い筈なのに罪悪感が半端無い。
「今のままじゃ、維持する魔力が足りないかな」
「魔力……なら、未だ可能性が」
目に力が宿るユニス。
やる気が出たようで何より。
聞きたい事も増えたが、先ずは目の前の問題を文字通り片付けよう。
「ユニスはちょっと離れてて」
「あ、はい」
ユニスが魔導具から離れたのを確認し、私は亜空間に2つ共収納する。
ボコッという音と共に、地面が僅かに陥没する。
事前に備えていた私は、バランスを崩す事無く退避した。
「おぉ……」
感心した声をユニスが上げる。
何度か見ている筈だが、説明を受けた後に改めて見る事で、何か思う所があったのかもしれない。
「さて、一旦帰りましょうか」
様子見の為、後日もう一度訪れるという事にして、私達は一度引き揚げた。
―――――とある国の、とある執務室。
「……何?もう一度言ってみろ」
「畏まりました。先程、魔力発生装置の7番と8番が作動停止致しました」
報告を受けた男―――国王―――は、突然の報告にしばし固まった。
頭の中で反芻し、意味を理解して漸く口を開く。
「……原因は?」
「調査の者を数名、向かわせました。しかしながら、場所が場所だけに結果が出る迄に相応の時間が掛かります」
魔力発生装置とは、ユリアが亜空間へ収納した魔導具の対となる魔導具の事である。が、この国には正確な情報が残っておらず、先人の残した手記を頼りに利用していた。その結果、現象をそのまま名称として付けているに過ぎない。
そして、その対となる魔導具はこの大陸のあちこちに設置されており、番号で管理されている。
「故障した可能性は無いのですかな?」
「有り得ません」
「しかし、その技術を全て解明できている訳でもありますまい?」
「その通りですが…実際に壊れた装置があるのです。比較しても、問題のある箇所が見受けられません」
「だが―――」
「もう良い。此処で言い争うなど、不毛な事をするな」
「「失礼致しました」」
諍いを止めた国王は、気になっていた事を訪ねる。
「其れで?以前にも作動停止した装置があったが、同じ者の仕業か?」
「いえ、其れは無いでしょう。設置されている場所が離れ過ぎております。同一人物の仕業であれば、装置の存在を知って対処した後、真直ぐに次の装置へ向かわなければ時間の計算上間に合いません」
報告している男の言う事は理に適っていた。但し、この国の…この大陸の常識が通じる相手に限る。
両方共ユリアの仕業なので、実際には同一人物なのが正解だ。
この男が言っているのは、早馬の移動速度で、途中の休憩を最小限に抑えた場合の話である。決して“空を飛んで移動する”事など考えていないし、早馬よりも“数段早い移動ができる”とは想像もしていない。
「ふむ……では、別の者の仕業か」
「若しくは、偶然ですな」
結果、有り得ないと判断し、間違った結論に至る。
「可能性としてはあるだろう。だが、可能性は可能性だ。調査の結果が出る迄は楽観視できん」
「まあ、まだ7台もあるのです。当面の影響も軽微。となれば、原因の究明をしつつ計画を修正すれば十分でしょう」
「そうですな。装置の解明は急務ですが、まだ焦る段階でも無し。先ずは、足場を強固とするのが先決かと」
「そうだな。何代にも渡る長年の計画が、漸く実行に移せる段階にまで魔力量が達したのだ。何処の誰とも判らぬ輩に邪魔される訳にはいかぬ」
「では陛下、今後も予定通りに」
「ああ、引き続き任せる。だが、修正案は早めに提出しろ。其れから、念の為他の場所には監視を就けろ」
「畏まりました」
「では、わたしもこれにて」
恭しく礼を取り、執務室から去って行く2人。
其れを見送った後、此れ迄黙っていた男が口を開く。
「陛下、監視には私の子飼いも向かわせます」
「……好きにしろ」
男はこの国の宰相であり、裏では邪魔な貴族を暗殺してきた人物だった。
国王も其れは知っているのだが、消されてきた貴族の誰もが国益を損なう人物ばかりだったので、目を瞑っている。
当然、先の発言の裏にも気付き、その上で了承した。
こうして、何やら怪しげな計画が動き始めるのであった―――――
ブクマと評価、感想ありがとうございます。