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魔王を退治しに行ったはずの幼馴染が魔王軍四天王になっていて俺をいじめてくる件

作者: 木崎 しの

 俺の名はアイン。

 18歳無職。


 現在大怪獣母親の侵略を受けている。

 くっ………援護を頼む。


「アイン?アイン?あんた仕………」

「うっせぇよ!ババァ!黙ってろよボケが!いてまうぞワレ!」


 俺はこの言葉を言ったあと直ぐに後悔することになった。


「あーらそんなこと言っていいのかしら」

「すみませんでした。調子に乗りました」


 ボッコボコにされた。

 顔中アザだらけだ。


「だがよ母さん考えてくれ」

「何を?」

「俺を本当に働かせていいのか?誰がこの家の警備をするんだ?」

「私がするわよそんなもの。だから働いてき………」

「断る。断る。断る。断る。断る。断る。断る━━━━断る」


 働きたくないでござる。

 絶対に働きたくない。


「ってか働いたら負けじゃね?笑。時代の敗北者って感じ笑。世はナマポ時代だから。ナマポ貰って、ねっとりアリ二ーしてたら一日終わってるのまじで最高なんだけど」

「アリ二ー?」


 そんな会話をしていた時だった。

 誰かがこの家のドアをどんどん叩いているようだった。


「はーい。どなたー?」

「こんばんはおばさん」


 母さんがドアを開けたらそこにいたのは俺の幼馴染のアリアだった。

 アリニーとはつまりこの子で致すことだ。何を、とは言う必要もなかろう。


「アイン元気にしてた?」

「まぁまぁだな」

「そっか。お仕事見つかった?」

「ナマポ貰うっていう仕事見つけたよ。まじ最高だわ。飯は床をドンドンしたら出てくるし天国にいるみたいだ」


 そう言うと母さんが睨んできた。


「おいBBA、睨む前に飯持ってこいよ。可愛い可愛い息子が腹空かしてるんで、まぢ笑って感じ」

「お母さん。アインを私に預けてくれませんか?」

「まぁいいの?手を焼いてたのよこの子には」


 これは………やばい流れだな。


 急いで部屋に戻ると布団に入り込んだ。

 案の定追いかけてきた2人。


「ゲホッゲホッ………」

「どうしたの?風邪でも引いたの?アイン」


 母さんとは違い俺の心配を1番にしてくれるアリア。


「あぁ。持病のマヂヤベェ病がな………俺がナマポ貰えてる理由でもあるんだが」

「大変じゃんそれ!」

「アリアちゃんそれただの嘘だから」

「そ、そうなの?!」


 俺を見てくるアリア。


「ねぇ、私と魔王退治にいかない?」

「はぁ?魔王退治?そこに最強職のゴリラがいるから連れていけばいいじゃん」

「あら、ゴリラって私のことかしら?」


 母さんのヒップドロップ。

 俺に9999のダメージ。


「ぐはっ………」

「わぁ、すごい」

「伊達にこの子の面倒見てきたわけじゃないからね。アリアちゃんアイン連れて行っていいよ」


 そう言っているが駄々をこねる。


「やだぁあぁぁぁやぁああだぁぁぁあぁあ!!!!働きたくない!!!!動きたくない!!!!一生寝てたい!!!!」

「それは無理だよアイン。私も行くから一緒に行こうよ」

「ちっ………勝手にいけよ。俺を誘うな。どうせどんくさい俺を笑うんだろ?はっ!知ってるぜお前のやり方はな」

「そんな卑屈にならなくても………」


 そう言ったアリアが立ち上がった。


「分かったよアイン。私ひとりで行ってくるね」


 そうして彼女は旅立った。1人で遠く彼方に聳える魔王城に向かって。





 アリアが旅立って数週間が経ったある日扉が叩かれた。


「大変だ!大変だ!」

「………」


 母さんが対応に向かった。

 俺はその隙に部屋に閉じこもってアリ二ーをしようとしたが無駄だった。


「アリアちゃんが………魔王軍の四天王になった………」

「な、何ですって!!!!あの、聖騎士アリアちゃんがですって!」


 それはまじなのか?


「おい!アイン。どうせいるんだろ?!早く降りてこいよ!お前の幼馴染が大変なことになってるぞ!」

「………そそそそ」


 ダメだ人と目を合わせられない。

 強く出れるのは母さんだけだ。


「アリアちゃん分かるだろ?!アリアちゃんが四天王になっちゃった」

「そそそそ………」

「ダメだこりゃ」


 男は母さんと話し始めたが俺としても気にならない訳では無い。

 なので椅子に座って天井を見ながら耳だけは会話に参加する。


「これ、アリアちゃんからの手紙だから。おい、寝太郎お前も読んどけよ」


 そう言って出ていった男。

 ちっ、仕方ねぇな。読んでやるか。


「拝啓アインへって書いてるから、はい」


 母さんが渡してきたので読むことにする。


「アリア………お前俺をそんなふうに思っていたのかよ………」


 手紙を読んだ瞬間涙を流しながら手紙を破いたその時だった。


「ごめんくださーい」

「あら、アリアちゃん」


 扉が開かれたそこにはアリアが立っていた。


「お前、何でここに………魔王は倒したのか」

「魔王倒しに行ったけど凄い良い人だったんだよね。それでアインの事話したら、『手に負えないド屑だな』って相談に乗ってくれて2人でアインを更生させようって流れになったんだよね」


 何だそれは………。


「はい、これ勇者の装備セット」


 そう言って彼女は俺に装備を預けてきた。


「クリスタルシリーズの装備だよ。この世界で1番強いの」


 突き返す。


「拒否する」

「え?なんで?!」

「俺に何をさせるつもりだ」

「魔王退治?てへっ」


 てへっではない。


「言ったろう?俺は働かない拒否する」

「ねぇ、私のパンツ盗んだのアインだよね?」

「ぎくっ………」

「もしかして気付いてないと思った?ざーんねんこの前アインの部屋に入った時私のパンツあるの見ちゃったんだよね」


 こいつ………よく見ているな。


「今からこの村の人達全員に言いふらしてもいいんだけどなぁ。アインが変態下着泥棒だったってこと」

「脅しているのか?だが俺の家は無敵要塞。誰も攻めては来れないだろう。この横にいるゴリ………」


 ゴッ!


「てぇなぁ!ババァ!なぐんじゃねぇよ!」

「夜な夜な、パンツマーン!とか声が聞こえると思ったらあんたそんなことしてたのね?」


 聞かれていたのか。

 俺のパンツマンの舞を。


 アリアのパンツを頭に被って彼女の匂いを堪能しつつ両腕を肩上にビシッと伸ばしてポーズを取るのだが、気付かれてたのか。


「あ、その………」

「どうやら味方はいないようだねアイン。まだ無敵要塞なのかなぁ?」


 万事休す………か。

 ここまでのようだ。


「ああ分かったよ!やってやるよ!どうせ後戻りはできねぇんだ、やりゃいいんだろ!途中にどんな地獄が待っていようとやってやるよ!」

「交渉成立、と」

「じゃ、魔王退治するまで帰ってくるんじゃないよ」


 ドガッ!と俺は母さんに蹴り出されて外に出た。


「てぇな、あのババァ………息子が可愛くねぇのかよ………」

「今のアインは可愛くないと思う」


 アリアにそう言われた。


「くそ………もう終わりだ………俺は終わりだ………」

「ちょっと!まだ何も始まってないのに地に膝を付けないで?!」

「煮るなり焼くなり好きにしてくれ………もうダメだ………」

「いやいや、そんなことしないから!」


 俺はこの後何時間にも及んでアリアに慰められた。



「ふっ………何だよ。結構強えじゃねぇか」


 クリスタルシリーズはほんとに強いらしくステータスを見るとかなりやばいのはすぐに分かった。


「全ステータスが9999?やべぇ………ぐふふ………」

「それなら大丈夫そうでしょ?」

「あぁ、寝ながらでも戦えるなこれなら………っていうかいつまで付いてくるんだ?」

「だって引率いないとアイン魔王城まで行けなく無い?」

「む、それはそうだが………でもお前四天王じゃないの?それなら案内するのやばくね?」

「あー、細かく話すとね。魔王様は今アインの更生に力入れてるんだよ」

「どうして?」


 俺の更生する前にやることあんだろ?

 暇だな魔王。


「魔王の楽しみなんだってー。ダメダメでド屑なアインをどうやったら更生させて一流の勇者に育てられるかって遊びしてるみたい」

「俺おもちゃじゃねぇかよ!」

「たしかに、じゃあ見返そうよ!何があっても一流の勇者にならないって!」

「そうだな!俺が奴を出し抜くにはそれしかない!なら徹底的にダメな人間にならないとな!」


 そう言うとアリアがふっふっふと笑いだした。


「どうした?」

「アインにまだ私からのプレゼントがあるんだよね」

「な、何だって?!」

「じゃーん」


 そう言って何かを取り出した彼女。


「スキル持ってないよね?アインって」

「ないぞ!」

「そんなアインのためにスキル石ー」

「それってあれだよな!たしかあれだ。あのーあれだ。スキル貰える奴だろ?!」

「そうだよー。アインはどういう能力が欲しいの?」


 そう聞かれたが決まっている。


「そんなの決まっている。俺は女の子をテイムするスキルが欲しいぞ!」

「えーそんなスキルないよー」


 アリアがそう言った瞬間だった。

 石が光を放つ。


「どわっ!」


 凄まじい衝撃で吹き飛ばされた俺だが次の瞬間。


「いったたー」


 尻もちを付いているアリアの上にウィンドウが現れているのに気付いた。


━━━━━━━━

【名前】アリア

【種族】人間

【レベル】89

━━━━━━━━


 これは………ニヤリ。


「どうしたの?ニヤニヤして」

「俺はどうやら凄まじい能力を手に入れてしまったらしい。ふははははお前をテイムしてくれるぞアリア」

「え、えぇぇぇ?!!!!」

「ふははははは!!!俺の奴隷になるがいい!!!」


 早速手に入れたスキルを使った。

 しかし


【この生き物は初めから貴方に懐いています。テイム出来ません】


 とウィンドウが表示された。


「はぁ?!!!!!!これ壊れてるだろ!おい!」

「よく分からないけどほんとにテイム出来るようになったの?」

「ちっ!」


 舌打ちしているとドラゴンが降りてきた。


「ド、ドラゴン?!ひぃぃいぃい!!!!」


 逃げ出そうとしたが。


「クゥーン」


 背後から犬の鳴き声のようなものが聞こえて振り返ったら。


【ドラゴンをテイムしました。名前を決めてください】


 とウィンドウが現れていた。

 まさか………あれをテイムしてしまったのか………俺は。



 その後俺は色んなものをテイムしていった。

 その結果


「アインちゃーんご飯の時間でちゅよー」

「わーい」


 俺は見事なダメ人間になっていた。

 見渡す限り美少女と強そうなモンスターに囲まれて俺は優雅に生活を送っていたのだが。


「アイン様!」

「何だ騒々しい」

「魔王が攻めてきました」

「またか。帰れと言っておけ」

「そ、それが………「退け」


 俺に報告してくれた使用人を押しのけて俺の部屋に入ってくる人影。


「女魔王また来たのか?随分暇なんだな」

「きぃぃいい!!!!馬鹿にするな!!!!」

「うるさい。帰れ。例え女でも俺の身の回りの世話をしないやつは必要ないぞ?帰れよ?」

「誰がするか!それより私と勝負しろ!」

「えー、やだよーめんどくせぇ」

「世界がどうなってもいいのか?!」


 あくびが出てきた。


「どうでも良すぎて笑える。滅ぼすならお好きにどうぞw」

「………この男邪悪すぎる………」

「世界がどうなってもいいのかとか言っちゃうようなあんたには勝てねぇぜ?w」

「きぃぃいい!!!ムカツクゥゥゥ!!!!!」

「さぁ、帰った帰った。俺はこれからポチの散歩に行かないと行けないしあぁ、忙し忙し」

「犬みたいな名前をドラゴンに付けるな!」


 本当にうるさいなこいつ。

 窓を開けると外に向かって叫ぶ。


「おーいポチ。このうるさいのどっかやってくれ」

「ガウ」


 返事をしたポチは王室に手を突っ込むと魔王を掴んだ。


「は、離せ!」

「もう来るなよ?」

「う、うるさい!また来てやるからな!お前がここを出るまで来てやるからな!」


 ポチに投げ飛ばされながらもそんなことを口にしている。

 健気なものだ。


「でもそろそろ魔王のとこ行かなくていいの?」

「俺に働けと言うのか!アリア!」

「でも世界がヤバいって言ってるし」

「フッ、安心しろ世界が7回くらい壊れてもこの楽園は問題ない」

「それはすごいけどでも魔王ずっと待ってるよ?」

「うわぁぁあぁん!!!アリアが働け働けって俺を虐めるよぉぉ!!!」

「アリア!おやめなさいな。私のアインをこれ以上虐めないで」

「虐めてないよ」

「いや、これはいじめです。次の会議の議題にします」


 ほれ見ろ。今の俺に敵うやつ等いないのだ。


「まぁ、許してやってよアリアも悪気があった訳じゃないしな。それより飯を作れ早く」

「かしこまりました」


 返事を聞いて俺は庭園に目をやった。

 人々が俺の代わりに働き、俺のためだけに働く街。

 そして


「アイン様ばんざーい!!!!」

「アイン様!今日も平和をありがとうございます!」


 軽く手を振って答える。

 いやーこの国は本当に最高だな。


 初めは小さな村だったのにここまで大きくなるなんて。

 これも何もかも全てアリアのおかげだ。


 俺は初めて天に感謝した。


 だがこの時の俺は知らなかった。

 この俺を勇者にさせようとする魔王と俺の戦いが長期間続くことを。





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[一言] めちゃくちゃ続きが知りてぇ
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