芽生えた自信
それから中学三年の夏、陸上部を引退するまで、僕は徹底的に部活に打ち込んだ。まるですべてを忘れるように、懸命にグラウンドの土を蹴って、最後の市内大会で輝くために、若さからほとばしる輝かしい汗を流した。
結果、僕は市内大会の1500m走でベストエイトに入る健闘をした。もちろん県大会ではまったく歯が立たなかったけど、僕にしては上出来で、後輩達に少しは良い姿を見せることができた。清々しい引退だった。
中学を卒業する頃には、泰葉への思いは淡くなっていた。受験があったせいで慌ただしかったというのもあるし、すれ違うこともほとんどなかったからだ。彼女のことなんて、頭の片隅に追いやられているような感じだった。
僕は先生からの覚えはよろしくて、成績だけはまずまずのものを得ていたから、高校への進学には問題がなかった。地域では中の上に位置するぐらいの学力の高校に合格できたときは両親も喜んでくれた。
「耕太、合格おめでとう!」
父から褒められることは少なかったから、僕もうれしかった。これまで平凡に、しかし地道にコツコツと頑張ってきた成果が現れたのだ。
――そうだ、平凡でも、努力すれば素敵な人生が歩めるんだ!
僕は心の中で芽生えた自信を、これからの高校生活で少しずつ大切に育てていこうと決意した。