6.ダンジョンマスター
俺がゴブリンの村に世話になってから4年の歳月が経ち、俺は5歳となっていた。
普通なら王国で魔法使いの見極めの儀が行われる年齢だ。
だが、俺はアリスのおかげで、この年で既に上級魔法まで使えるようになっていた。
毎日、魔力たっぷりの飯を食っているお蔭もあり、体内魔力量も結構な数値になっているのではないだろうか。
これまでに、アリスと一緒にすべての階層を踏破し、全階層のフロアボスを倒してきた。
最下層でダンジョンコアも見つけた。今は俺がこのダンジョンのマスターになっている。
俺のラノベ知識では、ダンジョンコアを破壊してしまうとダンジョンの機能が停止する恐れがあったので、ゴブリン達の生活を守るためにダンジョンコアの部屋には、他人が入れないように結界を張り、念のために俺たちだけが入れるような仕掛けを施しておいた。
さらに、ゴブリン村にも結界を張り、入口を偽装するなど、通常手段では村に入れないようにした。
閉じているダンジョンで、なんで結界を張る必要があるかって?
それは、このダンジョンでやる事は全てやってしまったので、俺はここを出て行く事にしたのだ。
勇者召喚の影響で発生したと言われているダンジョンだが、実際には発生したのではない。
ダンジョンには、アリスの住んでいたゴブリン村などの先住民が存在したのだ。
もともと存在したのか?俺のように異世界から来たのか分からないが……。
もし、また先住民と人間との接触があった場合、ゴブリン村と王国騎士団のような悲劇がまた起こらないとも限らないのだ。
ここ以外にダンジョンが存在するのかを確認するには、ここを出て情報を集める必要があった。
「行こうか」
「ほんっとに、大丈夫なんでしょうね?」
「まぁ……何とかなるだろ」
俺は、同行者としてアリスを連れて出る事にした。
ゴブリン族でもアリスは容姿が良いこともあり、亜人の存在するこの世界では違和感も無いだろうし、原住民がいるという説明には彼女の存在が必要だと思ったからだ。
ただ、アリスが19歳に対して、俺が5歳なので親子にしか見えないのが問題と言えば問題かもしれない。
ゴブリンと言えば、洗濯していない小汚い服を着ていて不潔というイメージがあるがゴブリン村の人たちはちゃんと洗濯もするし、綺麗な服を着ている。
特にアリスは綺麗好きで、いい匂いの香水をつけているのでゴブリンと気づかない人も多いかもしれない。
オレンジ色のポニーテールの脇から見えているゴブリンの特徴である小さい角と褐色の肌が無ければ全く人間と変わらないので、角を隠すなどの対策をしておけば大丈夫だろう。
4年前に閉ざされたダンジョンの入口の大岩を土魔法で退けると外の日差しが目に染みる。
「ちょっと明るすぎじゃない?」
「すぐに目が慣れるから、少し我慢しとけよ」
外に出たら、念のために同じようにダンジョンに蓋をしておく事も忘れない。
「あたしは、外の事は分からないし、アンタに任せるから、ちゃんと案内しなさいよね!」
「大丈夫、大丈夫、こっちじゃ俺は勇者ってことになってるし」
4年前にダンジョンに捨てられた恨みはあるが、ダンジョンを攻略した今、恐れる事など何もない。
既に、民衆のダンジョンの魔物に対する不安は取り去られているはずだから。
だめなら、俺があのダンジョンを攻略した事を公開すれば良い。
このダンジョンは街からほど近い位置にあるので、すぐに街に着くはずだ。
そして俺たちは、街の方角へと続く獣道を辿るように進んだ。
◆◇◆◇◆◇
4年ぶりの王国の街は変わりなく、その全貌を誇示していた。
世界最大の王都と呼ばれる事もあり、その規模はとにかく大きいらしい。
俺はそもそも、この王都以外を知らないので、比べようも無いのだが。
王都はその規模にも関わらず、すべてを壁に囲まれている。
過去に起きた戦争の名残りで、外壁で街を守っているのだとか聞いた事がある。
その外壁には大きな門と小さな門があり、大きな門は特別な時しか開かないので、小さい門へと足を向ける。
多分このままだと街にすら入れないので、立っている門番に伝言を頼むことにした。
「おい!門番!勇者クラウドが帰ってきたと王様に伝えてくれ!」
「なんだと小僧、寝言は寝て言えや、勇者様は王宮におられるお方だぜ?」
「その勇者様を、お前は最近見た事があるのか?」
「そんあの有るに決まって……いや……ん?」
「ある訳ないよな?俺が勇者だからな」
「あーめんどくせーガキだ!帰れ帰れ!」
「門番、怒らせてどーすんのよ!?」
「仕方ない、ここはいったん引いて明日また来ることにしようか」
アリスは心配しているようだが、これでいい。
一晩、野宿する事になったが、次の日には門番の配置換えで違う人が立っていた。
「勇者の帰還だぞ!門を開けよ!」
また同じことを繰り返す、と昨日の門番とは返事が変わっていた。
「勇者様のご帰還、お待ち申し上げておりました」
「まぁ……あの洞窟を討伐するのに4年もかかってしまったがな」
「それは僥倖、王様もさぞやお喜びなされるでしょう」
「クラウドって有名人?へぇ……すごいじゃん」
「あぁ……こちらは俺の仲間のアリスだ。魔物討伐に人力してくれた恩人である。丁重に持て成すように頼むぞ」
「承知いたしました。アリス殿もどうぞご一緒にいらしてください」
「仕方がないわね……」
俺たちは、執事のような門番に連れられて王城へと向かう事になった。