4.ダンジョン飯
俺を拾ってくれたゴブリンの名前はサリナ、無くした子供の名前はヒーロという名前だったらしい。
ゴブリン語は良く分からないが、長老がたまに通訳してくれるので、なんとか意思の疎通が図れるようになってきた。
慣れるとゴブリンの顔も悪くない。
知らないから、理解できないから異形というだけの話だ。
ゴブリンの食事だが、基本的にダンジョンの中での生活なので、ダンジョン内で採れる味覚のみとなる。
ダンジョンの中には、スライムの他にも魔物が存在し、その魔物の肉やダンジョン内で栽培した野菜などを食べている。
俺のゲーム知識では、ゴブリンは雑魚キャラで、普通の人間と比べたら弱いと思われがちだが、ここのゴブリン達は、統率もとれていて人間に勝るとも劣らないのでは無いだろうか?
――もしくは魔物ではなく亜人種に近いのかもしれないが。
現にどこから捕ってきたのか、オーク肉なども食事に出るのだ。
ゴブリン強すぎだろ?
オーク肉は豚肉に似ていて旨い。
さらにダンジョンの味に欠かせないのが、拾ってきたあの魔石のようなものだ。
あのスライムから抽出した魔石を干してスライスし、鰹節のようにしたもので出汁をとる。
これが最高の味付けになり、体内魔力の活性を促すのだそうだ。
いわゆる魔力が溶け込んだスープのようなものだ。
ダンジョンならではの珍味という訳だな。
魔物が捕れない地上では絶対に食べられない物だろう。
「うま!肉うま!この作り方教えてよ母さん」
「キキ(いいわよ)」
俺は、サリナの事を母さんと呼ぶようにしていた。
亡くなったヒーロの代わりじゃないが、俺に出来る事はしてやりたいと思ったからだ。
サリナが言ってることもなんとなくだが、理解できるようになった
「キキキキキキッキキキキキ(今日はとびっきり良い食材が手に入ったから、腕によりをかけて作ったのよ)」
「ミノキキキ、キキドラキキキ(ミノタウロスの腕肉に、隠し味に竜の欠片を使ってみたの)」
「牛肉に竜のスープって奮発しすぎでしょ!?」
高そうな食材の名前が出たのでちょっと心配になる。
「キキ、キキキ(大丈夫よ、全部貰い物だから)」
その晩、俺は腹と胸の激痛に悩まされることになった。
「キキキ?キキキキキキキキ(大丈夫?あぁどうしましょう私の料理が合わなかったのかしら)」
「ううぅ……痛い イタタタタタタタ痛!!!!!」
「キキ……キキ!キキキキィ!!!(あぁ……だれか!誰か来てぇ!!!)」
◇◆◇◆◇◆◇
「これは、魔力あたりじゃな」
ゴブリンの長老が、俺の症状を見てそう言った。
ゴブリンは大丈夫だが、人間は魔力の高いものを食べると魔力あたりを起こし、酷いときには死に至ることもあるという。
「キ……キキキ……キキキキキキキキ(うぅ……クラウドごめんなさい……私のせいだわ、私があんな料理食べさせちゃったから)」
「……母さんのせいじゃないよ……母さんは何も知らなかったんだ。母さんは悪くない……」
そう……俺の体が魔力に耐えられなかっただけだ。
元々俺には魔力がない。
魔法使いの適正が無い俺が、そもそも過剰な魔力に耐えられる訳も無かった。
魔力の受け皿すら無いのだから。
一晩中、俺は生死の境を彷徨った。
激痛にうなされ、何度も何度も血反吐を吐いた。
何度、吐こうとも一度吸収した魔力を吐く事なんて出来やしない。
朝になるころには、俺の精根は尽き果て、目の色は赤く、髪の色も真っ白に変わっていた。