白衣の謎
朝食を終えてから、部屋に置いてあるカバンを手に取り、都さんと共に登校する。
といっても、寮から学校までは1分ほどで着く距離にある。
正門をくぐると、遠くの方に瀧川由美先生がいるのが見えた。
そして、アタシを見つけた途端、ニヤニヤとした笑みで手招きをし始めた。
う、噂をすれば影がさすとはまさにこのこと……
「ごめんなさい、都さん。由美先生に手招きで呼ばれてるから先に行ってて……」
「え、あ、うん。わかった」
そう言って、都さんとその場で別れ、アタシは足早に先生の元へと向かう。
「なんですか、朝からニヤニヤして……」
「いやいや、別に何もないんだが。とりあえず話があるからついてきなさい」
由美先生が踵を返して歩き始めたので、アタシも嫌ではあったが、その後についていった。
由美先生は相変わらず、何故か白衣を身にまとっていて両手をポケットに突っ込んでいる。
白衣には所々、血痕のようなものが飛び散っており、一体、何故そんなものが付いているのかと密かに生徒の間で様々な憶測が飛び交っている。アタシもそれについて尋ねたことがあったが「子供にはわからんさ」とか言われて誤魔化された。
ちなみに由美先生は母の妹、つまり、アタシから見れば叔母にあたる。齢的には40間近だが、未だに20代に間違われるくらいの美人である。にも、かかわらず、未だに未婚であるので、きっと性格がアレだからだと思うが、そんなこと言おうものなら、確実にバッドエンドが見えている。
アタシの家族とは仲が良く、小さい頃からよく遊んでくれていたのだが、その度に女の子物の服を着させられ、女みたいだとからかわれていたが、まさかここでこんな形で再会するなんて思っても見なかった。
聞けば、元々教員免許を持っていた上に、信頼できる人間に学校を任せたいとのことで、母に理事長になってほしいと頼まれたそうで、アタシのことも全て知っているとのこと。最もアタシがここに来ることは、想定外のことでこの姿を見られた時は、そりゃあ腹を抱えて笑われたものだ。
以来、何かと協力はしてくれるが、その度にいじられてしまい、アタシとしてはあまり関わり合いたくない人だ。