バカと勉強と
半年前までオレはごく普通の青年だった。
両親は学校を経営している事業家みたいなもので、学校以外にもレストランやホテルなんかも運営していた。側から見れば金持ちだと思うだろう。実際にそうだった。お金で苦労したことはないし、ほしいものはなんでもあったと思う。だからか、オレは勉強なんてしなかった。というより嫌いだった。
親もうるさく言わないし、かなり好き勝手にやってた。勉強ができなくてもお金があれば人はついてくる。今思えば小さい頃から、かなり、嫌で、ませていた子供だっただろう。
そんなオレが初めて挫折したのは15歳の高校受験の時だった。
滑り止めですら落ちたのだ。物の見事に。
その瞬間、友達だと思っていた周りの人間は全て離れていき、オレは一瞬で1人になった。所詮はお金で築いていたものであり、崩壊するのはあっけない程、一瞬だった。
親は海外の事業拡大とかで長い間、日本にはいなかった。それに放任に近かったので、連絡もしばらく取っていなかった。
だから、オレは高校に進学できなかったことは黙っておいて、なんとかやり過ごそうと考えていた。
だが、5ヶ月ほど経ったある日、突然帰国してきたのだ。
そして荒れっぱなしの今の家の状況を見て、両親はすぐに察したようで何も言わず、ある紙切れをオレに渡してきた。
それが今、オレが通っている学校への編入届けだった。