憤怒の熊 2
すみません、充電出来なくて書けませんでした……お待たせしてすみません
「あっ……」
―グシャァァ!―
視界が一瞬真っ暗になったが、それだけだった。
あ、スキルの【不死】ってやつかな?血しぶきは私を中心に放射状に広がっており、憤怒の熊は満身創痍のまま右拳を振り切った私を睨んでいる。
私が死なない事に苛立ったのか、体の状態など関係ない!とばかりに激しい猛攻を仕掛けてくる。
今度は油断しないよう相手の動きや気配を読み、着実に反撃していく。
赤いオーラを纏った憤怒の熊は、やはり重症を負った事で大きくパワーアップしていた。
右腕だけでなく、全身を使った技なども多くなり、さっきまでの単純な攻撃とは比べ物にならないほどに強い、今までどうやって生きてきたんだろう?こんなのが暴れたら世界もただじゃ済まない、私がいるからなった訳ではない……と信じたいが、あの創造神様の事だ、やっていてもおかしくない。
しかもそこかしこの木を引っこ抜き、武器にするという無茶苦茶なこともするようになった。
だがその長い木ゆえにスピードが殺されている。
今は振り回すことしかしていないので、ジャンプで躱して頭を思いっきりぶっ叩く。
「まだ倒れないの!?」
防御が元々高いのか、赤いオーラの力なのか……どちらにしろ、倒さなければ街が、皆んなが危ない。
使える強化系スキルを全て使い、右脚に金剛化を集中させる。
大木の根元を持っていた憤怒の熊は、中心部分へ持ち替え、槍を使うような構えを取った。
すると大木の上部分を地面に向かって薙ぎ、土煙を上げた。
目眩しか!でも集中すればさっきより早く見つけられるはず!
後ろから気配を感じ、私に向かって突き出された大木を躱し、すれ違い様に強化された右脚で背中を思いっきり蹴り、崖へとぶつける。
「グッ……ルァァァァ……」
何とか手を付き意識を保っていた憤怒の熊は飛び掛かって来た。
その途中で事切れたのだろう、地面へ衝突した後は動かなくなった。
さっきの攻撃、反応できなかった……【不死】のおかげで助かったのだとしてもまだまだ実力は低いってことだ、殺気に気づかなかったら訳も分からず死んで居ただろう。
もっと強くならなければ……今回は一人だったからいいが、ナナやスラさんを連れて来ていたらどうなっていたことか……。
ふう、ちょっと疲れたな……さっさと帰って寛ごう。
「ルナちゃんお帰り、どうだった?」
訪ねてきたのはミスティさんだ、こっちを見てギョッとしている。
「すごく強くて、一回殺されました」
「……そう、お風呂沸いてるから入ってきたら?」
コクっと頷き、風呂場へ向かう。
「はぁぁぁぁぁ……」
こんなに長い溜息、何年振りだろうか……もっと強く、とは一体どうすればいいのか……わからない事だらけだが、学んだ事はある。
自分の能力が幾ら上がっても、それ相応の技術や、自分の力を引き出す方法がわからなければそれはただ強いだけの抜け殻だ、そんなものは強いとは言えない、これからは自分の技術を鍛えよう。
少しのぼせたようで、ちょっとふらふらしながら服を着る。
「ルナちゃん、悩みはもう解決した?」
「何でわかるんですか?」
ミスティさんって人のこと良く見てるんだな、と関心しながら聞いてみる。
「さっきまでと違って引き締まった顔してる」
ふざけた返答ではなく、ちゃんとした答えだった。
「ミスティさん、ありがとう」
「ズッキュン」
……さっきの訂正、でもお陰で自分のことについて少し分かったのは事実だ、そこは感謝しよう。
むぅ~……どうすれば戦闘技術は伸びるのか……。
「ピュイピュイ」
え?とにかく戦うか、スキルを伸ばすか?……やっぱり戦うしかないのか、っていうかさっきの声に出てたんだね。
折角だしドラゴンの群れにでも突っ込もうとスラさんに提案したら全力で一人で行けって否定された。
ちぇっ、ドラゴン如きに大袈裟な……でも強い個体もいるもんね。
いざとなったら転移もできるけど、それは避けたい。
恨み持たれるかもしれないじゃん?それで都市とか攻撃されたらたまったもんじゃない……。
……別にドラゴンにこだわらなくてもいっか。
「ねえスラさん、今の私に丁度いいダンジョンとかないかな?」
「ピュピュ、ピュー」
この前の幽魂冥界の隣にある死霊迷宮っていうダンジョンがいいの?
「スラさんも行く?」
「……ピュゥ」
仕方ないから行く?
「ありがとう!」
転移を使い幽魂冥界の入り口付近から歩く。
スラさんはポヨンポヨンと跳ねながら道案内をしてくれている。
ここ腐食した木とかキノコとか色々生えてるし地面がデコボコしてるから歩きにくいんだよね……。
しかも臭い、多分……というか確定で腐食した植物とかアンデットのせいだよね。
いかにも迷宮って感じのダンジョンだ、普通の洞窟に普通じゃない周りの植物、中の魔物も普通じゃない……あれ?想像してたものと違う……。
中を覗くと、ただの魔物ではなく武具を身に付け通常よりも濃い憎悪を瞳に宿していた。
ゾンビ達は私を見つけた途端叫び、突っ込んで来た。
武具を身につけているので、当然堅いだろうと思い、首部分を回し蹴りで飛ばす。
ゾンビなので当然それでは止まらない。
「……これ倒す方法なくない?」
「ピュイピュイ」
え?聖属性か光属性の魔法や、この属性を付与した攻撃、ミスリルの武器でも倒せる?
ミスリルの武器……あ、しまったままのチェーンソードげあるじゃん!
アイテムボックスからチェーンソードを取り出し、魔力を流す。
ギュイィィィィィィン!
という甲高い音を立てながら回る刃をゾンビに振り下ろすと、前方に肉片や血しぶきを撒き散らしながら真っ二つになり、動かなくなった。
スラさん曰く、ミスリルは破邪の効果を持っているそうだ。
スラさんには敵わないね。
周囲の敵を一掃し終わった私は思った。
「こんなの相手しても倒せないなら意味なくない?」
「ビュゥ……」
てっきり聖属性か光属性持ってると思った、ですと?……私だって全能じゃないんだから持ってない属性もあるよ……。
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