返済
早速、さっきのお茶屋さん移動する。
「お婆さん。また来たよ」
さっきの鬼婆さんが、嬉しそうに出迎えてくれた。
「さっきは無銭飲食しちゃってごめんね。今ポイント稼いできたから、さっきのお代払います」
「おーそうかい。そうかい。律儀な娘さんじゃの」
「さっきのおダンゴいくらですか?」
お爺さん奮発したって言ってたし、たぶん足りると思うけど・・・
「おダンゴは1ポイントですじゃ」
やったー意外と安いのね。
って言うかポイントの価値が高いのかな?
皿洗い1万枚で、おダンゴって言ってたし・・・
さっそく鬼婆さんに、銅のメダルを1枚手渡した。
ってことは、2ポイント余ってるのよね・・・・・・
さっきダンゴを食べたばかりだし、お腹と相談する・・・・・・・・・・・・・・・事も無くお菓子を食べることにした。
「お婆さん。おダンゴのほかには何があるの?」
鬼婆さんは申し訳無さそうに答える。
「小さな村じゃけのう。後はティラミスくらいしか無いんじゃ」
ティ?
ティ―――――――ラ――――――――ミ―――――――ス――――――――
食べたい、食べたい、食べたい、食べたい。
今ティラミスって、言ったよね?
プロミスじゃないよね?
『ご賞味は計画的に』なんて言ってられないわ――――――
「ティラミスいくらですか?」
「3ポイントですじゃ」
ぐっ・・・・・・・・足らない。
別にお腹空いてるわけじゃないし、おダンゴなら2つ食べれるんだけど・・・
けどティラスミ食べたい、だって大好物なんだもん。
「お婆さん、私絶対食べに来るから、ティラミス置いておいてね。食べちゃ駄目よ」
私はきびすを返すと、さっきの老人集落に向かっていった。
待ってろよー
ティラミス―――――――――
その後、私は仕事を探し、鬼婆さんの家で炊事、洗濯、掃除をさせてもらった。
ふう。何年ぶりだろう?家事なんてしたの。
学生の頃は、結構手伝ったんだけど、働くようになってからは全然してなかったな。
炊事は全てお母さんに任してた・・・・・・・・・・・・・・・
元気かな?お母さん。
私は元気よお母さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
死んじゃってるけど。
鬼婆さんから、銅メダル1枚を受け取ると、早速お茶屋に向かう。
そのころにはいい具合に、お腹も減ってきた。
「お婆さん。私のティラミスは無事だった!?怪我は!?病気は!?知らない人に連れて行かれなかった!?」
まるで誘拐でも、されたかのような扱いである。
鬼婆さんは店の中から、ティラミスと紅茶を出してくれた。
「紅茶はサービスですじゃ」
「ありがとう。お婆さん」
早速、ティラミスと紅茶を頂いた。
ティラミス、ティラミス嬉しいな
おてても綺麗になりました
私一人でご挨拶
いただきます
ついつい、歌ってしまうわたくし。
「おいしー。なんて美味しいティラミスなのー。私、幸せー」
子供のようにはしゃぐ私を、半ばあきれ顔で見る鬼婆さん。
「あんれま。こんなに美味しそうに、食べるお客さんは初めてじゃ」
だって美味しいんだもん。
口に入れると、クリーミーなチーズケーキが、舌を優しくなでるように絡みつくと思いきや、濃厚なココアパウダーが絶妙のアクセントとなり、甘みが更に広がるの。
更にその後噛みしめると、エスプレッソの風味が効いたピスケットが、食感までもを楽しませてくれて、私の口の中を幸せの国へと変えてくれるみたい・・・・・
なんて幸せなの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まるで天国に居るみたい・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・ここは地獄だけどねっ!
ティラミスを満喫した私は、本格的に旅を進めるととした。
「お婆さん、美味しかったわ。生まれ変わっても忘れないからね」
鬼婆さんに別れを告げると、先を目指し始めた。
ここの鬼はいい人ばっかりだし、食べ物も美味しかったけど、長居をするとずっとここに、居ついちゃうような気がするのよね。
それに、ちょっとずつポイント稼ぐより、もっとでっかく稼いでやるんだから。
〜18年前〜
「明日から明日香も幼稚園だな」
今日は日曜日、家族3人で幼稚園の準備の為に、買い物に行って来たところであった。
沙代子は今買ってきた、ハンカチやティッシュを鞄に詰めている。
「私ね、幼稚園に行ったらいっぱいお友達作るんだ」
明日香は体験入園の時に、幼稚園を気に入ってしまい大はしゃぎしている。
父親の清二はおもむろに、赤いビニールの買い物袋を手に取ると、空気を入れて真ん中くらいの場所を指で押さえた。
「ほーら、金魚さんだよー」
ビニールの袋は、空気の入った部分が頭で、持ち手と結ぶ部分がヒラヒラと尾っぽのように見える。
その様子を見ていた明日香は、紙とハサミとセロハンテープを取り出し、何かを作り始めた。
初めに、丸く小さく紙を切り取ると、金魚の頭に貼り付けた。
「おめめ出来た!」
次に半円形に切り取り、目の下に貼り付ける。
「お口!」
「明日香ちゃんすごいなー」
幼稚園の準備をしながら、沙代子がほめる。
「なかなか器用だぞ、明日香」
釣られて、清二も賞賛の声をあげた。
気を良くした明日香は、なにか長いものをハサミで切っている。
さすがに長いものを切るのは、簡単ではなく、苦労しているようだ。
出来上がると、細長い線状の紙が出来あがった。
早速、母親が聞いてみる。
「明日香ちゃん何を作ったのかな?」
明日香はその紙を手に取って
「うんこー」
と叫んで金魚のお尻の部分に、貼り付けた。
「あはは。まあ明日香ちゃん面白いね」
両親の笑い声に、得意顔になる明日香であった。