表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

茶屋

これさえあれば、ポイントは奪われずに済みそうね。

でも何で逃げたんだろう?

私は何も感じないけど・・・

ペンダントを手にとって確認するが、特に変わったところは見当たらない。

黄門様の印籠みたいなものかな・・・?

『王』の文字が彫ってあるし、閻魔家ゆかりの物なのかもしれない。


ふと前を見ると、遠くのほうに、お茶屋らしき建物が見える。

ラッキ―――――

そういえば死んでから、飴の他に何も食べて無かったんだ。

建物に近づいてみるとやっぱりお茶屋みたいで、わらぶき屋根の家に、赤くて広いイスが外に置いてある。

うわーレトロって感じ。

お茶屋といえばやっぱりダンゴよね。

甘いものを想像して浮かれてしまうが・・・・

肝心なことを忘れてた。

私、お金持ってない・・・

お客の姿を見つけ、お茶屋の中から出てきた店員は・・・・・・・・・・・げっ鬼婆だ。

店から頬が痩けて目の釣り上がった、鬼のお婆さんが出現した。

頭の上にはしっかり角が生えている。

えーと、どうすればいいんだろう。

ロールプレイングゲームなら、迷わず「たたかう」よね?

初対面の鬼に、意外と失礼なことを考える明日香であった。


「どうぞいらっしゃいませ。お越しやす」

外見とは裏腹に愛想の中に敬いを込めた、感じの良い挨拶が飛んできた。

けっこう良さそうな雰囲気のお婆さんじゃん。

感じの良い挨拶に、つい本音をこぼしてしまう。

「あっあのー私、お腹が空いておダンゴを食べたいのだけど・・・・・・・・・・お金を持ってなくて・・・・・・・・・」

その言葉を聞いて首をかしげる鬼婆さん。

「お金ってなんでしょうかね?」

地獄の沙汰も金次第って言うものだから、てっきりお金が使えるものだと思ってた。

「私、ここに来たばっかりでよく知らないんですけど、物を買うときは何と交換するのでしょうか?」

謎が解けて納得したような、顔をする鬼婆さん。

「そおかえ、そおかえ、あんた新人さんかえ。遠路はるばるご苦労様じゃったのう」

ホント閻魔さんもそうだけど、見た目で判断できないよね。

まさか地獄に来て鬼婆に旅を労われるとは・・・

「この地獄ではポイントと交換して、物を買ったりサービスを受けられたりするのじゃ」

そう言って、鬼婆さんはポケットからメダルを出して、見せてくれた。

そういえば、閻魔さん賭け事にポイントを使ったり、フィギュアと交換したりしていたな。

結局、ポイントがお金代わりなのね。

「銅のメダルは1ポイントで、銀のメダルは5ポイント、金のメダルは10ポイントですのじゃ」

そっかーじゃあ0ポイントの私は、何も買えないじゃないの。

ええい、ついでにポイントの稼ぎ方を教えてもらおう。

「あのーどうすればポイントは貰えるのですか?」

「あんれま、まだポイントを手に入れてなかったんか」

そう言われても、まだ来て間もないしね。

「じゃあ皿洗いでもするかえ、1万枚ほど皿を洗ったら、たらふくダンゴを食わしたるさけえ」

え――――――――――――

1万枚もお皿洗うの何時間も掛かっちゃうよ。

「死ぬ程腹働いた後の、ダンゴは旨いこと、旨いこと」

そうかもしれないけど、1万枚もお皿洗うの私いやよ。

もー閻魔さんったら、こんなダサいペンダントより、ポイントを残しておいてくれたほうが良かったのに・・・・・・・・・・・ん?

そういえばさっき亡者は、これを見て逃げ出してたよね?

これを見せたら、何とかタダで食べられないかしら。

「あのーこれでなんとかなりませんか?」

胸元のペンダントを鬼婆さんにかざしてみる。

鬼婆さんは、ペンダントと私の顔を交互に観察して答えた。

「はあー。まあそういうことなら・・・・・・・・・」

やったー素敵すぎるこのペンダント。

『大いなる力』って便利よね。現世に持って帰れないかしら。

ただこのペンダントを見せたときに、鬼婆さんがもの珍しそうな顔で、私の顔を覗き込んだのが気になるけど・・・・・・・・・・・・・まあいいや。


このあと鬼婆さんは、おダンゴとお茶を用意してくれた。

わーい、おダンゴ、おダンゴ嬉しいな。

やっぱり甘いものには浮かれちゃうわたくし。

いただきます。味わいます。楽しみます。堪能しちゃいますぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あーおいしかった」

ここのおダンゴ美味しい。

地獄って、どうしてこんなに美味しいお菓子ばかりなんだろう?

まだ飴とダンゴしか食べてないけど・・・

けど現世と違って甘さにコクが有るっていうか、深みがあるって言うか、雰囲気で言うと高級な牛肉の旨みだけを取り出して、甘みに変えたって感じなの。

美味しいおダンゴを食べて、ご満悦となった私は旅を進めることにした。

「ありがとう、お婆さん。ここのおダンゴ最高って宣伝しとくからね」

毎度おおきにと言って、鬼婆さんは手を振って見送ってくれた。

ごめんねお婆さん、ポイント払えなくて。

今度またポイント持って、食べに来るからね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ