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誕生

「それじゃあこれは、わしからのお祝いや」

そう言うと、閻魔さんは指をパチンと鳴らした。

すると煙が舞い上がり、デコレーションケーキとプレゼントBOXを手にしていた。

デコレーションケーキには、おいしそうなクリームに苺のトッピング、ご丁寧にろうそくまで付けてある。

「現世で生きて来た、明日香ちゃんはもう死んだ。だから今日はあの世の明日香ちゃんの誕生日や」

閻魔さんはケーキを差し出した。

「わーすごい、おいしそう。ありがとう閻魔さん」

甘いものを見せられ、機嫌を直す現金なわたくし。

けどケーキは大好きなんだもんっ

「大変やったでーこれだけの白い絵の具を集めるの」

え・・・・・・・・・・・?このクリーミーな白いものは全部絵の具!?

「もしかして食べられないんじゃないの?」

閻魔さんをにらみつける。

きっと今までで一番怖い顔をしていたことだろう。

「わし甘いもん嫌いやねん」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

無言で足のすねを蹴り上げてやった。

思い知るがいい、食べ物の恨みは恐ろしいのだ。

さすがに脂肪の無いところにはダメージがあるらしく、足を押さえてうめいている。

「わ・た・し・が食べるんでしょ」

「もしかしてこの飾ってある苺も食べられないの?」

痛さが残っているのか、まだ足を抑えたままだ。

「それ、ろうそくやねん」

今度は逆の足を蹴ってやった。

「堪忍や、けどそのろうそくの形をしたものは飴細工やねん」

どうして食べられるものと、食べられないものを逆にするの。

やっぱりギャグでやってるんじゃない?

さっそくろうそくの形をした飴細工を口に入れてみる。

「おいしいじゃない、閻魔さん。すごいわ。見直したわ」

大げさではなく、本当に今まで食べたどんな飴よりおいしい。

閻魔さんは泣きそうな顔に無理矢理、笑顔を作って「おおきに」とだけ言った。

たぶん痛さでそれ以上は、話せなかったのだろう。


痛みから解放された閻魔さんは、もう一つの手に持っていた、プレゼントBOXを差し出した。

「誕生日にはケーキの他に、プレゼントが付きもんやろ?」

「ケーキは舐めることしかできなかったけどね」

嫌味のつもりで言ったのだが、効いてないみたい・・・

中を空けてみると、真鋳のような材質で、六角形の柱を薄く切ったようなペンダントが入ってあった。

ペンダントには『王』の文字が刻んである。

ダサい・・・・・ダサすぎる・・・・・

「このペンダントには『大いなる力』の一部が込められているんや」

大事にしてやと言って、金メダルを渡す様に明日香の首へかけた。


「明日香ちゃんはこれから地獄に行くけど、帰ってこれへんわけやないねん」

えっそうなの!?

「地獄に行って、ポイントを集めなはれ。そうしたらまたわしが裁けるようになるから」

そっかー帰って来れるのね。

お腹を殴るなんて、悪い事しちゃったな・・・

まあお腹にはダメージないし、気にしない気にしない。

「ポイントはどうやって集めるの?」

そこは重要だ。

「方法は2つ有ってな。地獄の鬼から貰うか、亡者から奪い取るかや」

「私は奪い取らないわよ」

奪い取るなんて野蛮なことはしたくないわ。

「そやない、自分のポイントは守らなあかんちゅうことや」

なるほど・・・・・・・・・・


「じゃあそろそろ行きや」

閻魔さんは被告席の机の横にあるボタンを押した。

すると、裁きを受ける人が立つ場所の下が、パカッと開いた。

「本当はあの穴に落とされるんやけど、今回は特別に階段を取り付けといたわ」

まあ地獄に行くのは閻魔さんのせいだしね・・・

けど落っことされなくて良かった。

「ほな、また戻ってきてや」

「また戻ってくるわよ」

とりあえず、失ったポイントだけでも取り返しにね。

「さっきの言葉、英語でなんて言うか知ってる?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「もしかして、明日香ちゃん知らないのかな?」

ニヤニヤしながら閻魔が問いかける。

「サングラスを外したら、言ってあげるわ」

いつの間にさっきのサングラスをかけているのよ!

チェッと舌打ちをしてしぶしぶ、サングラスを外す。

「じゃあまたね。閻魔さん」






「I’ll be back」











〜22年前〜


とある市民病院の病室に一人の男が駆け込んできた。

手には箱を持って・・・・・・・・・


「沙代子生まれたのか!?」

ベットを見ると、沙代子と呼ばれた女性の横に、愛くるしい赤ちゃんがすやすやと寝息を立てている。

「しー静かに。起きちゃうでしょ、あなた」

母親は安心させるように、赤子の頭をそっと撫でる。

「やったーついにやったぞ。俺は今日から父親だー」

子供のようにはしゃぐ夫を見つめ、母親はうふふと笑う。

良かったわ、あの人と結婚して。

共に笑い、共に泣き、共に生きる。

簡単なようだが意外と難しい。

しかし、この夫婦にとっては日常茶飯事の事であった。

「そうだこれを買ってきたんだ」

ジャーンと言って箱の中身を差出す。

「あなた、子供が生まれた日にケーキなんておかしいわよ」

「そんなこと無い。誕生日だよ、誕生日。今日こそが真の誕生日じゃないか」

「あなたったら・・・」

良かったわね明日香、あなたのお父さんは明るく素敵なお父さんよ。

こうして、長谷川家に一つの命が誕生した。

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