宣告
どうしてこんな親父が閻魔さんになれたんだろう?
ため息混じりに質問をぶつけてみる。
「閻魔さんって不真面目なのに、よく閻魔さんになれたね」
心外っと言った表情で、すかさず言い返す。
「不真面目なことあるかい、真剣にやっとるんや!」
え――――今まで真剣にやってたの!?
私を笑わしているんだとばかり思っちゃったよ。
誰がハゲた裸のおっさんの登場に「きゃーかっこいい」なんて思えるのかしら。
うーんあの世の人の考えることは良く分からん。
「まあわしには『大いなる力』を持っているから、閻魔を任されてるんやけどな」
そういって腕を捲くり、力こぶを見せつける。
別に見たくも無いので、あえて顔を逸らしてやった。
どうせ『大いなる力』て言ったって手品か何かでしょ。
「ところで明日香ちゃん。ものは相談なんやけど・・・」
今まで閻魔さんの相談はロクなのが無い。
「ちょっと地獄に行ってくれへんか?」
なに―――――――――――――――!?
ちょっと行ってくる様な場所じゃないでしょ。
「どっどっどうゆうこと?私、現世で1ポイントも稼いでなかったの?」
地獄行きをいきなり宣告され、思わず詰め寄る。
閻魔さんは申し訳無さそうに、頭を掻いた。
「実はな、明日香ちゃんのポイント、わしの欲しい物と交換してもうてん」
ちょっ・・・ちょっと私のポイント勝手に使わないでよ――――――
あまりの勝手な行動に思わず、閻魔さんの胸ぐらを掴んでしまう。
「ねえなにと交換したの?話せ、話すんだぁぁぁぁぁぁぁ――――」
返答次第によっては殴ってやる。
「詩音ちゃんの限定フィギュア・・・・・・・・」
「死ね――――――――――――――」
閻魔さんに右ストレートを炸裂させる。
拳は見事、閻魔さんのお腹にめり込んだが・・・
しかし、分厚い脂肪に阻まれてしまい、ダメージゼロ。
「すまん。このとおりや」
さすがの閻魔さんも申し訳ないと思ったのか、両肘と両膝を付いて手を合わせ、謝罪のポーズを取る。
閻魔さんが亡者に許しを請うなんて・・・・・・普通逆じゃない?
「許してくれ。わしと詩音ちゃんの未来の為に」
「そもそもあなたと2次元のキャラに、未来なんか無いでしょ」
あまりの馬鹿馬鹿しさに脱力しちゃった。
まあいいか。どうせ私は地獄行きって思ってたし・・・
「もういいわよ。地獄に行ってあげる」
それを聞いたとたん、顔を輝かせ、最高の笑顔を見せる。
「ほんま?」
「ええ、ほんまよ」
「さっすがわしが見込んだ娘や。おおきに―――」
立ち直るのはやっ!
許したことを早くも後悔してしまった。