意味
怪我を治してもらった後は、2人と1匹で旅を再開することとなった。
吊り橋の一件からスーちゃんのまま旅を進めていたのだが・・・・・・・・・・・
わがままスーちゃんの、『疲れた攻撃』と『お菓子買って攻撃』が始まったので、結局ケルちゃんに戻ってもらうことにした。
ケルちゃんは多少ドジなところがあるけれど、3つの性格に中で一番慕ってくれるので、平凡に旅を進めるには、絶好のおしゃべり相手のようだ。
「ケルちゃんの服って可愛いね」
可愛いと言われると、お礼のように頭の上の耳をぴょこんとお辞儀させた。
ケルちゃんが着ている服は、黒いスカートに白いエプロンが付いたエプロンドレスで、足には黒の長い靴下と皮の靴を履いている。
加えて、犬の耳と尻尾が付いているので、男性ならずとも可愛く感じてしまう。
「まあ、嬉しいですわ、お嬢様」
「私なんか、こんなダサい着物よ。それにこの格好、すごく歩きにくいわ」
明日香ちゃんが着ているのは、死装束と呼ばれる白い着物で、長いすそに加えて、草履を履いているのですごく歩きにくそうだ。
旅に向かない格好をしているご主人を気遣い、ケルちゃんは提案した。
「お嬢様、私の魔法で着替えましょうか?」
「え?魔法でそんなことできるの!?でも、(屋敷を崩壊させちゃったから)封印してるんじゃ・・・・・・」
提案に対し疑問をぶつけてみる。
「封印しているのは、攻撃の魔法だけですわ。でないと、日常生活に支障が出ますもの」
魔法が無いと支障が出るってどんな日常生活なんだよ・・・・・・・
まあけど着替えさせてもらえるのは、ありがたい。
「じゃあお願いできる?」
「分かりましたわ、お嬢様」
ケルちゃんは手にした杖を振り上げると、呪文を唱えた。
「マジカル、マジかよ、ルルルルル」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何でこの人は変な呪文ばっかり言うの!?
呪文と同時に杖を振り下ろすと、明日香に向かって帯状の光が流れていった。
その光の帯はらせん状となり、明日香の周りを取り巻き、消えて行く。
光が通った後は、明日香の服装が変化していた。
「すごい!!一瞬で着替えちゃったよ。けど、あまり変わってないね・・・・」
服装は変わらず白装束のままであるが、足元まで伸びたすそは膝の上まで上がり、履物が草履からサンダルに変化していた。
「亡者が白装束を着るのはしきたりなので、変えれませんわ」
「そうなんだー」
まあさっきと比べて、少しオシャレになったしいいか。
それに歩きやすいしね。
着替えも終り2人はまた歩き始めた。
その頃にはもう怪我鬼は消えていた。
怪我鬼が消えたことで、ケルちゃんが約束を思い出し質問する。
「ところで、スーちゃんにお菓子を買ってあげる約束をなさっていたけど、大丈夫ですの?」
大丈夫ですのって?スーちゃんは性格の違うあなたなんじゃ・・・・・・・・・まあいいけど
「まあ何とかなるでしょ。今までも結構楽にポイント稼げたし」
「そうなんですの!?お嬢様優秀ですのね。皆さん結構苦労して稼いでらっしゃるのに」
優秀と言われると、照れちゃうな・・・・・
「まあそう言っても、これが有るから楽だったんだけどね」
ケルちゃんに閻魔様からもらったペンダントを目の前にかざした。
「あら、お嬢様・・・・・・・・・・・・」
ペンダントを見たケルちゃんは、困惑の表情を浮かべながら話を切り出した。
「あまりそのようなものを、お見せにならないほうがよろしいですよ」
「どうして?なにかと便利よこれ」
「まあお嬢さんがよろしいのなら・・・・・・・・」
よろしいのならと言いつつも、困惑の表情は変わっていなかった。
その表情なんか気になるな・・・・・・・
「このペンダントってさ、閻魔家ゆかりの物だと思ってるんだけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違うの?」
その言葉を聞いて、困惑から驚きの表情に変えるケルちゃん。
「まあ、ご存じなかったの!?そのペンダントの意味・・・・・・・・・」
意味って何?
黄門様の印籠みたいなものじゃないの?
閻魔さんはプレゼントだって言って渡されただけで、意味なんて教えてもらってなかったけど・・・・・・・・・・・・・なんだろう?
「そのペンダントを持つものは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『愛人』」
何――――――――――――――――――――――――!?
だ・・・・・だ・・・・・誰があのハゲ親父の愛人なのよ―――――――――――――――――――――ッ
今までのペンダントを見せていた場面を思い出し、思わず赤面する。
ど―――――――しよ―――――――
お茶屋のお婆ちゃんや、チケット売り場の実直鬼に得意げに見せちゃったじゃんか。
私は閻魔様の愛人だから、お団子をタダで食べさしてね・・・・・・・・・・って
「アホか―――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ」
明日香ちゃんは叫びながら、ペンダントを岩山に向けて放り投げた。
ペンダントを投げた後は、興奮のあまり肩で息をしている。
「お嬢様、閻魔様の愛人でも私にとっては大事なご主人様ですよ」
「私はアイツの愛人じゃない!!」
明日香はツッコミを入れると、スタスタと先に行ってしまった。
「待って、お嬢様ぁ―――――――」
ケルちゃんはご主人様を追いかける為に走っていった。