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番犬

集落を抜けると、右の方向に崖が見えてきた。

ためしに崖の下を除いてみると・・・・

げっ血の川だ・・・

なにこの川?

もしかしてこれは亡者たちの血・・・・・・・・・・・・

これからの旅の不吉を、暗示するかのように真っ赤な水が、流れている。

こんなの見たら、ちょっと不安になるんですけど・・・・

しかし、あの村だけにいつまでも、居る訳には行かない。

それにあの赤い水は、亡者の血だと決まった訳じゃないので、勇気を振り絞り、崖沿いの道を歩き続けることにした。

やっぱり不安なときは歌よね。


上を向いて歩こう

涙が零れ落ちないように

思い出す、春の日

一人ぽっちの夜・・・・・・・・・・


やめだやめだ。

良い歌だけど、余計に不安になるよ。


ポイントは歩いてこない

だから歩いていくんだね

一日1ポイント

三日で3ポイント

3ポイント集めてティラミスちゃん


こっちにしよう。

こっちの方が幸せいっぱい夢いっぱいだもんね。


崖沿いの道をしばらく歩くと、崖が徐々に道に迫ってくる。

道も徐々に狭くなり、ついには岩山と崖が交差してしまった。

あれれ?行き止まりになっちゃったよ。

しかし、よく見ると崖には、向こうに渡れるつり橋が架かっている。

そしてつり橋の横には、大きい怪物の石像が立っていた。

石像を見るため、近づいてみる。

うわー大きい。3mは有るよ。

ライオンのような体に、大きく裂けた口と鋭い目、それだけでも十分脅威を感じる。

それに加えて頭が3つ有り、燃えさかる炎の様なたてがみが付いていた。

しかし、良く出来てるよね、この石像。

たてがみの部分をよく見ると、毛の一本一本まで細かく掘られてある。

地獄にも天才的な彫刻家が居るんだ。どうやって彫ってあるんだろう?

思わずその繊細な造りのたてがみに、手を触れてしまう。

手触り、気持ちー

その触り心地を堪能していたが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いつの間にか、手に伝わる感触が変化していた。

あれれ?確かに触り心地は良いんだけど・・・・・・・・・・・・・・

いつの間にサラサラヘアーに?

ねずみ色だった、たてがみは真っ赤に変色し、手の動きに合わせて揺れている。

たてがみの変化と共に、顔と身体も黄土色へと変色し、無機質な石から生物への変貌を感じさせていた。

もっ・・・・・・・・・もしかして、やばい?

明日香は後ずさりを始めるが、時すでに遅く怪物の視界に捉えられていた。

怪物の真ん中の顔がギロっと睨む・・・・・・・・・

「我が名はケルベロス、我を目覚めさせたのは汝か?」

地面の下から聞こえてくるような、低い声が辺りに響く。

「あ・・・あはは・・・・ねっ・・・寝てらっしゃってたのね」

あわてて両手の手のひらを、前に向けて左右に振り、無実をアピールする。

寝てる間は石像になるなんて、知らなかったのよ。

『起こすな危険』の張り紙くらい貼っといてくれたらいいのにー

「汝は亡者か?」

「はい。何時間か前に亡者になりました」

それを聞いて怪物は、またギロっと睨む。

ひゃーギャグよギャグ。命を懸けたギャグだから許して下さいませ。

怪物は三つの頭を天に向けると、地響きのようなうなり声を上げた。

きゃ―――――――――

私を食べても美味しくないわよ。

はっ?しまった!?

私のお腹の中にはティラミスが詰まってるー

どうしよう。私なら絶対食べちゃうわ。

ティラミスは美味しいけど、私は食べないでー

しかし怪物は、明日香を食べる事も無く、こう言った。

「汝、なかなか面白いな」

おっ・・・・・・・・面白かったの?

ややこしい笑い方しないでよー


「我、汝に頼みがある」

「はいっ。わたくし炊事、洗濯、家事、親父何でもこなします」

あわてて、敬礼のポーズを取る明日香ちゃん

「汝、我の主人となれ」

「了解です隊長。明日香二等兵、隊長に付いていく所存で・・・・って私が主人!?」

「我、主無しにはこれ以上進めぬ」

そう言って、怪物は後ろ足を曲げて頭を垂れた。

服従のポーズなのだろう。

私が、この怪物の主人!?

嬉しいような・・・・・・・・恐ろしいような・・・・・・・・

けど、これから不安がいっぱいだし、ボディーガードには良いかも?

「分かったわ。私が主人になってあげる」

両手を腰に当て、威張ったポーズをする。

そういえば、今まで動物飼った事なかったんだ。

ちょっと大きいゴールデンレトリバーだと思えば、なんとか・・・・・・・・・・・・なると信じよう。

そういえば、ケルベロスって番犬よね?

一度、これやってみたかったんだ。

「じゃあとりあえず、握手しましょ。お手」

明日香は威張ったポーズのまま、右手を差し出す。

この行動は、地獄の番犬としてのプライドを傷つけたようだ。

「汝、我を愚弄するか」

怪物はカッと目を見開くと、左前足を振り上げ、明日香に向かって振りろした。

きゃーごめんなさい。

ただ握手がしたかっただけなのよー

しかし、その前足は明日香の頭に当らずに、目の前でピタッと止まった。

「我は地獄の番犬なり、これくらいの命令をこなす事は容易い」

あーびっくりした。踏み潰されるかと思っちゃった。

けど、やっぱり主人の命令には忠実よね。

「亡者を頭から一飲みすることも容易い」

「ご・・ご・・ご・・ごめんなさい」

いつの間にかまた敬礼のポーズになる明日香ちゃん。

「我、主人には忠実なり、安心するがよい」

その言葉に明日香は、胸をなで降ろした。


「所で、私この橋渡るつもりなんですけど、あなたには小さすぎて通れないのじゃない?」

「心配不要。我、主の呼び方にて姿を変えれるなり」

「呼び方って?まさか『ケルちゃん』って言えば、チワワみたいに可愛くなるわけじゃないよね?」

そう言い終わったとたん、怪物の身体が輝き始めた。

やがて体は、光の粒となり弾けるように拡散する。

その光の粒は、空を漂っていたが、すぐに凝集し人の形となった。

「初めましてお嬢様」

怪物は、さっきの姿から想像もできないような、可愛らしい女の子に変身してしまった。

人間で言うと15歳くらいの年齢で、手には短い杖を持ち、サラサラの髪の毛の上には、チワワのような白くて小さい耳が乗っていた。

その娘を可愛く見せている要素は、それだけではなく、膝上くらいのスカートのメイド服に、お尻から白いふさふさの尻尾が生えていた。

「マジカルメイドのケルちゃんです。よろしくお願いします」

自己紹介が終わると、丁寧にお辞儀をした。

さっきと全然違うじゃない!?

なんて可愛いの。

顔も、コスチュームも、ふさふさの尻尾と耳も可愛いすぎるよ。

どうしてこんな生き物が生息しているの?

地獄って分からなーい???

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