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3-1 ドーラとの再会

交易都市ルーランの衛星都市にヴァロたちは入る。

道端は露店がひしめき、見たこともないような異国のモノがちらほら見られるようになってきた。

東の大陸の玄関口の交易都市ルーランが近いのだ。

人ごみのなかをヴァロたちを乗せた馬車は進む。

「グレコさん、今『真夜中の道化』の足取りを追っているんですよね」

「ああ、こっちの見立てが間違いなけれりゃ、奴らの足跡をそのまま辿ってることになるな」

グレコの見立てによれば『真夜中の道化』と考えられる集団は二日前にここを通過したらしい。

二日前と言えばもうほとんど距離は無い。すでに標的は目と鼻の先にいると思ってもいいだろう。

「不自然ですよね。ルーランを回り込むように北に向かってる。

ルーランを経由すれば最短ルートで北に迎えるんじゃないんですか」

「ルーランは連中でも怖いってことだろうよ」

何気なく言ったグレコの言葉にヴァロは引っ掛かりを覚える。

「それは一体…」

「ああ見えた。今日の宿泊はそこの宿な」

グレコの指の先には古びた宿があった。

とはいえここ数日の間野宿が続いた。

久しぶりの宿に表情には出さないもののフィアは少し喜んでいるのがわかった。


グレコはカウンターで手続きを済ませると、

メモのようなものを受け取り、ヴァロに部屋のカギを手渡した。

「部屋は二部屋。部屋は俺とラウィンで使う。そっちはお前らな」

突然のグレコの一言にヴァロは驚く。

「二部屋…他に部屋はないんですか?」

「そりゃ無理だ。この時期どこもかしこも宿は一杯だ。

こっちだってこの時期じゃなきゃ借りっぱなしにしてねえよ」

そう今の時期は収穫祭などが重なるために、人の通りが多くなるのだそうだ。

部屋を借りられないのは仕方がないこととはいえ、年頃の娘と宿を一緒に取るなどちょっと考えられない。

ヴァロは最近は意識して部屋を別々にとるようにしてる。

「あれでも外見はうら若き女性だろ、俺なら喜んじまうけどな」

「グレコさん」

ヴァロは思わず声を荒げる。

「カッカッカ、冗談だよ。意外とうぶだねえ。二年前は一緒のテントで寝てたってのになあ」

何で知ってるんだこの人は。ヴァロは叫びそうになった。

「いくらなんでも一人部屋に男三人はねえよ。

護衛だろ。部屋は仕切りつくなりなんなりして、そっちでよろしくやってくれ。

んじゃ、ちっとうちらは調べることあるから荷物頼むわ」

そう言うとグレコは荷物をヴァロたちに任せると外に足を向ける。

「休めるときに休んでおかねえと肝心な時に体がもたねえぞ」

グレコはそう言い残してラウィンを連れ立って通りの人ごみの中に消えて行った。

こうなれば仕方ないだろう。ヴァロは覚悟を決めることにした。

「フィア、俺は馬車を移動してくるから少し荷物番を…フィア?」

フィアは通りのほうを茫然と見ていた。

「どうしたフィア?」

ヴァロはそう言ってフィアの視線の先を見る。

そこにはとんがり帽子を着けた独特の人影があった。

ヴァロは目をこすってもう一度通りの方を見つめる。

「フィア…。俺疲れてるのかな、見慣れた変てこなとんがり帽子が見えるんだが…」

疲労感を隠すこともなくヴァロはフィアに問う。

「…私も」

答えるフィア声色もも何処かげんなりした感じだ。

そのとんがり帽子はひょこひょこと人ごみの中を移動している。

「アレ、見つかったらやばいよな」

「…間違いなく…」

ヴァロとフィアは視線を交わすとお互い示し合わせたように頷きあった。

「…ちょっと行ってくる。フィアは荷物を頼む」

「うん」

ヴァロはそのとんがり帽子に向かって駆け出した。


「ドーラ」

肩をつかみ顔を合わせると、そこには見慣れた一人の男の顔があった。

ヘンテコな帽子を着けるという奇抜な服装をしている。

背丈は中肉中背。顔はどちらかというと整っている方だと思う。

手にはどこで買ったのか食べ物が握られていた。

「やあ、ヴァロ君じゃないか」

ドーラはさも驚いたような声を発した。その声にヴァロは眩暈のようなものを覚える。

「ちょっと来い」

ヴァロはドーラの手を強引に引いて物陰に引っ張っていく。

「ドーラ、何でお前がここにいるんだ?」

通りから外れた路地裏でヴァロはドーラに向き合う。

「何でここにいるかって?君こそ何でここにいるのサ?フゲンガルデンで仕事してたんじゃないのカイ」

「ちょっといろいろと…それよりドーラ即刻、ここから離れろ」

ドーラと呼ばれるこの男は、教会の敵である第四魔王ドーラルイその人である。

ドーラの肉体はもともとウルヒという『狩人』と交換したものだという。

ウルヒというのはヴァロの先輩にあたる『狩人』だ。

第四魔王を復活させその魔王と体を取り換えた人間で、聖都コーレスを壊滅寸前まで追い込んだ首謀者。

魔王復活は、あまりに衝撃的な事件のためにその事実は隠ぺいされた。

教会側もそうせざる得なかったのだ。

教会のおひざ元、聖都コーレス中心において魔王が復活したなど。

事件が表沙汰になっていれば教会の存在の根本を大きく揺らぐことになる。

聖都コーレスの中心で魔王が復活したという事実が明るみになるのをおそれ、

その事実を教会側があらゆる手段を使ってもみ消したのだ。

その扱いは現在行方不明となっている。

ラウィンは知らないが、少なくともグレコとウルヒは面識はあるはずだ。

もし二人とドーラが顔を合わせたりなどしたら話がややこしくなる。

「いきなり来てなんダイ…」

「ヴァロこいつも宿にもっていってくれ…ウルヒ?」

タイミングが悪くヴァロの背後から声をかけてきたのはラウィン。

それもラウィンはドーラを知っている様子だ。

やばいことになったとヴァロは思った。

その場の空気が固まる。

「えーと、どちら様…」

ドーラが状況を呑み込んだらしく、とぼけてそう言いかけた次の瞬間、

ラウィンはすぐさま魔器を取り出し、ドーラにに攻撃を仕掛ける。

見えないぐらいの速度で、石のようなものがヴァロの頬をかすめていく。

直後、ヴァロの背後のドーラのいた場所が爆発する。

ラウィンの暗器による一撃だ。

ラウィンのもつ武器は爆発系の魔器らしい。

狭い路地の一角が爆風により埃がまきあげられる。

ドーラは気配を察して上に跳んでやり過ごしたようだ。

そのまま屋根伝いに逃げていくのが見えた。

ヴァロはドーラの無事を確認すると、取りあえず胸をほっとなでおろす。

あんな男でもヴァロの友人である。

ほっとしたのもつかの間、ラウィンはドーラを追ってラウィンは壁伝いに屋根を登っていく。

もはや問答の必要もないと判断したのか。ラウィンの動きには微塵の躊躇も感じられない。

「ラウィンさん」

ヴァロが声を上げたときにはすでにラウィンは視界から消え去っていた。

ヴァロは最悪の展開になってしまった事を知る。

周囲を見ると爆発騒ぎで人が集まってきていた。

爆発騒ぎできた人垣を押しのけながらヴァロは二人を追う。


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