表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/24

2-1 二人との出会い

街道沿いの街ロロメクの騎士団支部にヴァロは顔を出していた。

マールス騎士団東部最大の支部である。

この辺り一帯の役所も兼ねているため、人の出入りが多い。

今は年末でここにいる騎士団員たちは忙しそうに仕事をしていた。

ヴァロが村からもらってきたリンゴを差し出すと思いのほか喜んでくれた。

「キールさん居なかったね」

「東部に来たら少し相談したいことがあったんだけれどな」

キールというのは以前世話になった騎士団の一人だ。

魔剣使いで将来の幹部候補。人望は厚く、ヴァロの尊敬する人間の一人でもある。

「山間部の村で性質の悪い疫病が発生したとかで隔離しにいってるって聞いたよ」

四日前に騎士団員数名でその疫病の発生した村に向かったという。

騎士団の業務は多岐に渡る。

住民同士のいさかいの仲裁、税の徴収から、街道の整備に至るまでさまざまだ。

そして、疫病の隔離もその業務の一つにあたる。

騎士団という名がついているのはかつての魔王戦争時の名残でしかないのだ。

「この時期に疫病?しかも山間部の集落って…」

フィアは少し怪訝な顔をする。何か思い当たることでもあるのだろうか。

「その辺聞いたんだけれど、風評被害の関係で箝口令出されているみたいだ。

詳しくは聞けなかったよ」

箝口令が敷かれたのは、そこに住む村の人達のことを考えれば当然の対応だろう。

疫病が広まったなどという話が広まれば、しばらくその村には誰も寄り付かなくなる。

ただし、箝口令のために騎士団員のヴァロでもこれ以上はさすがに聞き出せなかったが。

「箝口令…かなり大事ね」

「帰りまでに終息してくれてるといいんだけれどな」

ヴァロはキールに聞きたいことが山ほどある。

主に最近手に入れた魔剣のことだが。

魔剣の使い手はマールス騎士団でも数えるぐらいしか存在しない。

その上、魔剣使いは騎士団の名家などが多く、当然幹部となる者が多い。

平の団員からすれば雲の上の存在なのだ。

その中でもキールは旧知の間柄だったし、ヴァロとは気軽に話せる唯一の存在でもあった。

「ヴァロじゃねえか」

支部を出ると聞き覚えのある声がかけられる。

ヴァロはその声の聞こえてきた方向に顔を向ける。

振り向いた先にはフード付きのマントを着けた二人組が立っていた。

見るからに怪しげで、あまり近寄りたくはない感じである。

ヴァロが二人を見つめると一人がフードに手をかける。

眼鏡をかけていて、バンダナを巻いている。

ちょび髭の下の口元には笑みを絶やさない。

「グレコさん」

ヴァロからグレコと呼ばれる男はにやりと笑った。

ヴァロと同じ異端審問官『狩人』である。

異端審問官『狩人』は教会から認められた魔を討滅する機関であり、

『狩人』に属する人間はこの大陸中いたるところに存在する。

今より二年前の魔女討伐の一件で世話になった。

この男の『狩人』の中で呼ばれる呼び名は『型無し』。

魔女捕縛の一件でヴァロと一緒になったことがある。

その際にはヴァロと交戦状態になった。

攻撃する兆候すら読めない一撃、軌道すら読めない死角からの意表を突いた打撃。

そのどれもが格上だと断言できるほどに洗練されていた。

あれから二年経って、魔剣という切り札を手に入れた今でも勝負になるとは到底思えない。

魔女捕縛の一件の時も、ウルヒという『狩人』の助力がなければ、退けることはできなかったと思う。

ただし、戦闘になったとはいえ一時的なことであり、その後は和解している。

「どうしてここに」

「ちいーとばかしここの支部に用があってな。

フゲンガルデンにいるおめーらがここにいるってことは、例の魔獣退治の一件、お前らが担当したのか」

「はい、昨日終わって今は用事でルーランに向かってるところです」

「へぇー、もう魔獣の退治は終わったのか。仕事はええな」

感心したようにグレコ。

「グレコさんは何を追いかけているんです?」

『狩り』の対象がこの地にいるのだ。

名のある『狩人』がこんな平穏な南の地に理由なく出てくるとは考えにくい。

ヴァロはグレコの双眸を見つめた。

「カッカッカ…しばらく見ねえうちに、いい表情をするようになったじゃねーの」

そう言って笑いながらグレコはヴァロの肩をばしばし叩く。

「フィアちゃんも元気そうで何よりだ。しばらく見ねえうちにずいぶんときれいになったもんだ」

普段あまりほめられ慣れていないフィアは顔を赤らめる。

ヴァロはグレコの背後にいるもう一人に視線を向ける。

「後ろにいるのはラウィンという。今回の俺の相方だ」

背後にいる眠そうな顔をした男をグレコは指さす。

男はフードを取る。ぼさぼさの髪の毛、気だるげな眼。

浮浪者と言われても納得できそうな容姿をしていた。

「ラウィン、こいつがヴァロな。『竜殺し』とか言われてる期待の新星」

ラウィンはヴァロという名前に一瞬少し驚いたような顔を見せる。

「よ、よろしくお願いします」

じろじろとなめまわすようにヴァロの顔を見る。

「…お前が『魔王の卵』か」

ラウィンは小さな声でぼそりとつぶやいた。

「魔王の…何だって?」

ヴァロの問いかけを遮るようにグレコ。

「で、そこにいるのがフゲンガルデンの聖堂回境師殿のフィアちゃん」

「聖堂回境師だと?彼の者は自身の結界を離れられないはずだ」

疑いの眼差しでラウィンはフィアを見る。

「ラフェミナから特例として認められたんだとよ。

二年前会った時はもっとちんちくりんだったんだぜ。俺も初めは何かの悪い冗談かと思ったぜ」

「…ちんちくりん…」

複雑そうな顔でフィア。

「ぶっ」

ヴァロは思わず吹き出す。

すると思い切りフィアから睨み付けられた。

あとで覚悟してなさいという表情だ。

「…相方クワンさんじゃないんですね」

気を取り直してヴァロはグレコに尋ねる。

「あいつには今追跡を任せてる。俺がここへ来たのはその件だ。少しやっておかなくちゃならないことがあってな」

「確かめたいこと?」

ヴァロの問いにグレコは答えることはない。

「百聞は一見にしかずだ、興味があれば一緒に来るといいぜ。ここからちいっとばかし歩かなんねえから

馬車があるとこっちも楽だしなあ」

「いいんですか?」

ヴァロの胸が高鳴った。

「来たのはアレの検証だし、いいんじゃね。いいよな。ラウィン」

グレコはそう言って相方の方を見る。ラウィンは黙って頷いた。

「フィア」

ヴァロはフィアに許可を求める。そもそもヴァロはフィアの護衛である。

「私は別にいいわ。『狩人』案件なら私も無関係ってわけではないし、

魔獣退治も予定よりも早く終わって余裕あるし」

「それなら決定な。よろしくお願いします、グレコさん」

凄腕の『狩人』と一緒に仕事ができるのは嬉しいところだ。

相手の技術を垣間見ることができるし、自身のスキルを磨くこともできる。

そもそもヴァロの管理地は魔物とかほとんど出現することのない平穏な南の地であり、

上位の『狩人』と仕事を一緒にできる機会などめったにない。

「それじゃ、いくとしようぜ」

こうしてヴァロたちはグレコとラウィンという『狩人』二人と行動を共にすることになったのだ。

ここで出てきたグレコは夜の雫で一度出てきてます。

凄腕の『狩人』ですよん。ラウィンは初登場。

こっちも強いなり。

ちなヴァロと一度戦ってます。興味があれば読んでみるのもいいかも。

ただし初期作品だし、いろいろ大目に見てください。


最近テレビとか見るよりも、本読むよりも自分で小説書いてた方が楽しいかなと。

ケータイでソシャゲも少しするけど、仕掛けを考えるのが楽しい。

変人になってきてるなーと自覚症状。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ