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4-3 魂連結という秘術

「ラウィン、大丈夫か?」

戦闘終了後、グレコはラウィンに声をかける。

「問題はない。時間はほんのわずかだ」

そう言ってラウィンは片手で人の体ほどある大きな斧を肩に乗せた。

「ならまだいけるな」

「ああ」

斧を持った『狩人』でヴァロは一人思い当たる。

それは北の地で有名な人物だ。

「ラウィンさんって、ひょっとして『魔斧』の?」

「ああ。そうだ」

どこか気だるげにラウィンは頷く。

突然の告白にヴァロは顔を引きつらせる。

「今頃気づいたのかよ。まあ、南では斧なしじゃわからねえよな」

『魔斧』のラウィンと言えば、最も有名な『狩人』である。

魔獣の群れから街を一人で守り抜いた逸話や、

襲いくる巨大な竜と果敢に戦ったという伝説まである。

北の地ではその功績により生ける英雄とまで呼ばれ、詩人たちが歌の題材にすることが多い。

その名声は遠く南の地のフゲンガルデンにも届いている。

おそらく現在『狩人』内では最も有名な『狩人』なのではなかろうか。

「どうも、斧を持ってるとどうも目立つし警戒される。

そこで携帯用できる魔器を上にかけあって作ってもらった」

ぼそりと呟くようにラウィンは応える。

「名が売れるのも考え物だってことだ。

それを言ったらおめえも大概だけどな、『竜殺し』」

グレコはしゃがみこんで魔女の死体を検分し始める。

他の魔女につながる手がかりがあるかもしれないためだ。

「お前の方が序列は上のはずなんだが…グレコ」

序列には『狩人』としての功績が考慮される。

つまりこのグレコという男はラウィンと同等か、それ以上の功績を上げているということになる。

「俺は表に立つマネはしねえよ。つーかてめえはいろいろとずぼら過ぎんだよ。

もう少しうまく立ち回ったらどうだ?」

「魔を倒すのが『狩人』なのだろう。俺はそれ以外のことはどうでもいい」

ラウィンの答えに、グレコは嘆息する。

「お前はそれだから南に飛ばされるんだ。北でおめえを知らねえ奴はいねえぞ」

グレコの言葉にラウィンはそっぽを向く。

何となく有名になった理由がわかった気がした。


「フィア。あの二人の序列わかるか?」

気になったのでヴァロは横にいるフィアに小声で聞いてみる。

序列は一部の上位のものにしか公表されていない。

基本『狩人』は隠密行動の上、名を知られるとその業務に支障が出るためだ。

(大概は偽名で行動するのだが)

ここでヴァロがフィアに聞いたのは『狩人』を使役する立場のフィアならば、

知ってるかもしれないと思ったためである。

「この間見た『狩人』の資料では五位と六位」

小さな声でフィアは応えてくる。

「…ぶっ」

予想外の答えにヴァロは顔をひきつらせた。

上位一桁は幹部クラスの権限があるという。そんなことを昔聞いた覚えがある。

つまりこの二人は『狩人』の方針に影響を与えられるのだ。

確かにそれならばドーラの処遇もどうにかできるだろう。

「だめだな。全員死んでる、その上、手がかりらしきものはみあたらねえ」

「魔力がかろうじて彼らを生かしていたってところだろうサ。ずいぶん酷使していたようだネ」

ドーラはしゃがんで倒れている男の開かれた目を閉じた。

「連中、どっちに向かったかあんたわかるか?」

グレコはなんとはなしにドーラに尋ねる。

「北ダヨ。それもこの近くにいるネ」

ドーラが答えたことが意外だったのか、グレコは驚愕の表情を見せる。

「ほう?どうしてわかる?」

「一瞬北に光が向かったのが見えたからネ。

この術を結んだものは一定以上の距離を越えてはならナイ。そういう制約があるのサ。

フィアちゃん魂連結ソウルリンクって術聞いたことないカイ」

ドーラの声にフィアは少し戸惑った表情を見せる。

魂連結(ソウルリンク。…今は禁呪指定を受けてるはずです。でも大憲章を無視できるはぐれ魔女なら…」

それを聞いてフィアの表情が険しさを増す。

「アレは特殊だからネェ。まさかここで再び目の当たりにするとは思わなかったヨ」

「なんだその魂連結ソウルリンクってのは?」

グレコが怪訝な顔でドーラに問う。

「字面通り魂を連結する秘術です。

数人で魂を共有し、一つの端末(肉体)で死んだとしても他の端末(肉体)が生きていれば

復活することが可能な秘術と言われてます」

「連中に逃げられることもあるってことか…」

ヴァロは最悪の可能性を口にする。

ここで戦った情報は筒抜けということになる。

もし警戒され逃げられでもしたらすべては水の泡だ。

「いいや、もう一度来る。前の『狩人』殺してるだろう。

ここから先は連中も踏み込んでほしくねえってことあろうさ」

「グレコさん、あなたは何を知ってるんですか?」

まるで特定が済んでいるようにも聞こえる言い回しに、

ヴァロはグレコが隠していることが気になった。

「…はやんなよ、それは終わってからと言っただろ。続けてくれ」

グレコは言葉を濁す。

この男は何を知っているというのか?

「…それじゃ続きです。

本来は魔王戦争時に死なない兵を作り出すことを目的に造られたものと聞いてます。

兵士は育てるのに時間がかかるし、死人が出ればそれだけ戦力の低下を意味します。

そこでもし中身さえ戻ってくるのであれば、

戦力の低下を防ぐことができるのではないかという発想から生まれた魔法。

それが魂連結(ソウルリンクという秘術です」

それは戦時下でなくては思いつきもしない兵士を駒として見る考え方だ。

現在の平和な均衡の時代の思想とは全く異なる思想。

「フィアちゃんの言う通りサ。

ただ厄介なのは五人一度に倒さなければ、魂連結者ソウルリンカーは葬り去ることはできないヨ」

「…それは連中体も取り換えられるってことだよな」

「はい。共有している端末(肉体)を変えることにより、永遠に生き永らえることができるとか」

グレコの問いにフィアは頷く。

「それは俺たちも取り換えられる対象となりうるのか?」

グレコのは最悪の展開を見据えた言葉を口にする。

言い換えるならば、それは区別なく全員が敵になりえるということでもある。

その問いにドーラは首を横に振る。

「いいヤ。魔法抵抗力が高い者の肉体の交換は少し手間がかかるんダ。

ここにいる者の肉体の交換には、少なくとも一カ月以上はかかるんじゃないカ」

『狩人』は魔法抵抗力の高い者が選ばれる。

フィアを除いたすべてが『狩人』、もしくはそうだったものである。

一重に魔法に抵抗が高い者とされているのは、

そうでなければ魔法使いや魔獣に対抗できないためだ。

「あんたも大丈夫なんだよな」

グレコはフィアを見る。

「もともと魔力を扱う人間にはそれなりに抵抗力がありますし、

私たちは体内に独自の魔力の流れがあるため、外部からの魔力の干渉はほとんど受けません」

「ふーん…ならその点はだいじょうぶそうだな…」

「グレコさん」

ヴァロはグレコに向き合う。

「なんだ?改まって?」

「相手の手の内にはまだ数十名の村人がいる、彼らは…」

ヴァロは不安になってそれを口に出した。

まず間違いなくさらわれた村人は魔法抵抗力のない一般の人間である。

もし乗り移られる可能性もないとは言えない。

ならばそんな時『狩人』ならどうするのか。

答えは頭では出ていた、ただヴァロはそれを受け入れられないのだ。

「村人全員、見殺しに…いや、皆殺しにすることになるかもな。最悪その覚悟はしておけ」

そう言ってぐれこはそう言ってヴァロの肩を叩く。


皆殺し、ヴァロの頭にその言葉が重く響く。


「…村人たちを救う方法はないでしょうか?」

ヴァロはぽつりとつぶやく。

ヴァロの一言にグレコは顔を引きつらせる。

「…ここでそれを言うかよ?正面からやっても勝てるかどうかもわからない相手だぜ」

「要は人質を救出して、連中から引き離せばいいんでしょう」

「簡単に言ってくれるなよ。相手は少なくても五人かなりの手練れだ。

万が一逃したならまた何十年も連中が巣穴から出てくるのをまたなくちゃならねえ」

「それでもどっちにしろ人質を初めに解放しなくては。

連中は人質をすべて殺しつくさない限り死ぬことはないんでしょう?

だったら俺たちが初めに優先するべきことは、魔女を倒すことではなく

人質を魔女から遠ざけることなんじゃないですか」

ヴァロはなおも食い下がる。ヴァロの言うことも正論ではある。

「ククク…ハッハッハ」

黙ってみていたドーラが突然笑い出す。

「ヴァロ君、その通りダ。やっぱり君は面白いヤ。

僕に考えがあるヨ。一つのってみない?」

グレコはドーラをじっくりと見つめる。

「のってやってもいいが、勝算はあるんだろうな?」

ドーラはグレコの問いに笑みを返した。

思いつきで、次の章のプロローグ書いてたら手が止まらなくなった。

ユドゥン最恐だわーwとか思いつつ書いておりまする。

本当は違う物語で書くつもりが、今回採用w

次の章は退屈な話になるかなと思ったけれど思ったより楽しくなりそう。

あああああ。楽しいものを見るのは好きだ。けれど楽しいものを書くのはもっと好き。

自己満だけどねwww

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