病院の話
消え行くモノもいる話。
高校三年の夏の話だ。
僕は祖母の見舞いにK市の病院に来ていた。
両親も兄弟もない僕にとって唯一と言える血の繋がった家族でもある祖母は重い病を患っており、齢78にして寝たきりであった。
兎も角、寝たきりの祖母の見舞いに病院に来たのである。
その病院は地域では有名な幽霊病院であり、その話を彼女にしてしまったのが間違いだったのかもしれないが、話してしまったものは仕方が無く、彼女がついてきたのも、仕方が無いことであった。
「いやー、雰囲気あるねー」
雰囲気があるのはお前にとっていいかも知れないが、僕や入院している祖母にとってはたまったものじゃないんだ。
「まぁまぁ、そんな気を張るなよ若人」
お前と同い年だ。
ともかく受付で面会の受け付けを済ませ、祖母の病室へとおもむいた。
「346号室ね」
入る前に左隣にいる彼女が呟く。
いや、ここは348号室だぞ。
「ううん、346号室には『いるよ』って話をしてるの」
.........お前僕よりも霊感強くなってないか?
「まぁでもほとんど見えないけどね、弱い、もう消えそうな女の子」
その子の話を、なんで僕にする?
「そりゃ、ついてきてるから、君に」
さっ、と右隣を向く。
にこっ
普通に可愛かった。
「ねえ、今なにかんがえてるの」
痛い痛い痛い抓るな。
その後僕は何事も無かったかのように祖母と小一時間会話し、不機嫌な彼女を祖母に紹介し、そして彼女のアパートへと帰った。
病院にいた女の子は次に行った時には居なかったし、その他に幽霊の類いをその病院で見る事は無かった。