思い出の話
[僕]の話。
大学二年生の冬の話。
僕の小学校時代の思い出と言えば、1人の少女との会話が前半を占めている。入学から4年時に同じクラスではなくなるまで、ほとんどの時間をその少女との会話に費やしていた。その内容は多岐に渡り、時を重ねるにつれ僕達の仲は親密になっていったが、それも4年時に同じクラスではなくなってしまったことを切っ掛けに2度と会うことはなかった。
こんな話をするのも、ついこの間小学校の同窓会があったからである。その同窓会で懐かしい友人達と話をするうちに、よく考えると僕の思い出にはおかしな点がいくつかあることに気付いてしまった。
そもそも僕の母校では、4年生に上がる時にクラス変えは無いのだ。だから4年時にクラスが同じではなくなるはずがない。
それに加えて、クラスが変わったと言ってもその後2度と会っていないというのは些か不自然である。3年間積み重ねたはずの信頼関係はクラスが変わった程度で2度と会わないほどに崩れるだろうか。
そして、他の友人の誰1人として、その少女を見たことが無いという。
では一体、僕は3年間誰と話していたというのだろうか。
友人達は口を揃えて「普通に俺らと遊んでた」と言うのだが、僕にその記憶はない。
僕にあるのは、今思えば小学生にしては大人っぽい、シニカルな微笑みを浮かべる少女との、2人だけの言葉の応酬だけなのだから。