それで何で僕の家庭教師なのか?
それでなんで僕の家庭教師なのか?
「ちょっと予定よりも5年程早くなったけど、時期以外は約束通りに進めよう。」
リーヤン先生が唐突に言いだした。
なんかよく分からないけど、強気なリーヤン先生と違ってミオ先生は少し遠慮がちに、
「いろいろとございまして、約束よりも5年早くなりましたが、公職も辞して参りましたのでよろしくお願いします。」
と、後半部分は僕に満開の笑顔を向けながら頭を下げた。
でもなんかおかしくない?家庭教師になる経緯は分かったけど、理由が分からない。
しかも母様たちみんなは、最初っから家庭教師になってもらうことは了承済みみたいな感じだ。
僕の家はそんなに裕福じゃないし、とても王国でTOPクラスの人を家庭教師として雇うとか無理だと思う。
それに5年早くなったという約束というのも気になる。
いったいなんなんだろうか?
そうやって悩んでいる間も、これからの勉強及び修行についてのスケジュール等が僕を除いた皆んなで話し合われていた。
僕がミオ先生に、
「約束ってなんなんですか?」
と問いかけると、
先生は、
「生まれてくる子供が10歳になった時に、王都の学校で勉強させるって約束です。」
「それを条件にサラ達の結婚を手助けしたんだけどな。」
おっと、またディープな情報をさらっとリーヤン先生が言った。
いろいろと考えないといけないけど、明日から先生たちについて勉強と修行を始めることとなった。
ただ心配なのは、僕は魔法も基礎的な部分は人よりも早く覚えれたけど、別に天才ではない。
魔法を使う上で大切なのは、魔力量と魔力制御だ。
僕は魔力制御こそ人よりも早く覚えることができた。
ただし持って生まれた魔力量は、近所に住んでいる幼馴染よりも遥かに少なく、手で持てる桶3つ分も魔法によって水を生むと魔力切れを起こしてひっくり返ることになる程度の魔力量しかない。
これは魔法師としては致命的だと、子供心に思っている。
もちろん普通の生活をする上では全く問題はない。ただ魔法を生業にはできないだけだ。
そんなことを考えていたら、また、
「問題ありません。全て予定通りです。何も心配しないで・・・。」
とどこからか声が聞こえた。
朝、耳元で囁かれたと思っていた声だが、今回ではっきり分かった。
頭に直接響いてきた。
しかもこの声は僕が赤ん坊の頃から聞こえていたと思う。
僕がものごころついた頃からいつも僕を見守ってくれていた声だ。
森で迷子になった時、野良犬に追いかけられた時、いつも道しるべを指し示してくれた声。
何が切っ掛けだったかは忘れたが、去年近所の友達からいじめを受けた時毎夜僕を慰めてくれた声。
それと同じ声だと今やっと分かった。
しかもそれはミオ先生からの声なんだ。
ただどうして声が頭の中に響くのだろうか?呪文の詠唱もないので、魔法じゃないと思う。
いったい何なのだろうか?
「それも含めて後ほどご説明します。」
また、頭の中にミオ先生の声が響いた。
すると母様が、
「さあさあ、まずはお部屋にお荷物を持って行きましょう。」
「あれ?お荷物は?馬車か何かに置かれているのですか?」
「あぁ、ディメンションルームに入れてるから、手ぶらだよ。」
「まあ、長旅だったので、ちょっと休ませてもらおうかな。」
そう言ってリーヤン先生が立ち上がったので、母様が僕に部屋まで案内するようにお願いした。
先生たちを連れてあまり入ったことのない2階の奥部屋に行き、ドアを開けて後ろの先生たちを振り返った。
その瞬間に突然ミオ先生とリーヤン先生に抱きしめられた。
「主様・・・、」
「アッちゃん、やっと会えた。」
先生たちは嗚咽を漏らしながら、
「幾星霜を経て、ようやっと巡り会えました。これからは決して離れません。」
うん?いったいぜんたい何なんだ?
110㎝足らずの僕を膝立ちで抱きしめながら、オイオイ泣く2人の美女の甘い香りにクラクラしながら、ちょっとだけ興奮してしまった僕。