人助け
毎日読んでくださってありがとうございます。
今までは展開が速すぎてよく内容がつかめなかったと思いますので、これからはもう少しのんびりと話を進めたいと思っています。
王都を出てから数日、それからというもの俺は毎日野宿をしている。宿に泊まろうと思っていたがなんせ森の中、こんなところに宿なんてない。
森の中で野宿なんて危ないと思っていると思うがそんなことはない。
一応猛獣に襲われたりしないように、俺の周りには自分が見えなくなる結界を張っておいた。これは光魔法の唯一いいところだ。
たまに目の前を獣たちが通りかかるが、声を発したりしない限り見つかることはない。どうやら鼻は悪いようだ。
もう日が暮れはじめそろそろいつものように野宿しようと結界をはっていると、何やら森の中がいつもより騒がしい気がした。
俺には全く関係のない話だが、興味本位でその場所に向かってしまった。
するとそこにいたのは、すごくよろよろの老人だった。数匹の狼に囲まれていて、その中心で老人持っている杖を一生懸命に振り回している。
「お願いだ、あっちに行っていくれ。こんな老いぼれ食べてもうまくないぞ」
その老人はあきらめ顔で何度もそういっている。俺には関係ないと思ってその場を立ち去ろうとしたが、目の前で死んでもらっては寝起きが悪くなると思って、そのもとへ駆け寄った。
「お前たち命が惜しかったら帰れ!」
俺は今狼たちの群れのど真ん中に仁王立ちしてそう狼たちに行っている。
命が惜しかったらなんて全くのでたらめだ。それは俺の今の状況にこそふさわしい言葉だ。
そのころ老人は藁にも縋る思いで俺の後ろにうずくまっている。
「神様じゃ、神様が来てくださったぞ」
おいおい、いきなりボケ始めるなよ。そう思いながらこの状況を打破する
方法を考えていた。そしてある答えにたどり着いた。
「くらえ狼ども」
それは攻撃魔法でもなく何かすごい技でもない、ただの光魔法を使ったただの目くらましである。それでも光は十分に明るく暗い所に慣れている狼たちにとってはとても眩しかったようで、ひるんでいる。
俺はその隙に老人を引っ張り出して逃げた。でも、その目くらましはあまり長い間続かずほんの少し逃げただけで、もう後ろから狼たちが追いかけてきている。
「ありがとう若いもん。しかしお前はなにものじゃ?」
「そんなことはどうでもいいです。それより早く逃げますよ」
逃げる間に俺は第二の作戦を考えていた。それは結界に隠れることである。老人を連れてすぐさまそこへ向かった。外側からは見えない結界と言っているが、魔法をかけた本人はその結界が見える。
俺はそこまで行くとその結界の中に老人を放り込んだ。一緒に入ろうと思ったがいつもは自分のサイズに結界をはっているものだから。普通の人にとって見ればやや小さめのサイズになる。
「その場で動かないでください。」
「お前さんはわしをおとりにするというのか。せっかく助けてもらったのに、最後まで助けてもらいたかったわい。わしもここで終わりか。」
「勝手にあきらめないでください。そのにいれば絶対安全です。」
「そうかい、お前さんのいうことを信じるよ。天国で会おう若いもん。」
この老人は完璧に諦めている。まあいい、本当に安全なのだから。後でたっぷり礼はしてもらおう。
振り返った瞬間狼たちは俺のすぐ後ろを追いかけている。老人を見ると、やっと俺の言葉を信じてくれたみたいで、びっくりとこっちを見ていた。
「頑張りな!若いもん。」
お礼は終えでも貰おうかな?そんなことはどうでもいいまずここから生きて帰ることを考えないと。お礼をもらう以前の問題だ。
逃げることをまず中心に、お礼のことを頭の片隅に置いて考えながら。
俺は一人森の中を走り回っている。