No.17 ミス・スミス
出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第十七弾!
今回のお題は「帽子」「宝石」「宿」
12/15 お題出される
12/17 プロットがだいたい組みあがる
12/19 土日は忙しいので金曜のうちに約半分まで書く
12/20 ワードがエラーを起こしてまっさらになる
12/21 なんとか書いてみるが新しいプロットが邪魔をする
12/22 超遅刻投稿
というか
新しいプロットの方を採用しました。浮かんでしまった以上しかたない
というか今回誤字が酷い!
「ですから、この度現れるとされている『怪盗ダンテライオン』の逮捕に協力したいと言っているのです」
探偵姿の少女は、困り果てた様子の警察署長の前に堂々と仁王立ちしながら言った。
署長はため息をつきながら胃の部分をさすり、眉間に深い皺を寄せて問題の少女へ言った。
「それで……具体的に何をしてくださるのですか? 『迷探偵』さん」
「そんな『名探偵』なんて照れますわあ」
そうじゃないと署長の顔に浮かぶも、少女は気に留める様子もなく、いけしゃあしゃあと言い切った。
「私が来たからには『怪盗ダンテライオン』はすぐにお縄に付きますわ。しかし、そのためには色々と警察の方の手伝いが必須なのです。お分かりいただけまして?」
「……」
なにをしてくれるのかと聞いたら、何をしてくれるのかと返され、署長はこれまた頭を抱えた。
その様子に、少女の背後に控えていたメイド服の女性が一歩前に出て話し始める。
「恐れながら……。この度、お嬢様は『怪盗ダンテライオン』様の近辺を洗い、再犯を防止する考えをお持ちです。『お家の力』は使えませんが、これでもお嬢様は……」
と、ここでメイドが言葉に詰まる。そして、少々の沈黙の後、
「とにかくですね」
「おい! 今私個人じゃ何にもできないって暴露しただろ! ウェッソン夫人!」
ウェッソン夫人と呼ばれたメイドは主……であるはずの少女をほっぽって困り顔の署長に言う。
「旅重なる取り逃しは警察の信用を失墜させています。今でこそ人的被害が無いものの、次回はどうなるか分かりません。……特に、前回の様な事は起きてはいけません」
前回の『怪盗ダンテライオン』は、警察の不備で落とされた建築用足場に下敷きにされそうな子供を、警察の集団をすり抜けてわざわざ助けに戻っている。そのことは野次馬をしていた新聞記者に目撃され、周知の事実になっていた。それは元々『義賊』として動いていた『怪盗ダンテライオン』のステルス的な人気を表に出し、ついには支持者を出すほどになった。そこに追い打ちをかけるように汚職警官の事件も関わり、今では警察はかなりの不人気である。
つまり、警察より『怪盗』を応援する市民が多くの分量で今、この国には存在しているということだ。
署長はため息交じりに、胃が痛むのであろう脇をさすりながら言った。
「解っております……そのため、内部監査で発覚した汚職警官を免職に居たしました。ですが、一度落ちた信用はなかなか回復せず……」
「心中お察しします。しかし、被害が有る以上『怪盗』を捉まえねばなりません。ヒーローにしてはいけません」
「そうですな。そのために来ていただいたようなものです……しかし、まさかの……ん?」
署長が例の少女に目をやる。少女は椅子を足場に戸棚に手をかける。戸棚の扉を開けようと必死だが、自分が足場にしている椅子が邪魔で扉が開かない。
署長は顔色が目まぐるしく変わっていった。そして彼は叫びながら少女の元へ駆け寄る。
「ああ! ちょっと、何をされてるんですか! 危ないですよ!」
「え? ああ、この、トロフィーが、気になって……この! 開かない、開け! 開きやがれ! ……あ」
そして無理に扉を開けた結果、署長室で盛大に物音と悲鳴が響き、署内に彼女の存在が知れ渡ることとなった。
「はい……というわけで、今回の封鎖網にご協力いただくことになった、スミスさんだ。」
目の下にクマを造りながら、署長は署員にそう彼女を紹介した。
「基本的には……『おもてなし』の精神で……荒立てないように『お相手』してやってほしい」
かくも邪険に扱われているにもかかわらず、肝心の少女は至って平静……というか、堂々としている。いかにも、我こそが真の首領である! ……といった風に。
警官の反応はだいたいが「なんで子供を現場に入れたんだ署長」である。そこに様々な憶測その他が飛び交っているが、基本的に署長が可愛そうな現状である。
「あー、予告通りなら明日の夜に来るはずだ。今日は周辺を固めたりなんなりしてくれ……場合によっては案内を。わしは……少し休む」
一同に浮かぶのは「あ、これ厄介者押し付けられた」であった。
そして、その後向けられる、少女からのキラキラした目線。先ほど皆一様に浮かんだ考えは実に正しい。
その後半日を経て、疲れ切った大人たちが顔を突き合わせることになる。子供の興味心に一から十まで付き合わされ、あまつさえ仕事が有るのに署長から「決して邪険に扱うな」とのこと……。
だが、スミスと呼ばれた少女は、機材を壊しそうになるわ騒ぎ立てるわどっかいくわで気の休まるタイミングが全くない状況を現場の警官たちにプレゼントしていた。
唯一少女に付き合って右へ左へと動くのは、新米熱血警官のターメリックだ。彼はこの地元の生まれで、地理に詳しくスタミナも有り、少女と歳も近い……疲れ切った大人たちの発想はすぐに集約した。暗黙の裡の多数決可決。よし、奴に全部丸投げしよう。
「スミスちゃんって、なんか男の子の様な名前だよな」
ターメリックは、スミスへずいぶんとフレンドリーな接し方をしているようだ。それに対して、一時はウェッソン夫人が修羅の様な顔で見てきたが、スミス自身が気にしてないようなので、ウェッソン夫人はターメリックの態度を見て見ぬふりをすることを決めたらしい。
「あー、偽名だよ、ターメリッ君」
「ターメリッ君? ……また妙なあだ名をつけたな」
「ターメリック君だと『く』が重なって気持ち悪いじゃないですの」
「そうか? いやまぁ、良いか。スミスちゃんが呼びやすい奴で良いよ」
「うん。じゃあターメリッ君だ。さもなくばターチンなんてのは?」
「あんま変わらない二択な気もうするけど……ターメリッ君でいいや」
スミスは、ターメリックの案内の元、警察の仕事以外も見て回ることになった。
観光名所や要所、過去の事件のことなどをスミスが聞くこともあれば、全く関係の無い出店のスイーツの話になったりターメリックの思い出話になったり……もはや、警察官一人を贅沢に使った観光である。
「そういや、なんで探偵の真似事なんてしてんだ?」
「真似事ではない。探偵としての免許もあるぞ。事件解決の実績も一応ある」
「ふーん。てっきり外見だけかと思ったよ。特にまったく脱ごうとしない帽子とか、雰囲気づくりのアイテムじゃないかと思っちゃうんだけど」
「何を言うか。この帽子はとってもとってもとっても大事なのですわ。脱げないし置いて行ってもいけませんの。私のとっておきの隠し玉にして切り札が入ってますからね」
「ふーん。……あ、見えてきた。ほら、あれが有名な観光地で……」
そんな二人(と少し離れたところにもう一人)は観光名所以外も行くことになった。スミスの要望とあれば仕方ない、とターメリックは了承したものの、あまり気は進まないようだった。無理もない。案内を頼まれたのは、スラム街だったからだ。
「しかしなんでスラム街なんか……治安も良くないぞ」
「でも今回は警官と一緒だから、大きな問題はそうそうないはずですわ」
「いくら警官が居ても、令嬢とそのメイドが襲われないとは限らないけどね」
「いや……人を襲い慣れてる者は、誰を襲ってはいけないか本能的に解ってるだろうから、夫人さえいれば良かったのかもしれないけど……」
「? それってどういう……」
そんなスミスのボヤキをターメリックが疑問に思っている時、唐突にスミスが走り出した。急な気まぐれ、というやつである。すぐさま背後からウェッソン夫人がターメリックを追い抜いていく。その後に続く様にターメリックが走り出し、なんとかスミスを追いかける。
走りながらターメリックが言う。
「なに? なんだよ!? どうしたってんだよ!!」
「こっちに何かある気がするの!」
気がする、で駆け出してしまうのが、周りの人間の疲労の原因なのだと、ターメリックは自分の息が上がるのを感じながら思った。
ターメリックが駆け込んだ先にあったのは、スラムのさびれた宿が一件あるだけだった。正確には『スラムで勝手に運営している宿の様なもの』だ。だが、そこだけはスラムの荒んだ空気は無く、むしろそこだけが、別の空気を持っていた。
宿には多くの子供たち、おそらくは孤児であろう者たちが集まっていた。泥だらけでもなく、ボロのなかではなかなかまともなもの纏い、子供たちは明るく微笑んでいた。大人たちが陰険な顔を突き合わせる中、この宿の子供たちだけは明るく笑っていたのが、ターメリックには印象的だった。ここだけ、スラムではないかのようだった。
で、肝心の台風の目たる少女は……? と思っていると、ウェッソン夫人の甲高い悲鳴がスラム中に響き、その場所が分かる。何事かと駆けつけるターメリックが見た物は、スミスが子供たちから、なにやら食べかけのご飯を貰って口に運ぼうとしている光景だった。さすがに、スミスも夫人の悲鳴を聞いてそこで停止し、更に悲鳴の効果で子供たちは散り散りに散っていった。(いや、その後の夫人の悪鬼がごとき睨みのせいかもしれないが)
「なんだ。どうした?」
その悲鳴を聞いて、宿の中から男が現れる。無精髭に散切り頭、スラムに居るにもかかわらずこぎれいな風貌。そして、スミスを見て疑問の表情を浮かべながら越しを落とし、スミスに話しかけた。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん。悪いことは言わない。おうちに帰りなさい。ここはなかなか危険だ」
「そうは参りません。ここには人を探しに来たんですの」
「……誰を探しているのか、教えてくれるかい?」
スミスはにやりと笑いながら男へ言った。
「ずばり、この子供たち……『怪盗ダンテライオン』が養う子供たちに会いに来たのよ」
男の表情はすさまじく冷たいものに変わり、そしてすぐに温和な表情に戻った。
「何を言っているんだ。この子たちは『怪盗』なんかに養われてはいない。この子たちは、世の大人共が子育てから逃げた結果、行き場所を失ってしまっただけだ。だから、ここで受け入れている。……正確には『スラムのみんな』に養われている子供たちなのだよ」
男の表情の変化に著しく警戒したターメリックだったが、男が警官以上に警戒したのは、その斜め向かいで佇む、今にも倒れそうなメイドの方だった。そのことにターメリックが気づくのは、翌日の夜まで先のばされる。
「とはいえ、このまま帰すのはあまりにも、だな。『コリアンダー』と『カルダモン』と『バジル』は君の事をもう友達として見ているようだし……そうだな、お客用のお茶を一杯までしか出せないが……そっちの大人のお友達もどうかな?」
最後は警戒心を抱いている大人二人へ向けられてた言葉だった。
ターメリックは警戒心が薄れ、ウェッソン夫人は悪鬼がごとき顔から、眉間に渓谷を刻むほどの表情にまでは警戒が薄れていた。というより、スミスがお茶する気満々の様子だったので、仕方ない、と顔に書かれているのが見え見えであるともいえる。
宿は実に質素だったが、スラムにしてはしっかりとした建物で、掃除も行き届いている。調度品もいくつかそろっている。ある程度の儲けはあるようだ。
「スラムに迷い込んできた貴族やら観光客の駆け込み寺なのさ。だから、ある程度吹っかけても儲けられる。……少々あこぎな仕事であるのは自覚しているさ」
調度品は様々だが、一様に泥だらけだ。おそらく、これらだけは掃除いてないのだろう。壺、燭台、タペストリー、それらをスミスはゆっくりと見て回った。そして満足したのか、
「よし、ウェッソン夫人。ターメリッ君。帰ろう」
そう言い残し、男の名前も聞かずに帰ってしまった。
そして翌日の夜。警戒しきった警察の中に、スミスの姿は無い。署長は激励の言葉を持ってして警官たちを解き放ち、警官たちは今度こそと『怪盗』を探し回る。予告状にて宣告された時間はあと一時間後といったところだ。
「いいか! 今回奴が狙うのは、我が国の国立博物館に貯蔵されし『グリーンダイヤモンド』だ。大きさは鶏の卵サイズ。警備は今なお厳重だが、どこから奴がどういう手口で来るかは分からん。決して警戒を怠るな。今回も奴の仲間がかく乱などをするかもしれない。気を抜くな、現場に近づく影が有れば捕縛するほどの勢いで当たるように! この国立博物館は王族のかつての別荘であられた。そのような場所で盗みを成功させるわけにはいかん。絶対にこれを死守せよ!」
警官たちが緊張の糸を張る中、スミスは悠々とお茶を楽しんでいた。しかも、怪盗が狙う『グリーンダイヤモンド』のすぐ傍で。警戒心ゼロで。警官たちに鬱陶しがられながらで。しかも室内で火を起こしながら。
「すごいなぁ。夜なのにほとんど昼間のように明るくなってるじゃありませんこと。これは興奮を隠せませんわ」
「お嬢様、そろそろ時間にございます」
ウェッソン夫人はスミスのほっぺたに付いたスコーンの欠片を取りながら、スミスを心配そうに見た。
「無茶はなさらないでくださいね。絶対に」
「その言葉、そっくり返しますわ……あなたもね、ウェッソン夫人。スミス子爵を泣かせないように、私たちは無事に事を成しますわよ」
「はい……お嬢様」
ターメリックはその二人の様子を見て首を傾げた。そしてそんなターメリックに気づいて、スミスが意地悪な笑みで言った。
「あ、今は私がスミスなんでしたわ。それはそうと、そろそろ時間ではなくて? 時計を確認していただけるかしら?」
そう言われてターメリックが時計を確認した瞬間、目の前の少女と淑女は姿をくらました。ターメリックが驚きの表情であたりを確認しようとしたとき、警備網の一か所で声が上がる。
「いたぞ! 『怪盗ダンテライン』だ。仲間もいるぞ!」
そして、唐突な発砲音。ターメリックは続けざまに起こったことに驚き、少女と淑女を気にしながらも、同僚の支援にその場を離れた。
『怪盗ダンテライオン』は幾つかの自作道具を持って、今回の盗みを行っていた。まずは人形を乗せた凧を飛ばし、警官に扮した仲間にその人形こそが怪盗であると言わせて注目を集める。そして、殺傷しない程度の発砲で警告し、あとは軽い肉弾戦をもってして警官たちを跳ね除ける。マントに仕込んだ鉄板を使い、警官の放つ銃弾を防ぎ、警棒を防ぎ、そのまま鉄板で殴りつける。
「失礼。先を急がねばならない」
そして優秀と宝石のケースを割り、宝石を抜き取る。警備にあたっている警官がなんとか這って警報のスイッチへ手を伸ばす。警官が勝利を確信しながら押そうとするその手を、怪盗が止める。
「それは止めるべきだな」
だが、警官は咄嗟にもう片方の手を伸ばしてスイッチを押す。……だがなにも起きない。警報の代わりに聞こえたのは、怪盗の苦笑いだった。
「押しても鳴らないと知ったら、絶望してしまうだろう?」
怪盗は警官の手を離し、警官を殴り気絶させてからその場を後にしようとした。その時、けたたましく警報が鳴り響き、署長の怒号が階下より響き、多くの足音が階段を上る音がする。警報装置は切ってあったはずだが、なぜ鳴りはじめたのか……。とにかく、どこかに隠れなければ。変装はナンセンス。天井は前回行った。窓から逃げるという手もあるが今回は難しい。
そんな怪盗の目に飛び込んだのは、カーテンの裏に見える微かな出っ張り。怪盗には見覚えが有った。あれは、カーテンの裏に隠し扉が有る。その隠し扉を閉め忘れてカーテンで隠すと、ああいう出っ張りになる。確証はなかったが一か八かの状態。迷う暇など無かった。
咄嗟に飛び込んだ先は、怪盗の予想では物置だったが、そこは隠し部屋……かつてここが王族の別荘であったころの名残であろう部屋があるだけだった。物置とは対照的に、その部屋はものけの空だった。ただ、部屋の中に少女が居る以外は。
怪盗にはその少女に見覚えが有った。探偵のごとき風貌をした少女……そう、スミスと名乗る少女だ。
少女が言う。
「盗みはうまくいったかな? 『怪盗』さん。いや、スラムの宿屋の主さん」
「……俺をどうしようと言うのかな? お嬢さん」
「何、大人しく捕まってはいただけないかという相談ですわ」
「断ると言ったなら?」
少女は手元に有ったレバーを捻る。すると、部屋の入り口が閉まり、完全な密室になる。怪盗が状況を判断し、レバーに走るも、少女はレバーを渾身の力で体当たりし、曲げてしまう。微かながらも曲がってしまったばっかりに、レバーは大人の力でもうまく動かなくなってしまった。悪態をつく怪盗を前に、少女は怪盗を指さして笑う。
「どうだ! あとは外の警官たちに空けてもらうほかないぞ! 署長にはこの部屋の事は知らせてないから、こうなるともはや部屋から出る方法は無きに等しい!」
怪盗は頭を抱えながら少女に言った。
「今、なんだって?」
「だーかーらー、警官にノックで知らせないと外からは空けてもらえないし、この部屋の存在を知ってるのは元々部屋の警備にあたってた警官だけで……ま、まさか……!」
「その……まさかだ。警官は、気絶してる」
「ノックアウト!」
慌てはじめる少女を前に怪盗も慌てる。
「いやまて、俺の仲間ならきっと部屋に気づくはずだ」
「あー……それ無理ですわ」
「なに? どういうことだ?」
少女は恐る恐る、目線を逸らしながら言った。
「ウェッソン夫人がただのメイドなわけがないじゃありませんの……」
「……まさか」
「そのまさかですわ。あのご夫人は射撃の名手。スカートを武器庫にして私の後を付いてきた、近辺警護の者ですの。一般人でいかに腕が立つとはいえ、ご夫人の前では塵芥レベルですわよ」
落ち着きを失い始めていた怪盗へ少女は「殺しはしないようにと釘は刺したと付け加えた」怪盗は軽い感謝の言葉を述べて、右へ左へ歩き回ったあと、腰を下ろして少女へ話しかけた。
「それで、どうして俺だと思ったんだ?」
「あら、諦めが早いですのね。良いですわ。話しましょう」
元々、スミスは怪盗が警察関係者であることを予想していた。だが、現職の警官ではないだろうことも予想していた。現職の警官でないにもかかわらず、警備の話を耳に挟むことができる。ということは、ある程度業績のある人物だろうと目を付けたのは、署長室のトロフィー置場。その中にスミスは、名誉警官賞を受けた警官が居た事を見ていた。そして、警官たちにその名誉警官賞を受けた者がどうしたのかを聞き、居場所を突き止めてスラム街の宿へ。宿でかるく鎌をかけるも、反応はいまいち。だが宿の中の様子を見て確信する。宿は丁寧に掃除が行き届いていた。きっと子供たちが掃除しているのだろう。だが、調度品は一切掃除がされていなかった。つまり、子供たちには『怪盗であること』は隠しているのだろう。特に、かすかに一部だけ汚れが取れている調度品が有ったのが予想を確信へと変えていた。隠し部屋へ至る仕掛けが調度品に扮しているということなのだろう。ということから、この宿の主人こそが怪盗、あるいはそれに準じる人物であるという事だ。後は来るのを待てばいい。警報を切るであろうことは予想に難しくなかったので、『凧に乗って怪盗が来た』という時点で、火災報知機を作動させる。あとは、部屋に誘い込むだけ。
「ま、まぁ、何とかなりますわ……きっと夫人が見つけて……くれるかしら?」
「おいおい……」
涙目になりはじめる少女を他所に、怪盗は半ば同情し始めていた。
「スミスちゃん! そこにいるかい? スミスちゃん! 聞こえたら返事をしてくれ!」
突如、部屋に響くくぐもった声。ターメリックだ。
その声に少女は返事し、ドアへと走り寄る。すると、隠し扉のドアが開く。
それを合図に怪盗が走り始める。少女がややリードしていたが、そのまま扉を潜ろうとせず、突如少女が立ち止る。みれば、帽子が落ちてしまったようで、それをに気づいて振り返る。怪盗は行きがけの駄賃とばかりに帽子を拾い上げる。
その瞬間、怪盗はなにやら驚きの表情を見せる。
「これは! ま、まさか!」
その一瞬の隙をついて、少女が帽子と同時に怪盗のマントの端を掴んで、怪盗が部屋を出るタイミングで部屋に戻り、部屋のドアを閉める。
結果、怪盗はドアにマントを挟まれ、警官たちの前に身動きできない状態で押し出され、御用となった。
後日、件のスミスと名乗っていた少女が警察署へ現れる。留置場に入れられていた怪盗へ面会を行い、その本来の姿をさらした。それは、煌びやかな純白のドレス姿。王室警護の兵士を幾人か引き連れ、その頭上には王冠を冠していた。男は少女……王女に対して言う。
「驚きましたよ。まさか、探偵帽の中に王冠が入って入るとは思っていませんでしたから」
「でしょうね。しかし、いついかなる時でも王冠を被ってかねば、とウェッソン夫人が口うるさかった結果のことですわ。……本当は皆の前で帽子を取って、反応をうかがいたかったのですが……仕方ありませんわね」
怪盗と王女はお互いに笑いあった。そして、怪盗は少し押し黙り、そして、姿勢を正して言った。
「お願いがございます。王女さ……」
「いいでしょう」
正確には言おうとした。
「まだ何も……」
「いいえ、だいたいわかってますわ。まずはあなたの釈放ね。次に、孤児たちやスラムの方々の生活に梃子を入れませんと。それに、警官の汚職も全然消えていませんの。これらを見る為にも、お忍びはやはりやめられませんわ」
怪盗はかなわないなとばかりに笑ったが、王女は背後に控えるウェッソン夫人の羅刹のごとき気配に笑うことができなかった。
申し訳ありません……
締切から約21時間オーバーってどういうことなの?
ともあれ
後書きを長々書く余裕も無いのでサクッと参ります。
元のプロットでは取り込まれ方RVMMO物を書く予定でした。しかし、ワードのエラーのおかげでまっさらになってしまったので、一気にリアル系に変更。
結果、かすかなどんでん返し成分を含む半熟作品が完成したわけです。
うん
土日忙しい時は、早めに書きましょう
こまめなセーブを致しましょう
これは痛感した…… orz
ここまでお読みいただきありがとうございました
追記:
あ゛!
宝石を偽物と入れ替える場面を入れ忘れた!