刺客対蟹型&貝型2
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「うーん、すこしせんりょくがこころもとないかな?」
水責めにあっている五人を見ながら、アスティアはそう言った。
「あのカニさんのあわと、カイさんのしんじゅって、どういうものなのかなっと、《かいせき》」
アスティアは、疑問にたいしてすかさず《解析》を発動させた。
吸捕泡
蟹型が発生させた、吸収捕獲用の泡。この泡は、あらえる物質をその中に取り込み、捕獲する。この泡は、その弾力性により中からの攻撃などを外に出さない。逆に、外からの攻撃などはその特殊な透過性によって、素通りさせる。この泡を破壊する場合は、泡全体に圧力をかけなければならない。
水真珠
貝型が生み出した、水が原料の真珠。おもに、貝型の遠距離攻撃武器として用いられる。この水真珠の大きさは、原料の水の量および、圧縮率によって変化する。水真珠は、貝型から離れた後、しばらくすると水に戻る。
「うーん。これだと、カイさんのほうはともかく、カニさんのほうのはちめいてきかな?」
たしかに、外にいるのはルベル一人だけ。他の五人は、全員捕われの身。影達と比べて、戦力的な開きがあり過ぎる。これだと、全滅するのも時間の問題か?貝型が、水真珠を散弾から砲弾サイズにもどせば、下手すれば一撃。蟹型にしても、吸捕泡に外からの攻撃を透過する特性があるいじょう、ハサミの一撃を加えればそれまで。
全滅フラグが少なくとも、二つは立った瞬間である。
「やっぱり、ぼくがだしてあげたほうがいいのかなぁ?ここでぜんめつされると、つぎがためせないし、どうしよっかなぁ?」
次が試せない?アスティアは、いったい何を試すつもりなのだろう?というか、次ということは、すでに何かを試した後なのか?
アスティアの言動は、ここに来てから怪しいものばかりである。
「だぁー!どうすりゃいいんだよ!?」
ルベルは、頭を掻きむしりながらそう喚いた。
だが、それも仕方がないだろう。この状況を、どうやったらルベル一人で覆せるのだろうか?
ルベルが喚いている間も、蟹型と貝型の攻撃は続いている。蟹型の泡は、ルベルに向かって吐き出されているし、貝型の真珠は他の仲間達にばらまかれている。
刻一刻と、時間ばかりが過ぎていった。
「だあー。もうやけだ。《真空斬》!」
何かを吹っ切ったルベルは、新たなスキルを発動させた。
ルベルは、剣を四方に向けて振り撒くった。その結果、剣を振った先に幾つものカマイタチが発生した。
「わぁっ!?」
「きゃっ!?」
ルベルが発生させたカマイタチは、大半が蟹型と貝型に向かっていったが、幾つかは空中のブラオン達の傍を掠めていった。
あれだけばらまいていて、一人も当たらなかったことが驚きである。
「ちょっとルベル!もうちょっと考えてやりなさいよ!」
「俺には、他に遠距離攻撃スキルがないんだから、しかたないだろう!」
「そういう問題!」
「じゃあ、他に俺にどうしろって!」
そんな感じの言い合いが、それからも続いた。
そして、その間もルベルが《真空斬》を使い続けた結果、状況が動くことになった。
ヒュッ! ザッ バンッ!!
ルベルの攻撃を受け続けた泡が、一斉に弾けたのだ。
「「「「「えっ!」」」」」
ルベル達は、揃ってその光景に驚いた。
ただし、割れたのはあくまでルベルのスキルを受け続けた泡だけ。ブラオン達が入った泡は、今だ健在である。どうやら、割れた泡はルベルの《真空斬》の衝撃で全体に圧力がかかったようだ。
これで彼らが脱出するめどをつけられるだろうか?
「ちょっとルベル。あんた今何やったのよ!?」
「い、いや。俺は普通にスキルを使ってただけだぞ」
「たしかに、僕達にもそう見えた」
「だが、ルベルの攻撃でこの泡が破裂したのは事実だ」
「けど、その理由がわからないよ?」
「そうだな。だが、この泡が破壊可能であることは確認出来た」
「・・・(コク)」
「じゃあルベル。もう少しスキルを使い続けてみてくれ!」
「わ、わかった!」
ルベルは、言われたとおりにスキルを発動させた。
他の五人は、その様子を観察した。
「うん?これって・・・」
しばらくして、ユウが何かに気がついたようだ。
「ユウ。何かわかったのか?」
「うん。たぶんだけど、この泡には許容量があるみたいだよ」
「許容量?なんでそんなことがわかったんだ?」
「あの泡が、ルベルの《真空斬》を受けて割れるまでの回数を数えてみたんだ。そしたら、全部同じ回数で割れてた。たぶん、僕達の泡の方も、その許容量を超えれば割れると思う」
「じゃあ、適当に攻撃すればいいのか?」
「たぶん、それでなんとかなると思う」
「よし。それでいってみよう。みんな、やるぞ」
「「「「おう!」」」」
泡の中の五人は、それぞれ泡に攻撃を開始した。
これなら、アスティアが介入する必要はなさそうだ。
パンッ!パンッ!ドボン!
彼らの攻撃を受けた泡が、次々に弾けていった。泡が割れると、水真珠の水とブラオン達が、海に落ちていった。
蟹型と貝型は、彼らのその様子を認識すると、浜辺への移動を再開した。
そして、彼らが移動している間に、ルベルは海に落ちた仲間達を救出した。
「おい、全員大丈夫か?」
ルベルは、心配そうに仲間達に聞いた。
「なんとかね。でも、酷いめにあったわ」
「たしかに。けど、ルベルのおかげで泡の割り方がわからなかったら、そんなことも言えなくなってたよ」
「そうだな。あのままだったら、確実に溺れるところだった」
「・・・(コク)」
「てっ、そんな場合じゃないよ!」
「おっと、そうだった。全員戦闘準備!」
「「「「「おう!」」」」」
助かった彼らは、生還を喜びあった。そして、蟹型と貝型を迎え討とうと準備を始めた。
「けどさ、どうやってあいつらを倒すんだ?」
ルベルは、戦闘準備をしながらそんな疑問を口にした。
しかし、それも無理はないだろう。亀型一体でも苦労したのだ、二体も相手に出来るのか、疑問である。普通に考えれば、かなり難しいだろう。
「それなら、たぶん大丈夫よ。少なくとも、あの貝みたいなのはどうにか出来ると思うわ」
「その根拠は?」
「簡単よ。あの亀モドキの時は甲羅が邪魔だったけど、あの貝モドキの方は、攻撃の時に中身を露出させてたでしょう?あれなら、私の全力攻撃をぶち込めば、たぶん倒せるわ!」
「・・・たしかに、それならいける、のか?」
ルベルは、ウ゛ェールの説明を聞いて、そう返した。
「とりあえず、駄目もとでやってみるわ」
「ウ゛ェールがそれで貝型を倒すなら、僕もちょっとあれを試してみようかな?」
「ユウ、何か策があるのか?」
「うん。ウ゛ェールが貝型を倒せるのが前提条件だけど、少し試したいことがあるんだ」
「そうなの。じゃあ、私も張り切ってあの貝モドキを仕留めるわね」
「頼むよ、ウ゛ェール」
「任せなさい!」
こうしてウ゛ェールは、貝型を始末する準備を開始した。




