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刺客対亀型2

あれからしばらくの間、ルベル達は亀型に吹き飛ばされ続けた。


「だぁー、いい加減にしろ!」


ツルツル ドォーン!


ルベルが文句を言ってもどうにもならなかった。


なんせ、ルベル達の方は潤滑水の影響で、満足に立つことも出来ず、武器も握れない有様である。


それにたいして亀型の影は、潤滑水を上手く利用して浜辺を滑りまくっている。亀は普通鈍重なイメージがあるが、この亀型はそんなことは知ったことかとばかりに、軽快に移動していた。


「どうすりゃいいんだよ!」


「この水さえ落とせれば、戦えはすると思うが・・・」


「それよ!ユウ、水魔法でこれを洗い流してちょうだい!」


「わ、わかった。水よ、この地に降り注げ《ウォーター》!」


ウ゛ェールに指示されたユウは、慌てて水の魔法を発動させた。


すると、亀型の時と同様に空中から水が降り注ぎ、ルベル達の全身に付着していた潤滑水を洗い流した。


「これで大丈夫なはずだ」


「よっしゃあー」


潤滑水の効果が無くなったルベル達は立ち上がり、落としていたそれぞれの武器を拾って構えた。


「いくぞ!」


「おう!」


前衛であるルベルとアスルの二人が、亀型に向かっていった。


潤滑水が流されたことにより、亀型はイメージ通り鈍重になっていたので、向かって来るルベル達への対応が、先程と同じ速さでは出来なかった。


「GUGYA」


亀型は、ゆっくりと言える速度で前脚を持ち上げ、ルベル達を踏み潰そうとした。


「さっきみないにはいかないぜ」


しかし、ルベル達はその亀型の攻撃を難無くかわした。そして、その隙をついてルベル達は攻撃を仕掛けた。


キィッン!


が、ルベルの剣とアスルの槍は、亀型に触れるとあっさり弾かれた。


「かってえ~」


「あの竜の子供が言っていたとおり、たしかにかなり硬いみたいだな」


「ああ、どうする?」


「通常攻撃が効かないならしかたない、スキル攻撃に切り替えるぞルベル」


「おい、それでいいのかよ?いつもスキル攻撃を多発しないように、俺に言うのはお前の方だろうアスル?」


「それはお前が必要もないのにスキルを使うからだろうが。だが、今回はそんなことを言っている場合じゃない。派手にやっていいぞ、ルベル」


「おっ、しゃあー!それならバンバン使わせてもらうぜ。喰らいな化け物。《大裂斬》!」


「こちらもいくぞ化け物。《一点突き》!」


ルベルとアスルは、亀型に通常攻撃が効いていないのを見ると、すぐにスキル攻撃に切り替えた。


ガキィーン!ズザ


ルベルの《大裂斬》と、アスルの《一点突き》がそれぞれ頭と前脚に命中した亀型は、今度は後ろに一歩下がることになった。


ノーダメージからは、一歩前進したようである。しかし、それでもダメージが微々たることにはかわりはなかった。

「GUGYAAA!」


亀型は、そのことで少し警戒したのか、再び潤滑水の発射モーションに入った。


「させるか!火よ、彼者を焼き尽くせ《ファイアー》!」


亀型のその動きを見たユウは、すかさず火の魔法を亀型の甲羅目掛けて放った。


ドォーン! ジュウウ


ユウの放った魔法は、狙い違わず亀型の甲羅に命中した。そして、その魔法をもろに受けた潤滑水は、あっという間に蒸発した。


「ナイスだユウ!ブラオン、ウ゛ェール、ブラン、お前達も大技をこいつに叩き込んでやれ!」


「僕には、そんな大技はないんだけどなぁ。まあ、出来るだけやってみるか。いくよ、《一点打ち》!」


「任せなさいよ!巻き上がれ、風矢 Level4!」


「・・・貫け、風刃閃」


ルベルの号令に従って、後衛の三人も攻撃を始めた。


バチン! ヒュウーン! ヒュヒュ! ズドォーン!!!


まず最初にブラオンの鞭が亀型の頭部に命中した。


亀型は、頭を揺らしながら後退した。


すると、そこにウ゛ェールの風の矢が飛んできた。風の矢は亀型に命中すると、解けて旋風を巻き起こした。


それに煽られた亀型はバランスを崩した。そして、風の矢が完全に解け切る瞬間、一番強い風が発生した。


その風を受けた亀型は、なんと僅かに宙に浮かび上がった。


そして、そのタイミングでブランが投げた風のナイフが亀型に命中した。


宙に浮かび上がっていた亀型は、その風のナイフが命中した結果、盛大にひっくり返った。



「よっしゃあー!これで終わりだ亀野郎!」


ルベルは、その亀型の様子にガッツポーズをした。他の仲間達も、亀型がひっくり返ったことを喜んでいる。



「う~ん、もうだめそうかなぁ」


その様子見たアスティアは、亀型の敗北かなぁっと思った。


GUGYAAA!!


「あれっ?」


しかし、亀型はひっくり返っただけでは終わらなかった。


アスティアの見守る中、亀型は最後の悪あがきを始めたのだ。


実際になにをしだしたかというと、先程までは空中に発射して、広範囲にばらまいていた潤滑水を、甲羅から直接地面に流し始めたのだ。甲羅から一気に流し出された潤滑水は、津波のようになって周囲のものを押し流した。


「うわっ!?」


「なっ!?」


亀型のすぐそばにいたルベルとアスルは、もろに潤滑水の津波をくらい、押し流されていった。


「《障壁》!」


亀型から少し離れた位置にいたユウ、ブラオン、ウ゛ェール、ブランは、ユウが無詠唱で展開した障壁で潤滑水の津波をやり過ごした。


「ルベル、アスル、大丈夫か?」


「だ、大丈夫だ」


「同じく」


津波がとおり過ぎると、ブラオンは二人の安否を確認した。


「そうか。よかった」


二人の安否が確認出来たブラオンは、胸を撫で下ろした。



「へぇー、カメさんがんばるね。けど、そろそろカメさんもおわりかな?もうそろそろじゅんびをしておこっかな?」


亀型の悪あがきを見たアスティアは、そう言って何かの準備を始めた。


次に動かす影でも選んでいるのだろうか?


「うまくいくといいな。そうしたら、リッチのおじいちゃんのいいおみやげになるし」


どうやら、クラニオに関係する何からしい。しかし、ここでどんなお土産が手に入るのだろう?



「とっととドドメを刺すぞ、お前ら!」


「「「「「おう!」」」」」

アスティアが、何かを準備している間も浜辺では戦闘が続いていた。


しかし、亀型がひっくり返ってからの戦闘は、もうパターンかしてしまっていたが。


なぜなら、亀型にはもう潤滑水で津波を起こすことしか出来なくなってしまったからである。ルベル達は、ユウの張った《障壁》で津波を耐え、津波がおさまったらすかさず亀型にスキル攻撃と魔法を叩き込むことを繰り返したのだ。そしてとうとう、亀型に必殺の一撃を叩き込むところまでこじつけた。


「《大裂斬》!」


ルベルは、剣を振り上げ、ひっくり返った亀型の腹の部分におもいっきり振り降ろした。


「《一点突き》!」


アスルは、亀型の右前脚に向かって槍を突き出した。


「炎矢 Level3 集束」


ウ゛ェールは、最初にアスティア達に向かって放った以上の熱量を放っている炎の矢を、亀型の左前脚に向かって放った。


「《一点打ち》!」


ブラオンは、全力で鞭を亀型の頭部に叩きつけた。


「求めるは災厄の業火、全てを灰燼と化す炎をここに《メガファイアー》!」


ユウの発動させた炎の魔法が、亀型の両後脚に向かって発動された。


「・・・《雷刃閃》」


ブランは、雷のナイフを亀型の尻尾目掛けて投擲した。


彼らの攻撃は全て狙い違わず、亀型の身体に命中した。


「GUGYAAAA!!!」


その攻撃を受けた亀型は、最後に絶叫して沈黙した。


「やった?やったぞー!」


「おっしゃあー!」


沈黙した亀型を見たルベル達は、一瞬本当に倒せたのかと思ったようだが、亀型が完全に動かない様子を見て、亀型を倒したことを実感したらしい。すぐさま歓声を上げ、勝利を喜びあった。


こうして、最初の戦いはルベル達の勝利で終わった。



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