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影達と情報

~ミカエル対ユウ、ウ゛ェール、ブランサイド~


ピキィ ピキィ


「なんだこの音?」


エル君は、どこからともなく聞こえて来る音の出所を探して、辺りを見回した。


「この音はまさか!」


「ええ。間違いないわ」


「・・・(コク)」


そんなエル君の様子とは裏腹に、刺客達は何かを思い出した様子で顔を憎悪に歪めた。


私は、この音とそんな彼らの様子を見て、彼らがこれから何が起こるのか知っているのだと判断した。


そして私は、今回何が出現するのかに思いをはせた。最初は四足獣型。次が紐状型と鳥型。次はいったいどんな姿の影が出て来るのでしょう?


私は、面倒なタイプではないことを心の底から願った。


ピキィ ピキィ パリーン!!


私が敵のことを考えていると、とうとう空間が割れた。


ドォーン!ドォーン!ドォーン!ドォーン!


そして、五つの影がファブルの森に降り立った。


私は、その影の型。姿を確認した。


ただ、すぐにその影達の脅威を感じず、場違いな感じを得ることになった。それは何故かというと、その影達の姿が、あまりにも森の中で浮いていたからだった。


その姿というのは、まず一つ目の影から順にこうなっている。


一つ目の影の姿は、まず胴体は楕円形。次に上の方に二本の突起が伸びていた。そして、胴体からはハサミ状の腕が二本と、複数のカクカクした脚が伸びていた。シルエットクイズ風に見ると、蟹型の影である。


二つ目の影の姿は、まずは縦に伸びた太い胴体。次に、先端部分から伸びた細長い何かが二本。そして、こちらも胴体の真ん中から少し上ら辺に、ハサミ状の腕が二本ついている。その腕のしたからは、いくつもの細長い何かが無数に生えていた。そして、胴体の末端は二つに別れて三角形になっている。シルエットクイズ風に見ると、ザリガニ。いえ、ロブスター型の影である。


三つ目の影の姿は、波打ったような凸凹のある、厚みのある楕円形の形をしていた。観察していると、真ん中の部分が開閉し、上下した。シルエットクイズ風に見て、先程動作を考えに加わると、貝型の影である。


四つ目の影の姿は、太い胴体に鰭のような三角形の腕?がついている。そして、頭部にあたる部分からは鋭い突起が突き出していた。足元からは、薄い板のようなものが突き出していた。シルエットクイズ風に見ると、ペンギン型の影である。


そして最後に五つ目の影は、厚みと横幅のある胴体。そこから伸びる各部位。シルエットクイズ風に見ると、亀型の影である。


シルエットからの推察になりますが、五つとも海産物型の影に見えるのは気のせいでしょうか?


私は、影を順に見直した。蟹、ロブスター、貝、ペンギン、亀。ペンギン型は海産物ではない気がしますが、他は全て食料系の影ですね。あの空間の向こう側は、海にでも繋がっていたのでしょうか?


私は、影達のラインナップからそんな想像をした。


「なんだアレ!?」


エル君の口からも、そんな言葉がもれた。


「行くわよ二人とも!」


「わかった」


「・・・(コク)」


私とエル君が出現した影達を見ていると、近くで別の動きがあった。


今までエル君と戦っていた刺客達が、エル君に背をむけて影達に向かって走り出したのだ。


「「えっ!?」」


私とエル君は、突然そんな行動にでた刺客達の姿を、呆然と見送った。


「いくわよ、雷矢 Level 1 連」


「雷よ、集いて我が敵を撃ち貫け!《雷撃》」


「・・・(雷刃)」

刺客達は、走りながら影に向かって攻撃を仕掛けた。


緑色の女の子ウ゛ェールは、先程エル君に放った矢の雷版を、影達に向かって雨と降らせた。


黒い少年ユウは、雷の魔法を発動させた。生み出された雷は、影達に向かって直進した。


白い女の子ブランは、雷を纏ったナイフを複数影達に向かって投擲した。


ドスン!


刺客達の攻撃が影達に迫った時、亀型の影が一歩前進した。


ピカッ!バリバリ!!


刺客達の攻撃は、その亀型から順に命中していった。そして、命中後土煙が辺りを覆った。


「倒せた?」


「やったか?」


「・・・(じっ)」


刺客達は、攻撃の命中を確認し、どうなったか結果を待っている。


「えっ!?」


「嘘だろう!?」


「・・・(がたっ)」


少し時間が経つと、土煙が晴れた。しかし、そこには無傷の影達が存在していた。


「なんでよ!たしかに当たったはずよ!?」


「ああ、たしかに命中したはずだ」


「・・・(コク)」


「まさか!」


刺客達は、その影達の様子が信じられるず、頭を振った。が、すぐに緑色の女の子、ウ゛ェールが何かに気ずいたようにこちらを振り返り、エル君を見た。


どうやらあの子は、あの影にエル君のような、特定属性の無効化能力がある可能性を思いついたようですね。


「ええっと、そういうことなのか?」

「たぶん違いますよ」


エル君の方もその可能性に思い到ったようですが、おそらく違いますね。


「「「「えっ!」」」」


「あの影達の別タイプとは、一ヶ月程前に戦ったことがあります」


「「「「ええっ!」」」」


私がそう告げると、エル君と刺客達から驚きの声が上がった。


「その時の戦いでわかったことですが、あの影達の防御力はかなりのものなんです。それがどれくらいのものかといいますと、バジリスク形態のお兄さんの攻撃で、やっとダメージが入るくらいでした。なので、今の攻撃で無傷なのは、単純な火力不足が原因だと思いますよ?」


「そんなっ、バリュクスさんが竜形態で戦うほどの相手なんですか!?」


「バジリスクって、あの上位竜種の!?」


「竜の攻撃でやっとダメージって!?」


「・・・(カッ!)」


エル君の方は、お兄さんとも当然面識があるらしく、そのお兄さんが竜形態で戦ったことに驚いていた。そして刺客達の方も、あの影達がバジリスクと戦ったことに驚いていた。それと同時に、状況の悪さが理解出来たようで、みな一様に深刻な表情になっていった。


「サラさん」


「なんですか、エル君?」


「参考までにお聞きしますが、その時バリュクスさんが戦った影の特徴は、他に何かありますか?」


「影の特徴ですか?それですと、ここに来る前にアイティリア様にいただいた情報も合わせますと、こんな感じですね」


1.空間の割れる音と一緒にどこからともなく現れる。


2.奴らが出現する場所付近には、異世界のもの(転移者・転生者・漂流物など)が存在している確率が高い。(別紙被害報告書参照)


3.奴らの姿は、基本的に実体のある影のような感じである。


4.その影達は、この世界の生物に類似した姿のものもいるが、全く未知の姿をしたものも確認されている。


5.影達の戦闘スタイルなどは、その影の姿に依存するが、必ず一つは固有のスキルらしきものを持っていることは共通している。(詳細については、別紙影との戦闘記録参照)


6.影達を倒す方法は、今のところ影の防御を突破出来る高火力攻撃(現在出現した影達共通で、最低でも竜より少し劣るクラスの攻撃力が必要)か、石化攻撃などによる封印・拘束が有効である。(詳細は、別紙影対応マニュアル参照)


7.影達の強さは、姿でまちまちであるが、基本的にその高い防御力で攻撃を防ぎ、物理・魔法・スキルで攻撃してくる。ただし、体力や攻撃力については防御力程ではない。ピュシス共生王国の戦闘記録では、相手の防御力を突破出来る攻撃を、三回程度受けたら倒れる程度の体力しかない。攻撃能力の方も、岩を砕く程度の通常攻撃、下級スキルクラス、下級魔法クラスなど、広範囲を一掃するような高威力・高火力の攻撃は確認されていない。


8.影達が倒れると、空間に再び亀裂が入り、影達の残骸が吸い込まれる。石化・拘束状態の影が回収?された事例は今のところ無し。


9.影達の同型かつ、固有能力が違うものが出現した例が多数確認されている為、影達は複数存在する種族である可能性有り。


「こんなところでしょうか?」


「結構いろいろわかっているんですね」


「そうですね」


私は、私の話に聴き入っているエル君にそう言った。


「へぇー」


「そうなんですか」


「・・・(コク)」


何故かエル君と一緒に私の話を聞いていた刺客達がうんうん頷いていた。


「じゃあ、・・・」


ふっ


頷くのを止めた緑色の女の子、ウ゛ェールが私に何か言いかけたが、唐突に姿が掻き消えた。


「「えっ!?」」


私とエル君は、慌てて周囲を見回した。すると、他の刺客二人も消えていた。さらに視線をさ迷わせた結果、離れた場所にいた刺客達と影達も消えていた。


この場所には、もう私、エル君、リルちゃん、マスターの四人しか残っていなかった。


他の者達の姿は、完全になくなっていた。


「アスト!」


エル君がマスターのもとに行こうとした。私も、リルちゃんを連れてそちらに向かおうとした。しかし、それをマスターは手で制した。私とエル君は、マスターのそれに首を傾げた。


次にマスターは、こちらに向かって手を振り、刺客達や影達と同じように掻き消えた。


「サラさん、ティアが!?」


エル君は、驚いたようで私に詰め寄って来た。


「いえ、大丈夫ですよエル君」


「大丈夫って、ティアが消えたんですよ、サラさん!?」


「いえ、消えたのではなく、転移したようです」


「転移ですか?」


「ええ。おそらく、刺客達や影達もアストに何処かに転移させられたのでしょう」


「では、ティア達は何処に?」


「それは私にもわかりません。しかし、空間転移が出来るアストなら、無事に帰って来ますよ」


「そう、ですね。そうだといいです」


エル君は、そう言うとマスターが消えた場所に視線をやった。


私やリルちゃんもそちらに視線を向け、マスターの帰りをその場で待つことにした。



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