アスティア対刺客
~アスティア対ブラオン、ルベル、アスルサイド~
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「ありゃりゃ、ミカくんとはなされちゃった」
アスティアは、自分と反対側にいるミカエルを見ながらそう言った。
「竜の子供。本来君は私達のターゲットではない。しかし、王子の殺害を邪魔するのなら、排除する」
ブラオンが、気が進まないといった表情でそう言った。
「それはぼくのセリフだよ。ミカくんをいじめるわるいひとたちは、ぼくがおしおきしてあげるよ」
「悪い人達か。たしかにそうだな」
「「ブラオン」」
ルベルとアスルの二人は、ブラオンのそんな自嘲気味な言葉に微妙な顔をした。
「じゃあいくよ」
そう言うとアスティアは、上昇を開始した。
「ブラオン!」
「わかっている!」
上昇したアスティアを見たルベルは、すぐさまブラオンに呼びかけた。ルベルに呼ばれたブラオンは、それに応えてアスティアに向かって鞭を振るった。
「えっ!?」
「よし、捕まえた!」
ブラオンが振るった鞭は、上昇していたアスティアの胴体に巻き付いた。
「それ!」
ブラオンは、鞭を一気に引いた。
「わっ!?」
鞭を巻き付けられた状態で鞭を引かれたアスティアは、地面に向かって真っ逆さまに落ちた。
ドォーン!
そして、アスティアは地面に叩きつけられた。
「よし!」
「やったか?」
「いや、まだわからん」
そう言ったアスルは、アスティアが叩きつけられた辺りに近づいて行った。
「いない?」
しかし、アスルが行った先にはアスティアの姿は影も形もなかった。
「おい二人とも、竜の子供がいないぞ!」
「なんだって!?」
「今たしかに落ちただろう?」
アスルの言葉を聞いたブラオンとルベルの二人は、慌ててアスルのそばに駆け寄り、アスルが見ていた場所に目を向けた。
「あ、本当にいないよ」
「いや、ちょっと待て。あれを見ろよ!」
ルベルはそう言うと、ある一点を指さした。
「何か見つけたのかよルベル?」
「こ、これは!?」
ルベルが指さした場所にアスルとブラオンは視線を集中させた。そして、ブラオンはルベルが指さしたものがなんであるかわかった。
そう、ルベルが指さした先。アスティアが叩きつけられた地面跡には、何かの穴が空いていたのだ。
「これは、竜の子供はここから逃げたのか?」
「たぶんそうだろう」
「しかし、あの竜の子供はこれから何をするつもりなんだ?地面の中から私達を襲うつもりなのか。それとも、王子の加勢に行くつもりなのか?」
アスルは、アスティアの次の行動を考えはじめた。
「「うーん?」」
他の二人も、一緒に考えはじめた。
「せいかいは、まえのほうだよ。《グラビティー》」
「「「え?」」」
三人が頭を悩ませていると、地面からアスティアのそんな言葉が聞こえてきた。
「「「ぐうっ!?」」」
その声と同時に、三人は何かに押し潰されるように地面に倒れ込んだ。そして倒れ込んだ後も、徐々に身体が地面に減り込んでいった。
「なんだこれ!?」
「ふふふ。ちょっと、じゅうりょくをつよくしただけだよ」
ルベルの驚きの声に、アスティアは律義に応えた。
「じゅうりょく?なんだそれは?」
ブラオンは、重力という言葉に首を捻った。それも仕方がないだろう。彼の国では、この力のことは重力と呼ばないのだから。
「おいちょっと待て。この力を重力と呼ぶってことは、お前は・・・」
アスルは、アスティアに疑問をぶつけた。
「ざんねんだけどハズレだよ。ぼくは、アンサラーのいうてんいしゃでもなければ、てんせいしゃでもないよ」
アスティアは、アスルの疑問の答えを先取りして答えた。
「「「なっ!?」」」
アスティアの答えに、三人からは驚きの声が上がった。
「くす。そのようすだと、ききたかったことはあたりみたいだね」
「なんで。なんでそんな言葉を知っているのに、転生者とかじゃないんだよ!?」
「だってこれは、アンサラー。ほんからえたちしきだもん」
ルベルの言葉に、アスティアはそう返した。
「そのアンサラーという書物はいったい?」
「アンサラー?それってたしか」
ブラオンがアンサラーという本に疑問を持ち、アスルはアンサラーという名称に引っ掛かりを覚えたようだ。
「おいアスル!お前は、そのアンサラーというやつのことを知っているのか!?」
ルベルは、アスルのその様子に反応した。
「いや、アンサラーという本については知らない。しかし、アンサラーという言葉は、漫画なんかで見た記憶がある。たしか、答えるものとかそんな意味の外国語だったはずだ」
「せいかいだよ。アンサラーのなまえのいみは、おうとうするものだからね」
アスルの口から、おかしな内容が出て来た。そして、アスティアは彼の言葉に答えを告げた。
「つまり、そのアンサラーという書物は、ルベル達の世界の物なのか?」
ブラオンが、ルベル達を見ながらさらにおかしなことを言った。
「断定は出来ないが、その可能性はあると思う」
「けどさ、うんな名前で、転移者とか転生者とか書いてある本って、文庫か漫画だろう?」
「おそらくはそうだろうな」
「なんでそんな物がこの世界にあるんだよ?」
「それは現状、わからない」
それからも、刺客の三人はいろいろ言い合った。
「《マッドマーシュ》」
ズズ ズズ
「「「うん?なっ!?」」」
彼らが言い合っているうちに、アスティアが新たな魔法を発動させた。すると、彼らの足元の地面がぬかるみ、彼らの身体が地面に埋まり始めた。彼らは、それを見て慌てて手足を引き抜こうとしている。しかし、彼らの身体は《グラビティ》による重力の影響もあり、どんどんぬかるんだ地面に沈んで行く。
「ばかだねぇ、きみたちって。てきであるぼくがあしもとにいて、ぼくの《グラビティ》をうけているのに、のんきにはなしこむなんて。けど、おかげでつぎのまほうがつかえたよ。ありがとう」
アスティアは、無邪気にそう言った。
実際のところ、アスティアの言うとおりである。敵の術中にあるのに、話しこんでいる場合ではなかった。
ブラオン、ルベル、アスルの頭の中では、そんな後悔が頭を過ぎった。
「させるかよ!《地壊剣》!!」
後悔したのは一瞬。ルベルは持っていた剣を地面に突き刺してスキルを発動させた。
ドォーン!!
ルベルがスキルを発動させると、ぬかるんでいた地面が吹き飛んだ。それと同時に、《グラビティ》と《マッドマーシュ》の影響下にあったルベル達の身体も、ぬかるんだ地面と一緒に吹き飛ばされて宙を舞った。
「どわー!」、「くっ!?」、「なっ!?」
ドカ!
そして、いくばくかの時間宙を滞空した後、ルベル達の身体は硬い地面に叩きつけられた。
「ぐはっ!」 「ぐふっ!」 「があっ!」
地面に叩きつけられた彼らからは、そんなうめき声がもれた。
「ル、ルベル!何を考えているんだお前は!」
「あの状況で他にどうしろっていうんだよ!!」
アスルとルベルは、そんな感じのことをしばらく言い争った。
「おい、二人ともそんな場合じゃないだろう!」
そんな二人を、ブラオンが仲裁しようと頑張っている。
「ふふふ。またよそみをするの?」
ばっ!
そんな彼らに、どこからともなくアスティアのそんな言葉が聞こえてきた。
彼らは、慌てて周囲を見回した。そして、空中に浮かんでいるアスティアを見つけた。
「くすくす。ぼくがいくらてかげんしているとはいっても、きんちょうかんがなさすぎるね、きみたちって」
アスティアは、笑いながらそう指摘した。
「「「うっ」」」
アスティアの指摘に、彼らは三人とも顔を赤くした。
「うん?手加減?」
そうこうしていると、アスルが何かに気づいたようで、不意に顔を上げた。
「まさかお前、さっきから手加減してたのか!?」
「うん!そうだよ♪」
アスルのその言葉を、アスティアは肯定した。
「なっ、なんだと!?」
「手加減?あれで手加減してたっていうのか!?」
アスルとアスティアのやり取りを聞いたルベルとブラオンから、驚愕の声が上がった。
「だって、きみたちをたおすだけなら、じょうけんせっていをいじったけっかいでいちげきだもん」
アスティアは自信満々にそう言い切った。
「それはどういう・・・」
ピキィ ピキィ
アスルがアスティアに質問しようとしたちょうどその時、不吉な音が彼らの耳に聞こえてきた。




