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おでかけと森

「それじゃあ、そとにいこうよ!」


私達がいくつかの案を出し合っていると、マスターがそうみんなに提案した。


「外にですか?」


「うん!せっかくミカくんとリルちゃんがいるんだもん、たまにはおそとでみんなとあそびたいよ!」


「たしかに、アストは普段は外で遊びませんものね。二人はどうですか?」


私は、どうするかエルくんとリルちゃんに尋ねた。


「わたしも、おそとにいってあそびたい!」


リルちゃんが勢いよくそう言った。


その様子が少し気になったので、エルくんに目で問い掛けた。


「その、やはり初代勇者王の系譜に連なっていると、危険なことがそれなりにあるので、僕達はあまり外で遊べないんです」「ああ、初代勇者王の孫ということは、普通に王族ですものね」


だから、マスターの誕生日を祝いに来たこの機会を活かして、外で遊びたいということですか。


「いいのではないですか。ここには今、アステリア様とアイティリア様もいることですし」


たとえ誰かがエル君達を襲撃して来たとしても、返り討ちにあうのが落ちでしょうしね。いえ、アステリア様達が助けに来る必要もないかもしれません。


私は、この一ヶ月のマスターの成長を思い、そんなことを考えた。


「そうですね。あのお二人が近くにいるのですから、少しぐらいなら問題は無いでしょう。それじゃあみんな、外に遊びに行くということでいいかい?」


「うん!」「はーい!」「構いませんよ」


エル君の確認に、それぞれが返事をした。


「それでは、外のどこで遊びましょうか?」


「そうですねぇ?この都市の中と、都市の外。どちらが安全性が高いかにもよりますね」


「都市の外?普通でしたら、都市の中の方が安全なのでわ?」


「まあ、王族の僕としてはそうあってほしいところなんですが、現実はそうでもないんですよね」


「どういうことですか?少なくとも、私がアストとお出かけした時に見た感じでは、平和そのものでしたよ?」


まだ二回しか外に出かけたことはありませんが、その途中で見たこの都市の治安は良さそうでした。


「ええ、うちの国そのものについては安全なんです。ただ、国外から怪しい連中がそこそこ侵入しているというのが問題なんですよ」


「侵入って、そんなに簡単にこの国に入り込めるのですか?」


「入るだけならばわりと簡単ですよ」


「入るだけなら?では、出る時は?」


「ほとんどの侵入者が、この国から外に出ることは二度とありませんね」


「二度とないのですか?それって、この国が危険なんですか?」


何か国の暗部とかあるのでしょうか?


「いえ、詳しくは話せませんが、侵入者が馬鹿で間抜けなだけですよ。うちの国はそれほど腐敗していませんし、戦争が大好きっていうような危ないお国柄でもありませんから」


「それはよかったです」

マスターの住んでいる国は、平和であってほしいですからね。しかし、こんな小さな子供に馬鹿で間抜け呼ばわりされる侵入者達って、いったいどんなのでしょう?


「それじゃあ、まちのそとでいい?」


私達がそんなやり取りをしていると、マスターがそう言ってきた。


「そうですね、街中が危険なら他の人を巻き込まない為にも、外に行く方がいいでしょう」


「じゃあ決まりですね。では次に目的地ですが、どの辺で遊びましょうか?」


「リルちゃんはどこがいい?」


エル君がそう言うと、みんな目的地を考え始めた。そして、マスターはリルちゃんにそう言った。どうやらマスターは、リルちゃんの好きな場所に行くことにしたようですね。


「うーんと。・・・そうだ!わたし、さいきんアスくんがおでかけしたところにいってみたい!」


リルちゃんはリルちゃんの方で、マスターに目的地を委ねましたか。いえ、この付近の地理に明るくないでしょうから、妥当な判断だともいえますか。


「ぼくのおでかけしたところ?」


「うん!」


「それでしたら、ファブルの森ですね」


「ファブルの森というとたしか、この都市から歩いて30分程度の場所にある、森林公園みたいなところだったか?」


私が言った場所についての記憶を引っ張り出すようなしぐさをしながら、エル君がそう言った。


「ええ、そのファブルの森です」


「あの森には危険なモンスターなどはいなかったはずですから、そこにしましょうか?」


その認識は、一ヶ月前だったら微妙に間違いでしたね。なんせ、危険な捕食型植物達がうようよしていましたから。もっとも、この一ヶ月の間にファブルの森にいた捕食型植物達は全てアズゥンが回収しましたけど。


「わたし、そこにいきたい!アスくん、わたしをそこにつれていって!」


「う、うん。まかせてよ、リルちゃん」


私達の話を聞いていたリルちゃんが、マスターに詰め寄った。詰め寄られたマスターは、多少驚いていたがすぐに了承した。


「じゃあ、すぐにとぶね」


「とぶ?」「飛ぶ?」「跳ぶ?それってまさか!?」


「《くうかんちょうやく》」


私達三人が、マスターの言葉に疑問を抱いている間に、マスターは空間跳躍の魔法を発動させた。


魔法が発動したその瞬間、私達四人の姿は部屋から消失した。


そして次の瞬間には、私達四人は幾多の木が立ち並ぶ森の中に立っていた。


「リルちゃん、ここがさっきはなしたファブルのもりだよ!」


「え?え!」


「なんだこれ、一瞬で部屋の中から外に?」


マスターがこの場所がどこか説明しているが、リルちゃんとエル君は状況の変化についていけず、絶賛混乱中のようだ。


「アスト」


「なあに、サラ?」


私は、マスターに近づき声をかけた。


「アスト、こういう突飛なことをする時は、事後ではなく事前に説明しないと駄目ですよ。ほら見てください、二人とも混乱しているじゃないですか」


私は、今だに状況が掴めていない二人を手で示しながらそう言った。


「あ、うん、わかった。これからはちゃんとせつめいしてからするよ」


マスターは、二人の様子を見て、状況を理解してくれたようで、肩を落としながらそう言った。


「そうですよ。間違っても、失敗しても、反省して次に活かせればいいんですよ」


「うん!」


それから私とマスターは、二人が落ち着くのを待った。そして、二人が落ち着いたタイミングを見計らって、あらためて現状を説明した。


「アスくんすごい!こんなまほうがつかえるんだ!」


リルちゃんが、私達の説明を聞いて目をキラキラさせながらそう言った。


「たしかにすごいですよこの魔法!僕でもこんな魔法が存在しているなんて、今まで知りませんでした!」


エル君の方も、先程までの歳に似合わない落ち着きはなりを潜め、リルちゃん同様に目をキラキラさせながらそう言ってきた。


「えっへん!」


たいして、二人にそう言われたマスターは、得意になっていた。やはりマスターの年頃の子供は、他人に褒められると嬉しいものなんですね。


私は、三人の様子を傍から見ながらそんな感想を抱いた。そしてしばらくの間、マスターは二人の質問攻めにあうことになった。


ある意味自業自得ですので、私はその様子を黙って見守った。


「おっといけない、アステリア様達に連絡を入れておかなければ!」


私は、現状をアステリア様達に伝えておかなければいけないことに思い至り、早速お二方に念話で連絡を入れた。


すると、お二人は普通にこちらの現状を把握しておられた。そして、私は三人の子守をおおせつかった。


私はそれから何度かやり取りをした後に念話を切り、騒いでいる三人を見ながらこれからの予定を立てはじめた。



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