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来客と再会

『私』は、この一ヶ月の回想を終了させると、マスターに視線を向けた。


マスターは、今日は亜空間などには行かず、ずっと家で『私』を読んでいる。それはなぜかというと、今日は家に誰かがやって来るからだそうです。マスターは、さっきからずっとそわそわしています。早く今日来る相手に会いたいのでしょうね。


コンコン


遠くからこんな音が聞こえてきた。


「は~い!」


マスターは、その音が聞こえるとダッシュで部屋から出て行った。


『あっ、マスター!』


マスターにおいて行かれた『私』は慌てて浮遊し、マスターの後を追いかけた。


『マスター。私を置いて行かないでくださいよ』


『私』は、マスターに追いつくと開口一番そう言った。


「ごめん、ごめんアンサラー」


マスターは、『私』がそう言うと何度も謝った。


『もう、そんなにお客様に会いたかったのですか?』


「うん!あっ、そうだ。アンサラーにしょうかいするね、ぼくのおばあちゃんたちだよ」


マスターはそう言って正面にいる二人を手で示した。


『私』は、マスターの示した先にいる二人に意識を向けた。


『私』が意識を向けた先には、銀髪金眼で二十代前半くらいの優しげな美貌をした女性と、紫がかった夜色の髪と銀色の眼を持つ、二十代前半くらいの怜悧な美貌をした女性が立っていた。


『へぇー、マスターが待っていたのは、マスターの御祖母様達でしたか。えっ!・・・』


そして、『私』は目の前にいる二人を見て絶句した。何故なら、そこにいた二人は『私』が良く知っている人物達だったからです。


『ア、ア、アステリア様!!それにアイティリア様も!!』


そう。そこにいたのは、『私』の製作者であるブックメーカーの娘様と妹様だった。


「あら、アンサラーではないですか。お久しぶりですね」


アステリア様は、古い知り合いに会った感じで話かけてこられた。


『は、はい。お久しぶりでございます、アステリア様』


「何をそんなに緊張しているのだ、アンサラー?」


アイティリア様が、『私』の様子を不思議そうにそう言われた。


『も、申し訳ありません。ここ最近はお二方や、その同格の方々とはお会いしていなかったので、緊張してしまいまして』


「ああ、そういうことですか。ですが、そんなに緊張することはないのですよ。だって、あなたは私達の古い知り合いなんですもの」


アステリア様が、『私』の緊張をほぐすようにそう言ってくだされた。


「そうだぞアンサラー。私達のような存在にとって、古い知り合いというのは、何物にもかえがたい物なのだからな」


アイティリア様も、アステリア様と同意見のようで、そう言ってくだされた。


『あ、ありがとうございます。アステリア様。アイティリア様』


『私』は、お二方のその言葉に感激し、そのまま少しの間感動し続けた。


「そういえばアンサラー。先程少し気にかかったのですが、確認しても良いですか?」


『はっ!は、はい。なんでしょうアステリア様!』


「先程アスティアのことをマスターと呼んでいましたが、この子と契約したのですか?」


『は、はい、アステリア様。一ヶ月ちょっと前にこの家でマスターと出会い、契約いたしました』


「一ヶ月前ですか」


アステリア様は、『私』の答えに何かを考え始めた。


「アンサラー」


『私』がアステリア様の様子を見ていると、アイティリア様から声をかけられた。


『は、はいなんでしょうかアイティリア様?』


「その一ヶ月の中で、変わったことはなかったか?」


『変わったことですか?』


「そうだ。変わったことなら何でもいい。何かなかったか?」


アイティリア様の質問に、『私』はこの一ヶ月間を振り返った。そして、二点ほど思いついた。


『たぶんですが、二点ほどあります』


「二点もか!それで、その二点というのはどんなことだ?」


『一つ目はマスターのことです』


「アスティアの?」


アイティリア様は、『私』の横でじっと『私』達の話を聞いているマスターを見た。


『はい。マスターの能力に、違和感というか、私の情報と齟齬があるのです』


そう言うと『私』は、この一ヶ月間でマスターについて思ったことをアイティリア様に話した。


『というわけなのですが、どう思われますかアイティリア様』


「そのことについては、心配しなくてもいいですよアンサラー」


『私』がアイティリア様に聞いていると、何かを考え込んでおられたアステリア様がそうおっしゃられた。


『どういうことでしょうか?』


「その理由は簡単だ、アンサラー。アスティアの能力と、お前の情報とに齟齬があるのは、私達がアスティアに施している封印と偽装が原因だからだ」


『封印と偽装ですか?』


お二人のことを考えると、マスターの能力や属性が偽装されていることは理解出来ます。しかし、マスターの何を封印しているのでしょう?『私』は、マスターの何を封印しているのか、皆目見当がつかなかった。


「そうです。アスティアは、私達の因子を強く受け継いでいたのです。ですから、安全の為に分別がつく年齢になるまで力を封印しています」


「封印の内容についてはおいおい教えてやろう。まあ、アスティアのことは今は気にするな」


『はあ、了解いたしました』


「それで、二つ目は何のことについてだ?」


『二つ目はですね』


『私』は、四足獣型、紐状型、鳥型の影についてお二人に話した。


「ああ、やっぱりあなた達のもとにも出現していましたか」


「そのようだな」


『やっぱり?お二人は、あの影についてご存知なのですか?いえ、それは愚問というものでしたね』


『私』は、お二方の言葉で一瞬疑問を抱いたが、お二方がどういう存在かを思い出して、すぐにその問い掛けが間違っていることに気がついた。


「勝手に納得しているところ悪いがアンサラー。私達もアレが何かは把握していないぞ」


『え!何故です?お二人だったら、それくらいすぐに調べがつくでしょう?』


『私』は、純粋に疑問に思い聞いた。


「たしかに、調べようと思えば調べられますよ。けれど、私達の方も能力はかなり制限していますから、全てを把握する為には一度制限を解除しなければなりません。しかし」


「別にそこまでするほどの事態だとは私達は思っていないからな」


『ああ、そういうことですか』


『私』は、お二方の言葉に納得した。たしかにあの影達のことなど、お二方にとっては瑣末な問題ですものね。ですが、それでは先程の質問の理由は何でしょう?


『では、何故先程はやっぱりと言われたのですか?』


「それはだな、ここ最近その影が異世界の存在のもとにそれなりの頻度で出現しているのだ」


『ここ最近ですか?それに異世界の存在?』


「ええ。具体的に言うと五年ほど前からでしょうか?」


「そうだな。それと異世界の存在というのは、そのままの意味だ。転移者に転生者。それから異世界からの漂着物などだ」


『ああ、なるほど。だから先程やっぱりと言われたのですか。しかし、私は異世界の存在扱いですか』


「あの影達が何を基準にしているかは不明ですが、たぶん世界の境界を越えた存在のもとに出現しています」


「お前は先程の話だと、一ヶ月ほど前にこの世界に来たのだろう?」


『はい。前の世界からこちらの世界に来て、マスターと契約しましたので、それで合っているはずです』


「ふむ。そうなると、アスティアの安全確保の為に細工をしておく方が良いな」


『私』が答えると、アイティリア様は何事か考えてそうおっしゃられた。


「そうですね。さすがに一ヶ月程度で三体から襲撃されたのは頻度が今までの事例よりも多いですしね」


『私としましても、マスターの安全第一が良いです』


『私』達三人は、マスター第一でそれからも話を続けた。



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