一ヶ月と成果
あの日から一ヶ月近くの時が流れた。いよいよ明日は、マスターの誕生日だ。『私』は、時間があっという間に流れたなぁっと、思った。そして、この一ヶ月間を振り返ってみた。
マスターは、お姉さんとお出かけしたあの日からは外出することはなく、ずっと家にいた。ただし、亜空間や潜影研究所にはちょくちょく遊びに出かけていた。そして、遊びに行った先でオウ゛ェール達と遊ぶだけではなく、アズゥンやクラニオに教師役をしてもらって、魔法の練習などもしました。クラニオまでがマスターの教師役をしてくれたのは少し意外でしたが、二人の授業風景は実の祖父と孫とのやり取りのようで、心暖まる光景でした。これがアズゥンの方だと、保育園の新人の先生と園児のような光景になりましたね。まあ、マスターの年齢を考えるなら、わりと普通でしょうか?もっとも、この世界に保育園などあるのかわかりませんので、実際のところはわかりませんけど。感想はこの辺にして、授業内容などについても再確認しておきましょうか。まずはアズゥンからは空間魔法について習っていますね。マスターは筋が良く、メキメキと上達して空間魔法のレパートリを増やしていっています。このままの修得スピードでいけば、既存の空間魔法を極める日もすぐですね。もっとも、既存の魔法を極めたからといって、そこで終わりなわけではありません。基礎の部分を押さえた後は、自分の好みでアレンジを加えたりして、魔法を発展させていくことになるでしょう。マスターがどんな魔法を生み出すのか、今から楽しみですね。
『私』は、その時のマスターのことを想像して、思わず笑みをもらした。
・・・ああ、他の魔法についても忘れてはいけませんね。
『私』は、しばらくぼうっと未来に思いをはせた後、他の魔法についても再確認した。
空間魔法以外の魔法ですと、クラニオから教えてもらっている氷魔法や闇魔法などがありますね。こちらについては、対応する属性を持っていないので、空間魔法ほどの成果はでていませんでしたね。氷魔法だと、マスターの拳大の氷を生み出せる程度でした。属性を持っていないわりには結構いい感じだと思いますが、並列で練習しているスキルの、氷雪生成で生成した氷の方が大きいんですよねぇ。魔法として使い道があるのかというと、正直微妙なんですよね。出来るなら、今度は氷属性を持つ誰かと心結契約をして、氷属性を手に入れたいですね。氷属性が手に入れば、魔法の方も使い勝手が良くなるでしょう。また、もう一方の闇魔法についても似たようなことが言えますね。こちらも、氷魔法と同じで空間魔法ほどの成果はでていないんですよね。もっともこちらについては、氷雪生成のようにスキルを持っているわけではありませんから、氷魔法よりは需要がありますか?
『私』は、そんなことを考えたが、やっぱり使い勝手は微妙な気がした。なにせ、現在マスターが使用可能な闇魔法は、光を遮る《遮光》と呼ばれる魔法だけ。はっきり言って効果が微妙です。その上、こないだエトガルの中で収穫した果実中に、同じ効果があるものが存在しています。さらには、空間魔法でも遮光くらい出来るので、はっきり言って使う機会がありません。こちらも、属性が手に入ればもう少しマシになるでしょうかという感じですね。というか、せっかくなのでマシになってほしいです。
そして、最後に『私』が直接マスターに教えた魔法ですね。これは、マスターの残りの属性に対応したものでした。火・地・時・水・木・刻・命の計八属性。もっとも、こちらの魔法については実演する術者がいなかったので、『私』が表示した情報を参考にマスターが自力で頑張った形ですけどね。でも属性があったので、氷魔法や闇魔法に比べると実用的なレベルではあります。さて、成果の確認に移るとしましょう。
まずは、火魔法についてですね。火魔法については、何故かファブルの森の時同様、基本の《火種》の魔法さえ成功していないんですよね。ただ、試しに薦めてみた熱関係の魔法は修得出来ました。火が出せないのに、熱が出せるのは何故でしょう?
そう疑問に思ったが、すぐに予想が出来た。
たぶんですが、反属性の氷魔法を練習していることと、熱関係の効能が手持ちにあるからでしょう。
次に地魔法についてです。こちらも火魔法と同じで、土の一欠けらも出せないんですよね。本当、原因は何でしょう?
・・・とりあえず今はおいておきましょう。さて、地魔法はたしか重力関係の魔法を修得してましたね。これについては、納得が出来ます。まあ、普通は順番が逆な気もしますが。マスターが重力関係の魔法を修得出来た理由は、対応する効能と属性を持っているからですね。具体的にいうと、浮力・加重・引力・斥力の四つの効能と、空属性・時属性ですね。効能については、まんま重力関係の内容です。そして、空属性と時属性が関係ある理由は、重力の特性に理由があります。重力には、その圧力が強くなると空間を歪曲させる特性と、その圧力が最高潮に達するとブラックホール化する特性があります。このブラックホールの中では、時間の流れが通常空間とは違います。この二点が二つの属性と関係があることですね。
次は木魔法についてです。もっとも、木魔法って木を操作したりする魔法なんですよね。ですが、マスターは植物を使役出来ますから、手持ちの果実に関する魔法を修得程度が現状ですね。内容としては、《品質向上》とか《品種調整》などですね。最近のマスターは、これらの魔法と品種改良などのスキルを併用して、手持ちの果実の食用化なども行っています。結果が出るのにどれくらいかかりますかね?
次は水魔法についてです。こちらも、火魔法と土魔法同様水が出ませんでした。ので、火魔法と地魔法の状況を参考に、間接的な効果の魔法をマスターに薦めました。具体的に言うと、《霧》や《湿気》、などの魔法ですね。やっぱり水魔法もそういう間接的な魔法は成功しました。
次は時魔法についてです。こちらは、《思考加速》を常時使っていますので、他の追随を許さない速さで修得していっています。新しく覚えた魔法としては、《身体時間加速》や《精神加速》などですね。
次は、刻魔法についてです。こちらについても、時属性の派生属性なので魔法修得スピードがかなり早いです。具体的に修得した魔法を上げると、各種状態変化魔法ですね。この刻属性は、任意対象に任意の状態を刻む魔法が主流です。そのせいか、魔法の種類がやたらと豊富です。直接攻撃する魔法は少ないですが、毒や麻痺などのバットステータスを与える魔法に、傷などの欠損を直す回復・修復魔法。肉体の体内物質の濃度や性質を変化させる肉体強化魔法。たいていの世界で無属性に分類されている魔法が目白押しです。マスターの持つ果実を効能再現すれば似たようなことは可能ですが、こちらの刻魔法の方が自由度が高いので、状態異常関係はこちらに集中して覚えてもらいました。
そして最後に命魔法です。この魔法は、名前のとおり命を生み出すことが主な魔法効果です。こういうと倫理的にどうかといった風に思いますが、内容としてはそうでもありません。科学世界ならともかく、魔法世界ではわりとよくある現象を引き起こす程度の魔法ですからね。さて、具体的にどんな魔法をマスターに覚えてもらったかというと、こんな感じですね。《動物形成》、《魔物形成》、《幻獣形成》、《精霊形成》などです。この《形成》というのがポイントです。命魔法は、《コア》(魂核)という魔力集積体を形成し、その《コア》に器を与える魔法です。この手法は、ダンジョンマスターがモンスターを生み出す時に発生する現象や、世界からモンスターが生まれる時の現象と酷似しています。ですので、命魔法で誕生した生命体にも同じような性質があります。まあ、これについてはまだマスターに詳しく説明していないので、今はいいでしょう。
こうやって振り返ってみると、この一ヶ月はマスターにとってかなり濃密な期間だったことがわかる。これからマスターがどうなっていくのか楽しみです。
『私』はそう思った後、この一ヶ月の回想を終了した。




