説明と裏側
『私』は、ドレインソーンのこと。インテラント達やアルケミィーソーンのこと。紐状のことや、マスターが試練をクリアしたことなどを、一通りエトガルに話して聞かせた。
『そちらはそちらで、苦労したのだな』
『私』が話終わると、エトガルはしみじみとそう言った。
『そうですね。ドレインソーンがいなければ、今ここにいることは出来なかったでしょう』
ドレインソーンがいなければ、マスターの現在の戦闘力では、紐状型も鳥型の影も倒すのは不可能だったでしょう。そうなると、最初の紐状型でマスターがやられるか、鳥型からエトガルを救出出来ず、この世界からの脱出が不可能になり、この世界に封印されたのと同じここになったはずです。どちらの場合でも、ゲームとかならバットエンド扱いですね。もっとも、それはゲームだったらの話ですけどね。マスターが死んでしまっても、その魂は『私』の中に回収すれば後々復活させられます。エトガルを救出出来ずとも、いずれはブックメーカーの手で事態は解決されます。ただ、どちらも時間がかかるので、死なないにこしたことはありませんけどね。
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アンサラーには、所有者が寿命以外の理由で死亡した時、所有者を復活させる義務が存在する。もっとも、所有者を復活させる為には、《アンサラーアンサー》を使用する方法がメインなので、魔力チャージにかなりの期間が必要となる。ちなみに、現在のアスティア=ドライトを復活させる為に必要な魔力をチャージするのに用いる期間は、このコスモスの時間軸でおよそ一千年である。
そして余談だが、エトガルがブックメーカーによって救出されるのは、今回の場合だとエトガル内の時間軸で二千年後になっていた。これは、エトガルからのエマージェンシーコールがブックメーカーに届くまでにようした時間である。■
『ふむ。その可能性は大いにあるな。しかし、ドレインソーンがそんなことになるとはな』
『そうですよねぇ。私も、進化して紐状型の影に対抗出来ればいいという程度の浅い考えでマスターに提案してしまったのが、あんなになってしまってビックリしました』
『私』は、アルケミィーソーンの姿と能力を思い浮かべながらそう言った。
『我は言葉でしか想像出来ていないが、そんなにすごいのかアンサラー?』
『ええ。とてもすごいことになってますよ、エトガル。なにせ、本来のドレインソーンの進化後は、移動能力を得ることと身体能力が僅かに上昇することを除けば、進化前とたいして変わらないはずなのに、今回の場合はアルケミィーソーンという完全な新種になっていますからね』
『私』は、ドレインソーンとアルケミィーソーンのデータを引っ張り出して、その二つを比較してみた。
ドレインソーン
危険度★★★
広域指定危険植物
属性 木・命
スキル・アビリティー
情報変換・経験値貯蓄・ドレイン
アルケミィーソーン危険度 測定不能
危険種指定 現在無し
属性 火・地・木・命・刻
スキル・アビリティー
情報変換・調合・刷り込み・経験値貯蓄・竜化・品種改良・生命体変換・ブレス・花粉散布・芳香・射程距離上昇・ドレイン
二つのデータを比べてみると、その差は明らかだった。
属性も、スキルとアビリティーもかなり増えている上、その内容もかなり特殊だった。というか、何故アレがこうなったのか不思議でならなかった。
ドレインソーンが精製する進化エネルギーは、誰にでも使用可能ではあった。しかし、それは裏を返せば効果が一律一定だということでもある。なのに、その効能を再現して発動したマスターの《効能の視線》の結果が、あんなことになったんでしょう?
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そうなった理由は、視覚領域内の魔力では効果が発揮出来なかった為、アスティアが無意識に自分の魔力で代用したのが原因である。これが周囲の魔力で足りていれば、ドレインソーンはアンサラーが言った姿に順当に進化していた。ただし、その場合はドレインソーンは紐状型の影に倒されることになっていただろう。順当な進化では、明らかな力不足であった。ちなみに、アルケミィーソーンへの進化は、通常だと不可能である。急激な変化に肉体が耐えられないのだ。そもそも、進化というのは長い時間をかけて、ゆっくりと行われるものだ。あらかじめ進化の為にエネルギーを蓄える特性のあるドレインソーンとはいえ、それはあらかじめ進化の手順が決まっている為出来ることなのだ。その手順から外れるということは、モンスターとはいえ、生物としての姿を保てなくなる可能性は十分にあった。では何故、今回は進化に成功したのかというと、原因はやはりアスティアの魔力特性によるものである。アスティア自身はヒューマンであるが、魔力の方は先祖の種族特性を全て引き継いでいるのだ。具体的にいうと、父親の竜種としてのバジリスクの特性に、父方の祖父のモンスターとしてのバジリスクの特性及び、父方の祖母の竜種としての■■■■の特性。母親の幻想種としてのフェニックスの特性。母方の祖父の星霊種としてのフェニックスの特性及び、母方の祖母の■■■種としての■■■ヒューマンの特性が含まれている。
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竜種というのは、星のエネルギーが半物質化した者達のことをいう。この星のエネルギーとは、地脈や水脈などの星の中を循環しているものを指す。
幻想種というのは、星に刻まれた記憶が実体化した半精霊や、知性体の空想(思念)が魔力、又は類似したエネルギーに方向性を与えた結果、偶発的に世界に発生した存在のことを指す。
星霊種というのは、精霊の上位存在のことをいう。通常、世界には火・水・風・土などの属性を筆頭に、様々な分野を担当する精霊が存在する。星霊種というのは、その様々な精霊達を星に配置したり、世界のバランスを調整・管理する存在である。星の意思を聞く巫女や巫者としての役割も持っている。
■■■種というのは、それぞれの■■となった者達であり、やがてそれぞれの■■が行き着く先にいる者達である。▲
竜種バジリスクの特性は、物質を鉱物に変換することである。(例・木を石にする)この能力は、本人が解除可能である。
モンスターバジリスクの特性は、有機物を石に変えることである。(例・人間を石像にする)この能力は、本人が任意に解除出来ない。
竜種■■■■の特性は、魔力などを調和させることである。(例・複合属性魔法や複合スキルなどの負担軽減)
幻想種フェニックスの特性は、物質の復元・再生・恒常性である。(例・血を飲んだ者を不老不死にする)
星霊種フェニックスの特性は、物質への時間干渉である。(例・灰から若返って復活する)
■■■種■■■ヒューマンの特性は、環境適応及び、高い親和性である。(例・あらゆる存在と子供をつくれる)
今回アルケミィーソーンの進化の為に発揮された特性は、内四つである。
まずは、■■■種■■■ヒューマンの魔力特性が他の特性が効果を発揮出来るように親和性を向上させた。次に、竜種■■■■の魔力特性により、アスティアとドレインソーンの魔力を調和させた。そして、発揮された《効能の視線》による進化を、幻想種フェニックスの魔力特性で補助した。具体的に言うと、進化の過程で何かが欠損した場合は復元を行い。何かが傷ついたら再生を行った。また、進化の過程で有用なものがうまれると、恒常性を与えて保護した。そして、進化結果に致命的な問題があった場合は、星霊種フェニックスの時間干渉で安全域まで引き戻し、トライ&エラーを繰り返した。
その結果、ドレインソーンはアスティアの魔力からかなりの数の有用な部分を引き継ぎ、アルケミィーソーンへと進化を果たした。これがアルケミィーソーンへの進化を果たしたタネである。というか、普通はこんな進化は不可能である。なんせ、一回の進化で何の不備も無い存在になるなど、確率論の段階で0がいくつ並ぶかわからないような感じだ。■
『私』は、しばらくの間アルケミィーソーンになった理由を考えたが、答えはでなかった。しかし、エトガルに聞き忘れていたことがあったのを思い出せたので、エトガルに聞くことにした。
『エトガル』
『なんだ、アンサラー?』
『先程聞くのを忘れていたことを思い出しました』
『聞き忘れ?何のことをだ?』
『それは・・・』
『私』は、聞き忘れていたことについて説明した。




