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エトガルとお仕置き

『さて、これで大丈夫なはずです。試しに何か考えてみてください』


スィームルグに術式を施した『私』は、術式を受けた身体のあちこちを調べているスィームルグにそう頼んだ。


『わかりました。それでは、先程のダムについて考えてみます。・・・おお!これはすごいです!ちゃんと知識が出て来ましたし、頭も痛くありません』


スィームルグは、嬉しそうに翼を広げ、そう言った。


『問題は無いようですね』


『私』の方も、スィームルグのその様子を見て嬉しくなった。やっぱり、何事も喜んでもらえると嬉しいものですね。


その後は、術式の動作確認をあれこれ実施した。それなりの時間を費やした結果、とくに問題が無いことが確認出来た。それがわかった後は、術式の便利機能などの説明と実験をしばらくの間行った。


『むうっ』


『私』達がそんな風にいろいろ試していると、何処からかそんな思念が聞こえて来た。


『うん?』


何かと思い、周囲に意識を向けてみると、マスターの傍に一冊の本が浮いていた。どうやら、エトガルが目覚めたようだ。


これで、ようやくエトガルの中から出られます。しかし、中断する権利は間接契約で得ていましたが、今回のようにエトガルがダウンしていても外に出られるようにしていなかったのは失敗でした。まあ、あの時点ではエトガルの暴走の危険しか心配していなかったので、しかたありませんけど。ですが、一度起きたことにはちゃんと対応しないといけません。その辺りの権限についても、エトガルと話し合いをしないと駄目ですね。まあ、それは外に出てからにするとしましょう。まずは、マスターが寝ている内に、先程の状況についてエトガルに説明してもらいましょうか。


『エトガル』


そう考えた『私』は、エトガルに声をかけた。


『むうっ。・・・ここは何処だ?』


『私』の言葉に反応したと思ったら、エトガルは辺りをキョロキョロ見出した。


どうやら、状況がわからずに混乱しているみたいですね。


『エトガル』


『ここは何処だ?あれはどうなった?まだ何処かにいるのか?』


『私』が再度呼びかけたが、エトガルは気づいていないようだ。


『エトガル』


『むう。いったい今はどうなっておるのだ?』


『私』は、三度目の呼びかけをしたが、無視された。


ブチッ!!


『私』の中で、何かが切れる音がした。


それと同時に、今まで成り行きを見守っていたガーデンスライムとスィームルグが、全速力で『私』から離れていった。


後から二人に話を聞くと、『私』はこの時、周囲に膨大な力と圧力を振り撒いていたそうです。


しかし、『私』はそのことは一切気にならず、目の前で『私』を無視したエトガルに意識を集中させた。そして、無意識に周囲に撒き散らしていた力を自身に集約させていった。


この時、アンサラーの様子を見たガーデンスライムとスィームルグは、慌ててエトガルの下にいた寝ているアスティアを回収して、亜空間に逃げ込んだ。■


そして、『私』は自身のフリーページ(白紙)を開き、集約した力を意味のあるものに変換して、そのフリーページに表示していった。あるものは点。あるものは線。あるものは図形。あるものは絵にと、次々に変換してページの余白を埋めていった。程なくして、フリーページの余白が全て埋まり、フリーページには精緻な魔法陣が描き出された。


『さあ、エトガル。お仕置きの時間です。これでも喰らいなさい!《アンサラーアンサー》(応答する者の答え)!』


『私』が魔法名を宣言すると、フリーページの魔法陣が輝き、描き出されていた魔法が発動した。


発動した魔法陣からは、七色の光がそれぞれ空中に向かって飛び出し、七色の光は飛び出したその先で新たな魔法陣を描いていった。そして、新たに描かれた魔法陣からは再び七色の光が飛び出して、空中に魔法陣を描き出した。その工程を何度も繰り返し、最終的には『私』達の上空を中心に、一キロ四方の空を埋め尽くす、虹色の輝きを放つ立体型魔法陣が完成した。


立体型魔法陣が完成すると、魔法陣は回転と明滅を始めた。それは少しづつ、けれど確実に回転と明滅のスピードを早めていった。そして、そのスピードが最高潮に達したその時、エトガルに向かって魔法が発動した。


『むうっ、なんだ?』


エトガルがようやく頭上の魔法陣に気がついたようだ。しかし、すでに回避するには遅かった。魔法陣から放たれた魔法効果がエトガルに直撃し、エトガルの姿がその場から掻き消えた。


掻き消えたエトガルは、魔法陣の中心に出現した。


『な、なんだここは!?』


いきなり虹色の空間に飛ばされたエトガルは、自分の周囲に渦巻く膨大な力に驚愕した。


『いや、待てよ。この力の波動は?まさか、アンサラーの《アンサラーアンサー》(応答する者の答え)か!!』


エトガルは、周囲の力の波動から、自分の今の状況を理解したようだ。


『マ、マズイ。これがそうだとすると』


状況を理解したエトガルが、慌てて逃げようとしている。が、360度。全方位を押さえられている現状では、逃げるのは不可能だ。


そしてついに、魔法陣からの魔法攻撃が始まった。


エトガルの周囲に広がる、無数の七色の魔法陣からそれぞれの色の魔法弾がエトガルに向かって発射された。赤い魔法陣からは炎弾が。青い魔法陣からは水弾が。黄色魔法陣からは雷弾が。橙色の魔法陣からは石弾が。緑色の魔法陣からは風弾が。紫色の魔法陣からは闇弾が。白い魔法陣からは光弾が、それぞれ発射された。それらは立体型魔法陣内の空間を埋め尽くし、エトガルに殺到した。


ドォカ~ン


そして狙い違わず全弾エトガルに命中した。


この魔法を喰らったエトガルは、白い煙に包まれながら立体型魔法陣の外に落ちて行った。


ちなみに、この《アンサラーアンサー》(応答する者の答え)という魔法、各種属性魔法弾を隔離した対象に問答無用でぶち込むような魔法ではない。この魔法の本当の効果は、アンサラーの答えを魔法にすることである。どういうことかというと、この魔法は魔法で引き起こされる結果がアンサラーの意思で変わる魔法なのだ。具体的には、対象とした相手にたいするアンサラーの答えを効果にしている。つまり、攻撃・回復・強化・弱体化など、あらゆる効果を発揮可能な万能タイプの魔法なのだ。ただ、こういうと応用性や利便性が良さそうに聞こえるが、実際のところはそうではない。はっきり言って、応用性はともかく利便性は皆無なのだ。理由は簡単だ。アンサラーから発生したこの魔法は、魔法陣が発生する毎に魔力を消費するのだ。その結果、望む効果が複雑になるとすぐに魔力切れを起こすことになる。今回の魔法弾のような単純な効果でも、かなりの魔力を消費しているという事実がある。具体的には、通常の同数の魔法弾の魔法と比較すると、およそ十倍以上の魔力が消費されている。この為、この魔法は効果と魔力の費用対比がまったく釣り合っていない。


さて、ではアンサラーはその燃費の悪い魔法をどうやって発動させたかというと、アスティアから拝借したのである。寝ているアスティアは、回復と森林浴の効果により、常時魔力回復状態となっている。なので、余剰魔力を少しづつ拝借してこの魔法に使用しても問題がなかったのだ。もっとも、主から魔力を無断拝借するのはどうかと思ったが。アンサラーの倫理感が心配になった。■


エトガルは、真っ逆さまに大地に落ちた。


『私』は、その様子を黙って見ていた。


そして、『私』はエトガルを問い詰める為に彼の落下地点に向かった。



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