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対策と植物兵団

さて、エトガルを救出するにはどうしたらいいでしょうかね?エトガルが鳥型に捕まっているのがわかったいじょう、ブレスや茨であの鳥型を撃墜するのはマズイでしょう。あの影達にドレイン攻撃か状態異常攻撃が効くのなら、その手の花粉でも散布してじわじわ弱らせていけばいいんですけどねぇ。けれど、紐型にドレインは効きませんでした。それに、生物では無いとアインが言っていた以上、体内干渉型の状態異常は効かないでしょう。四足獸型のことを考えると、石化は効くと思いますが、マスターの能力の中に石化はありえませんし、収穫した果実の中にもその手の効能の果実はなかったので、効能再現も無理ですしねぇ。もっとも、たとえ石化があってもあの鳥型を石像にするのはかなり難しいでしょうけど。なんせ、鳥型は上空を旋回し続けていて、魔眼の対象にしにくいです。花粉の方にしても、鳥型の羽ばたきで散らされたら効果ないですしね。


はあっ、マスター達とはとことん相性が悪いですね。しかもエトガルという人質付き。


こうなると、他の能力を試してみた方が良さそうですね。さて、どの能力がいいでしょうか?


『私』は、マスターの現在持っている能力について思い返した。


・・・植物兵団を使ってみましょうか。大量の植物兵を展開して、物量戦に持ち込めば鳥型も回避しきることは不可能なはず。不確定要素があるとすれば、あれの固有能力が今だに不明なことですね。しかし、こちらにたいして使用してこないいじょう、紐型のような攻撃タイプではなく、四足獸型の空中ジャンプのような補助型でしょう。それなら、そこまで気にする必要はないですか?けれど所詮は仮定の話。注意は必要ですね。


『アルケミィーソーン』


クイ?


『植物兵団の発動をお願いします』


コク パアアアア


茨が頷くと、周囲にあった白い果実が一斉に光だした。


ピキィ、ピキキィ、パリィ、パリィィン!!


やがて、果実に卵がふかする時のようにひびが入り、最終的にはパカリと割れた。そして、果実の中から白い靄が外に出て来た。


出て来た靄は果実の傍に集まり、小さな雲のようになって停止した。


『さあ、あなた達。あの鳥モドキを捕まえるのです』


ヒュウー


『私』が命じると、白い靄達は鳥型に向かって舞い上がって行った。


PIII!?


鳥型は、その白い靄を見て慌てて回避行動に移った。


しかし靄達が周囲を包囲していた為、連続で襲い掛かる白い靄達の全てを回避することは出来なかった。


鳥型の影は、少しずつだが確実に白い靄に取り付かれていった。


影が白くなっていくにしたがい、機動力もだんだん落ちていった。


『さ、さ・い』


もう少しで決着かなぁ?と思っていたら、エトガルのそんな思念が聞こえて来た。


まあ、当然ですよねぇ。エトガルが鳥型と一緒にいるのなら、エトガルも白い靄の、アップスの冷却の効果を受けるのは。けれど、他に方法もありませんし、エトガルにはあの影と一緒に凍りついてもらいましょう。別にエトガルは本なのだから、凍死の心配もないですしね。


なんて、少し鬼畜なことを考えつつ、鳥型の様子を見守った。


鳥型の表面に霜が降り、鳥型はフラフラ飛行になっていた。


『そろそろですかね』


ヒュン!


『私』がそろそろ決着かなぁ、と思っていると何かが風をきる音が聞こえた。


『何の音ですか今の?』


『私』は、周囲に意識を広げてみた。


すると、鳥型の影の表面の霜に針葉樹の葉が刺さっていた。

どうやらさっきの風をきった音は、あれが発射された結果のようですね。


ヒュン ヒュン


『私』がそう考えていると、地上から大量の葉が鳥型目掛けて発射された。


フラフラ飛行しか出来なくなっていた鳥型は、あっという間にハリネズミのようになってしまった。


もっとも、直接は刺さっていないらしく、鳥型は相変わらずフラフラ飛行を続けている。


というか、あの程度の攻撃が刺さるのなら、こちらも苦労はしないという感じである。


ドォッカーン!!


『私』がそう思っていると、鳥型に刺さっていた葉が爆発した。


『えっ?』


ドォッカーン


爆発は一回では済まず、刺さっていた葉が次々に連鎖爆発していった。


ヒュルルル


さすがに連続爆発は効果があったのか、それまではなんとか飛行していた鳥型の影が、真っ逆さまに地上に墜落していった。


ドォォォォォォン!


そのまま地面に激突、大きな砂埃が周囲に立ち込めた。


『エトガルは無事ですかねぇ、これ?』


「さぁ?けど、はやくエトガルをたすけようよあんさらー!」


「ピィ!」


『そうですね。アルケミィーソーン、冷却物質の散布を続けながら墜落地点に向かってください』


コク


茨が頷き、アルケミィーソーンが動きだした。


『それにしても、あの針葉樹型モンスターは何がしたかったのでしょうね?』


影を撃墜したかったのか、エトガルを助けようとしたのか、あるいはもっと別の理由か。現状ではさっぱりわかりませんね。


あの影を撃墜したかっただけなら、インテラント達の仲間を支援していた理由が不明。エトガルを助けるつもりだったのなら、エトガルを巻き添えにした理由が不明。それ以外の理由となると、情報不足。


あの針葉樹型モンスター、意思疎通が出来るといいんですけどね。


『私』が悩んでいる間もアルケミィーソーンは進み、真っ白に染まった鳥型のもとにたどり着いた。


『エトガル、無事ですか?』


『無・事、だ』


エトガルに呼びかけると、鳥型の足の辺りから返事が返って来た。


『子供達、エトガルをマスターのもとに』


『私』がそう命じると、鳥型を覆っていた白い靄がエトガルを浮かせて、こちらに移動し始めた。


バサッバサッ


鳥型は、白い靄達が離れた隙をついて、再び上空に飛びたとうとした。


しかし、白い靄の代わりに周囲に散布している花粉が翼を凍らせ続けている為、飛び立つことは叶わなかった。


『アルケミィーソーン、それのことは後で調べたいので、カチンコチンにしちゃってください』


コク


ブゥハァァァァァ


『私』の頼みを聞いたアルケミィーソーンは、竜化させた茨から追加で冷却ブレスを鳥型に向かって吐き出してくれた。


PIIII・I・I・・・I・・


鳥型は最後に弱々しく一鳴きして、その直後にカチンコチンの氷像になった。


『ガーデンスライム』


「ピィ?」


『あの氷像を、あなたの亜空間内のアップスの木が生えている所に置いておいてください』


「ピィ!」


『私』は、鳥型が完全に凍りついたのを確認して、ガーデンスライムに保存を頼んだ。後でマスターに時間停止の魔法でも施してもらいましょう。無理そうなら、帰ってからリッチにでも引き渡せばいいでしょう。


頼まれたガーデンスライムは、アルケミィーソーンの身体を下り、氷像のもとに向かった。


『アンサラー』


ガーデンスライムを見送った後、エトガルが白い靄に運ばれて来た。


『お帰りなさいエトガル』


『すまない、助かった』


『私は指示を出しただけです。それよりも、いったいなにがあったんです?それに、あの針葉樹型モンスターはいったい何なんです?』


『すまないが、まずは休ませてくれ』


『そうですね。わかりました。けれど、起きたらちゃんと説明してもらいますからね』


『わかって、いる。・・・グウ~』


そう言ってすぐにエトガルはスリープモードに入った。


『おやすみなさい、エトガル』


「おやすみ、エトガル」


『あなた達も戻っていいですよ』


『私』は、エトガルを持って帰って来た白い靄達に、そう声をかけた。


『私』がそう言うと、白い靄達は自分達が出て来た果実のあった場所に戻って行った。


すると、白い靄から最初の卵型の果実の姿に戻って、枝にくっついた。


『あとはみんなが戻って来るのをゆっくり待つとしましょう、マスター』


「うん、そうだね」


一段落した『私』とマスターは、ほかのみんなが帰って来るまでの、たわいもない話をして時間をつぶした。



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