アルケミィーソーンと決着
検索をかけると、いかの情報が出て来た。何と言うか、予想が当たっていた。しかし、予想外の部分もあった。
アルケミィーソーン
アスティア=ドライトに使役されているドレインソーンが、同存在の《効能の視線・ランクアップ》の効果で突然変異的進化の末に誕生。
樹の部分が竜鱗で覆われており、かなりの物理・魔法耐性を持っている。その上、一部が欠損してもすぐに新しいものが生えてくるほどの強い再生能力も持ち合わせ、ドレインソーンの刺も竜の牙に匹敵する硬度を有するに至った。ドレインソーンの時点では、火や火属性が弱点の一つであったが、新しく火・地・時属性が追加された結果、それらの属性魔力も進化エネルギーに変換することが可能になっている。というよりも、時属性を得たことによりあらゆる物質・エネルギーを変換することが可能になっている。よほど特殊な物質・エネルギー構成、能力を持ち合わせていない限り、アルケミィーソーンのドレイン攻撃を防ぐことは事実上不可能である。
そして、現在のアルケミィーソーンでは、ドレイン攻撃で変換された物質(生物・非生物)・エネルギーの情報は卵型の果実として保存されるようになっている。ちなみにこの卵型の果実、温めると中に保存されている情報の生物・物質生命体・エネルギー生命体が普通にふかする仕組みとなっている。さらに、かえった生物・生命体は鳥の雛と同じ状態なので、インプリング(刷り込み)が可能となっている。
羽根の形状をした葉っぱは、進化エネルギーを生成・貯蓄する構造になっていて、ドレインソーンの果実が一つでランクアップ(位階上昇)するのにたいして、アルケミィーソーンの葉っぱは、レベルが一つアップするといった比率となっている。
虹色の花には、一番近い位置にある果実の効能物質を花粉として吐き出す性質があり、複数の状態異常を広範囲に常時ばらまくことが可能となっている。しかし、主であるアスティア=ドライト及び、その魔力の影響下にいる者達、アルケミィーソーンの樹液を服用している者には無害である。
アルケミィーソーンの樹液には、実っている果実の効能物質にたいする耐性を与える効果だけではなく、かなりの回復効果が含まれている。
その回復効果はかなり広範囲におよび、体力・魔力・気力・生命力などのあらえるエネルギーを回復させることが可能である。さらに他の素材と組み合わせれば、欠損部位の再生・死後数時間以内ならば死者の蘇生も可能なポーションも作成が可能である。ただし、回復範囲・効果がかなり強い為、ポーション作成には細心の注意と繊細な技術が必要である。用量・用法が間違っていると、回復効果が活きすぎて逆にダメージを受ける。死亡する場合もある。最悪の場合、細胞が変異・増殖して未知のクリーチャーになる。
『・・・何と言うか、やたらハイスペックに進化しましたね』
『私』は、検索結果を見て呆れた。予定では多少の強化と歩けるようになるだけのはずだったのに、進化させてみた結果何段階もすっ飛ばして進化してしまっていた。それにしても、使役されていたドレインソーン?マスターは、ドレインソーンの核を見つけられず、核には触れなかったはずでわ?
『私』は、検索結果のその部分がひっかかった。
が、あのドレインソーン改めアルケミィーソーンがマスターの使役下にあるのであれば、とりあえずこの後の戦闘のことはもう考えなくても良さそうなので、そのことにはホットした。
意識を検索結果から影とアルケミィーソーンに戻すと、すでに勝負にはなっていなかった。
影は必死にアルケミィーソーンに食い下がっているが、アルケミィーソーンはそれをものともしていない。
影が紐状の部位でいくら攻撃しても、アルケミィーソーンの表面を覆っている竜鱗に全て弾かれてダメージを全く与えられてはいないようだ。
ブゥゥゥゥゥン
アルケミィーソーンにダメージが与えられないことで影が焦れたらしく、先程のように影が淡い光を放ちはじめた。
どうやら、先程を放ったレーザーかビームのような攻撃をするつもりのようですね。しかし、その攻撃でもアルケミィーソーンの竜鱗を貫けるのでしょうか?
『私』は、その点が疑問だった。逆にいうと、その点しか疑問に思ってはいなかった。
ブゥゥゥゥゥン カッ!!!
淡い光は今度は複数箇所で収束し、幾条もの閃光がアルケミィーソーン目掛けて放たれた。
しかし結果は『私』の予想通り、アルケミィーソーンの竜鱗を貫くことは叶わず、アルケミィーソーンは無傷でそびえ立っていた。
影は、閃光を放った後目に見えて動きが鈍化した。どうやら、生命体であるかは不明だが、あの影にも疲労といった概念はあるらしい。先程はあの閃光も一本だったから気づかなかったようだが、さすがに複数の閃光を同時に発射すればそのことが一目瞭然だった。
今度はアルケミィーソーンの方がお返しとばかりに、いくつもの茨で影を鞭打ちした。
ビシィ、バシィ!!
重々しい音が周囲に響き渡った。
「うわー、いっぽうてきになったね」
「ピィ」
「「「ギィ」」」
その光景を見たマスターがそうもらすと、一緒に見ていたガーデンスライムとインテラント達も同意した。
というか、モンスターであるガーデンスライムやインテラント達でも一方的だと思うのですね。
今までモンスターがこんなことを感じるとは、知識としては知っていましたが、実感していませんでしたね。
ビシィ、バシィ!!
『私』がそんな感慨に耽っている間もアルケミィーソーンの鞭打ちは続いていた。
『それにしても、よくまだ原型を留めていますね』
『私』は、影を認識しながらそう思った。
四足獸型の影の時も思ったが、あの影達の強度は異様に高いようだ。
四足獸型は、お兄さんのバジリスク形態のブレスを五体満足で堪え、尻尾の一撃でも前足を一本失う程度で済んでいた。
あの紐状の集合体である影も、先程から竜鱗でコーティングされている茨で叩かれているのに、表面が凹んだようにも見えない。それに、竜の牙なみの強度がある刺の部分も当たっているだろうに、身体が削れたり、穴が空いた様子もない。
竜に匹敵する威力・強度の攻撃にも堪えるなんて、あの影達は本当に何で出来ているのでしょう?
というか、四足獸型の時は結局のところ影を倒せてはいないんですよねぇ。お兄さんがバジリスクの石化の視線で石像にしてしまいましたから。あのまま打撃攻撃を叩き込み続けて、果たしてあの影はどこまで粘ったのでしょう?
この影も、あの影のように粘り続けるようなら、石化は無理でも封印でも考えないといけなくなりそうです。
『私』は、マスターに影の封印を提案しようかと考えはじめた。
GUGYAAAA!!!
『私』がどうしようか考えていると、大きな叫び声が聞こえてきた。
影の方を見ると、絡み合っていた紐状の部分がとうとう引きちぎられているところだった。
『どうやら、封印は考えなくても良さそうですね』
『私』が見ている間も次々に引きちぎられ、バラバラになっていった。
ピキィ ピシィ
『私』がもう決着がつきそうだと思っていると、どこかで聞いたような音が影の背後から聞こえてきた。
影の背後に意識を向けてみると、予想通りというか、空間にひび割れが走っていた。
また何かが出現する前兆でしょうか?
ピシィ ピシィ ピキィィィン!
『私』がそう思っている間もひび割れは広がっていき、もうそろそろどこかと繋がりそうになっている。
ピシィ パリィィィン!!!
そしてとうとう、何処かに繋がった。
何が出て来るのだろう?と思って、繋がった先に意識を向けるが、今回はとくに何かが出て来る様子がなかった。
ではなんの為に空間がひび割れたのか疑問に思っていると、アルケミィーソーンにバラバラにされた影が、ひび割れの向こう側へと吸い込まれていった。
その後、空間のひび割れは何事もなかったように元に戻っていった。
あとに残ったのは、その光景を見守っていた『私』達だけだった。
こうして、影との二回目の戦闘は終わりを告げた。ただ、エトガルのことがあるので、すぐに三回目の戦闘に突入しそうではあった。




