閃光と中断
影から放たれていた淡い光はやがてある一点に向かって収束を始めた。
ブゥゥゥゥゥゥン!!
先程聞こえてきた音がさらに大きくなり、かなりのエネルギーがそこに集まっていることがわかる。
『あれはマズイですね。マス』
『私』がマスターに警告しようとしたちょうどその時、影から閃光がこちらに向かって放たれた。
カッ! (バシィ!)
間に合わない!
『私』は、回避が間に合わないと瞬時に判断した。
しかし、影より放たれた閃光は、『私』達の脇を通りすぎていった。
『私』達が後方を振り向くと、『私』達の脇を通りすぎて行った閃光は、後方にあった大きな木に命中した。
バキッ、バリバリ、ズドォォン!!!
閃光が命中した。木は、幹の中頃に大きな穴が空き、大きな音をたてながらへし折れていった。
『外れた?なぜ?』
『私』は、マスター達が呆然と倒れた木を見ているなか、閃光が外れた原因を知る為に、影に視線を戻した。
するとそこには、紐状の先端があらぬ方向に向いている影と、その紐状の先端を弾き飛ばしたような状態のドレインソーンの姿があった。
どうやら、あの閃光の発射時にドレインソーンの攻撃が当たって、軌道がズレたようだ。
『よかった』
『私』は、偶然にしろなんにしろ、あの攻撃が当たらなかったことに安堵した。あんなものが命中していたら、マスターが消し飛ぶところです。
というか、なんですかあの攻撃わ!レーザー?ビーム?どちらにしろ、回避困難な光撃には違いありません。さっきのように発射時に邪魔でもしない限り、今のマスターにあの速さで来る攻撃を回避することは事実上不可能です。
あの影にあんな攻撃手段があるいじょう、逃走はかなり難しくなりました。インテラント達に頼んで、さっきのように移動しても、背後から狙い打ちにされるのがオチです。
こうなれば、ドレインソーンを支援しましょう。
『マスター』
今だに呆然としているマスターに呼びかけた。
「・・・ふぇっ?なに、なんなの!?」
呼びかけられたマスターは、慌てて周囲をキョロキョロ見回した。
『マスター』
「あ、あんさらー!これって・・・」
『マスター。逃走は辞めです』
「え?けど・・・」
マスターは、影の方に視線をやりながらそう言った。
『あの攻撃の前では逃走は不可能です。逃走途中に後ろから攻撃を受ける危険が高すぎます』
「そ、そうだね。け、けどさ、それならどうするのあんさらー」
『ドレインソーンを支援しましょう』
「ドレインソーンをたすけるの?」
『ええ。あの影よりもドレインソーンの方が百倍はマシですから』
『私』は、あの影の厄介さを考えながらそう言った。
「うーん。たしかに、あれよりはぼくもドレインソーンのほうがいいとおもうけど」
マスターの方も、影よりはドレインソーンの方がいいみたいですね。
「けど、ぐたいてきにはどうするの?」
『本来の予定よりも近いですが、ここから魔眼を使用しましょう』
「うーん。けどそれって、ドレインソーンをまきこまない?」
『対象を絞れば大丈夫です。マスターは魔眼発動中、魔力がキラキラして見えるでしょう?』
「うん!目がチカチカするぐらい、キラキラしてみえるよ」
『なら、ドレインソーンの周りのキラキラには干渉せず、影の周りのキラキラにだけ干渉することは、充分可能なはずです』
「うーん、できるかなぁ?」
『難しいとは思いますが、とりあえず一度試してみてください』
「うーん。・・・わかった。やってみる!」
そう言うとマスターは、影をじっと見つめはじめた。
『どうですか、マスター?』
「ごめん、あんさらー。むりだとおもう」
『そうですか。やはりというか、魔眼を使いはじめたばかりのマスターには、対象を絞り込むのは難しいのですね』
「ううん。そうじゃないよ、あんさらー」
『え?違うのですか?』
「うん」
『では、なぜ無理なのですか?』
「だってあのかげのまわり、ちっともキラキラしてないんだもん」
『キラキラしていない?つまり、あの影の周囲には魔力が無いということですか?』
「うーんと、たぶんそうだとおもう」
『そうですか。弱りましたねえ。どうしましょうか?』
あの影の周囲に魔力が無い。予想はしていましたが、ドレインソーンがてこずっている理由はそれですか。というか、魔力が無いということは、あの影いよいよ生物では無い可能性が高くなってきましたね。基本的に、生物の魔力は魂から肉体に供給されます。そして、たいていの生物は供給された魔力を器に収め切れず、肉体から周囲に洩れでている状態がデフォルト。魔力を吸収する性質があるドレインソーンでさえマスターにはキラキラして見えるのに、それが無いなんて通常の生物ではありえません。
しかし、今はそのことは後まわしです。あの影の周囲に魔力が無いとなると、マスターの唯一の遠距離攻撃である、魔眼が使用できません。そうなると、現状のマスターにはドレインソーンを支援する方法が無くなってしまいました。ですが、このままあの影とドレインソーンの戦いをただ黙って見ているわけにもいきません。もしドレインソーンが敗北すれば、さっきの光の一撃でマスターはおだぶつです。
こんな時にエトガルがいれば、ドレインソーンに援軍でも出してもらうのに。『私』の中でそんな考えが過ぎった。
うん?エトガル?・・・そうです、忘れていました!エトガルとは間接契約を結んでいるのでした。この試練を中断してしまえばいいのです!
そのことに気がついた『私』は、大急ぎで中断手続きに取り掛かった。
『え!?なぜ中断出来ないのですか?』
それから、中断の為にいろいろといじっていたら、試練が中断出来ないことがわかった。その原因を探ってみると、この世界と外の世界を繋げる役割を持つエトガルとのリンクが不通になっていた。
『これは、斥候に出したエトガルの方でも、何かあったということですか!?』
『私』はその事実に目眩がした。ここだけでも厄介なのに、エトガルが斥候に行った先でも問題が発生しているなんて。どれだけの数の侵入者が入りこんでいるのですか、ほんと。
とてもではないが、認めたくはない現実だった。
「どうしたの、あんさらー?」
『私』が現実逃避したいなあ~。とか思っていると、マスターが心配そうに『私』を覗き込んでいた。
はっ!いけないいけない。現実逃避している場合ではありえませんでした。
しかし現実問題、中断ができないいじょう、あの影には確実に倒れてもらわないといけなくなってしまいました。
それなのに、マスターにはここから攻撃する手段がありません。ガーデンスライムとインテラント達にもないでしょうし、いったいどうすればいいのやら。
『私』は、この状況を打開する為の方法に頭を悩ませた。
そして、認識出来る範囲の情報に検索をかけまくり、一つの方法を思いついた。
『私』は戦闘中のドレインソーンを見て、ついで今だ呆然としているインテラント達を見た。もっと正確にいえば、呆然としているインテラント達がまだ持っていたドレインソーンの果実を見た。最後に、こちらを心配そうに見ているマスターに意識を向けて、『私』は覚悟を決めた。
『マスター』
「なに、あんさらー?」
『もう状況を打開する為の方法を選んでいる余地がありえません。かなり危険ですが、ある方法を実行しようと思います』
「それってどんなほうほうなの?」
『それはですね・・・』
『私』は、その方法について説明をした。
「それって、だいじょうぶなの?」
『現状では、他に有効な手段がありません』
「・・・わかった。やってみるよ、あんさらー」
『私もできるだけサポートします』
「うん、おねがい」
そう言うとマスターは、『私』が提案した方法を実行する為の準備を始めた。




