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第一階層とおやつ

あれからしばらくの間調べた結果、このフロアに配置されている植物達の危険度の内訳は、以下のようになった。



安全・・・75%

危険・・・15%

超危険・・・5%

微妙・・・・4%

判断不能・・1%



安全な果実が七割というのが意外だった。エトガルのことだから、てっきり食べる危険度が高い植物ばかりを配置しているかと思っていたのに、こうしてみるとそうでもなかった。もっとも、危険・超危険の内容がかなりアレなので、やっぱり不安が残った。


それと、微妙な毒にも薬にもならない果実はおいておいて、判断不能。名前だけで詳細な情報が無い果実がいくつかあった。それについては、どうしましょうか?エトガルに直接聞いてみるとしましょう。


『エトガル』


『なんだ?』


『このフロアの果実について調べたのですが、名前だけで詳細な情報が無い果実がいくつかありました。それの正体は何ですか?』


『お前に載っていない正体不明の果実?そんなものは配置してはいないぞ。我が配置したのは、全て既存の植物だ』


『なんですって!?』


エトガルが配置した以外の植物が混じっている?エトガルが構築したダンジョンなのに?


それは何を意味するのでしょうか?


『エトガル、ここはあなたのダンジョンですよ。本当に、私の言う果実について知らないのですか?』


『知らん!お前の現在の応答内容は世界についてだろう。そのお前に表示されないような、未知の植物など、我のオブジェクトストックの中には無い!』


『まあ、そうですよね。あなたと私は、同じブックメーカーの手掛けた作品。お互いの情報はある程度把握しあっていますものね。ですが、それならばこの正体不明の果実は、どこから出て来たのでしょう?さっきも言いましたが、ここはあなたの空間なんですよ?』


『わからん。だが、何かがこのダンジョンに入り込んでいるのはたしかだろう』


『しかたありません。さっさとこの試練を中断して、撤退しましょうか』


『いや待て!そんな正体不明の奴を、我の中に放置して帰るつもりか!』


『しかたないでしょう。マスターの安全が最優先なんですから』


『いや、たしかに主は大事だが、我はどうなってもかまわないというのか!?』


『別にそういうわけではありませんけど、優先順位の問題です』


『それならばせめて、その正体不明の奴の正体を確認をしてからにしてもらいたい』


『なぜ私が?あなたが自分ですればいいではないですか』


『我にそんな判別能力が無いことは知っているだろう』


『ええ、知っていますよ』


『ならばなぜ、そんなことを言う!』


『あなたを斥候にしたいだけですよ』


『何!?』


『エトガル。あなたは、正体不明の奴などの侵入を許しました。マスターの試練中に!』


『それは・・・』


『私の怒りは理解出来ますね、エトガル?』


『私』は、怒気混じりの思念をエトガルに送りつけた。


『それは、理解できるが・・・』


『わかったのなら、さっさと行ってきなさい!安全そうなら、後でマスターと確認に行ってあげますから』


『・・・わかった』


エトガルはそう言うと、どこかに飛んで行った。


『行きましたね。さて、それではエトガルが帰って来たら、ちゃんと調べてあげますか』


『私』は、エトガルを見送り。エトガルの中にいる奴を調べることを確定事項にした後、木登りを続けるマスターに合流しに向かった。


『マスター、取れてますか?』


「うん!いっぱいとれたよ!」


マスターは、ガーデンスライムを『私』の正面に持ち上げながらそう言った。


「ピィ!」


ガーデンスライムは、マスターの言葉に応じて、自分の一部に亜空間への入口を作り出して『私』に見せてきた。


『私』がその穴の向こう側に意識を向けると、向こう側には十種類以上の果実が複数転がっていた。


『たしかにいっぱい取れてますね。よかったですね、マスター』


「うん!さあ、もっといっぱいとるぞ!」


そう言うとマスターは、ガーデンスライムを抱えて走り出した。


『あ!待ってください、マスター!』


『私』は、慌てて走り出したマスターを追いかけた。


それからしばらくの間はなんの問題も起こらず、順調に果実を収穫していった。


『さて、だいたい八割は収穫できましたね』


「うん!」


「ピィ!」


『ではそろそろ、おやつにしましょうか』


「わあーい、やったー!」


「ピィピィー!」


『私』の言葉に、マスターとガーデンスライムは嬉しそうに跳びはねた。


『ですが、食べる前にやっておくことがあります』


「やっておくこと?・・・わかった!てをあらうこと!」


『まあ、それも大事ですが違います』


「え?ちがうの?」


『ええ』


「じゃあ、なにをするの?」


『マスターが、心結契約で得た能力を使用します』


「のうりょく?なにをつかってみるの?」


『とりあえずは、亜空間臓器ですね。これをしないと、マスターはおやつを食べられませんから』


「え~!」


マスターから不満の声が上がった。


『大丈夫ですよマスター。アビリティーは、発動すれば簡単に出来ますから』


「ほんとう?」


『ええ。私は、マスターに嘘なんてつきませんよ』


「わかった。どうすればいいの?」


『とても簡単です。お腹に手を当てながら、亜空間臓器構築と言ってみてください』


「わかった!えーと、こうして。あくうかんぞうきこうちく!」


マスターがお腹に手を当てながらそう言うと、マスターのお腹の中に魔力が集中していき、やがて安定した。


「これでいいの、あんさらー?」


『はい!問題無く成功しましたよ』


「やったー!それじゃあ、おやつたべていい?」


『最後に、ガーデンスライムと亜空間共有をしたらいいですよ。ガーデンスライムといっしょに、さっきのように亜空間共有と言ってください』


「わかった。じゃあ、いくよ?」


「ピィ!」


「「あくうかんきょうゆう!(ピィ!)」」


そう言うと、二人の魔力が互いに結びついた。


『成功ですね』


「じゃあ、もうたべていい?」

『どうぞ、いっぱい食べてください』


「やったー!なかのくだものだしてくれる?」


『私』がOKを出すと、マスターは早速ガーデンスライムに果物を出してくれるように頼んだ。


「ピィ!」


ガーデンスライムは、マスターの要求に応えて、亜空間から果実をいくつか取り出した。


「いっしょにたべようね!」


「ピィ!」

マスターとガーデンスライムは、果物をそれぞれ半分こにして、仲良く食べ始めた。


もっとも、さっき調べたような果実が複数混じっていて、半分に割る度に冷気や熱気、電気に爆発。はては毒ガスが吹き出したりもした。


しかし、亜空間臓器内に同種の果実を持つ二人は、状態異常耐性のおかげでなんともなく。果実が弾ける度におもしろがる始末だった。


こうして、派手なおやつタイムが始まった。

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